分光光度計で吸光度を測定する際は、キュベットという器具を使用します。キュベットはその材質の違いによって、測定可能な波長の長さが異なります。この記事では、測定波長や試料溶液に応じたキュベットの使い分けについて説明します。
分析計測ジャーナルでは、キュベットなどの実験器具も取り扱っています。購入する際は、分析計測ジャーナルまでお問い合わせ下さい。
キュベットの種類は主に3つ
吸光度や蛍光強度の測定時に使われるキュベットの種類は大きく3つに分けられます。
- ガラス製キュベット
- 石英製キュベット
- ディスポーザブルキュベット
それぞれの材質によって、得意な測定条件が異なります。使用する場面に応じて適宜使い分けると良いでしょう。
ガラス製キュベット
ガラス製キュベットには、全面が透過型のものと、2面が透過型で残りの面がすりガラス状の非透過型になっているキュベットの2種類が存在します。後ほど詳しく解説しますが、全面透過型のものは、吸光度測定においても蛍光強度測定においても使用可能です。しかし、2面透過型のものは限られた用途でしか使用できません。ガラス製キュベットの特徴は次の3つです。
- 値段が安価
- 紫外領域の測定に使用できない
- 強塩基溶液に弱い
値段が安価
石英製キュベットに比べると、ガラス製キュベットは安価です。もし仮に落として割ってしまっても、石英製キュベットに比べてダメージは少ないため、常用に向いています。
紫外領域の測定に使用できない
ガラス製キュベットは、紫外領域の光を吸収します。そのため、紫外領域の吸光度測定や、紫外領域を励起光とする蛍光強度測定には使用できません。紫外領域の測定を行う際は、石英製キュベットを使用すると良いでしょう。
強塩基溶液に弱い
ガラス製キュベットには、強塩基の水系溶媒に弱いという特徴があります。そのような溶媒を測定に使用する場合は、ディスポーザブルキュベットを使用しましょう。
石英製キュベット
石英製キュベットの主な特徴は次の2つです。
- 値段が高価
- 全領域の波長を透過する
値段が高価
石英製キュベットは、ガラス製キュベットに比べて高価です。使用する際は、破損させないように十分注意してください。
全領域の波長を透過する
ガラス製キュベットは紫外光を吸収しますが、石英製キュベットは紫外光を吸収しません。そのため、全領域の波長の測定に使用可能です。
しかし、だからといって常に石英製キュベットを使用するのは避けた方が良いでしょう。石英製キュベットは万能ですが高価です。落として破損させるリスクを考慮すると、本当に必要な時だけ使用する方が良いと思われます。
ディスポーザブルキュベット
最近は、使い捨てできるプラスチック製のディスポーザブルキュベットもよく使われています。ディスポーザブルキュベットの特徴は大きく分けて3つあります。
- 値段が安価
- 有機溶媒を使用できない
- 強塩基溶媒に強い
値段が安価
ディスポーザブルキュベットは、ガラス製キュベット以上に安価です。しかし、使い回しが効かないものも存在し、使用回数によってはガラス製キュベットよりも高くつく可能性もあります。耐用可能回数を確認し、どちらの方がコスト的にお得であるのか確認することをおすすめします。
有機溶媒を使用できない
ディスポーザブルキュベットはプラスチック製であるため、プラスチックを溶かす有機溶媒を使用することはできません。有機溶媒を使用する際は、有機溶媒に耐性のあるガラス製キュベットを使用しましょう。
強塩基溶媒に強い
一方で、ディスポーザブルキュベットはガラス製キュベットが苦手とする強塩基の水系溶媒に強いという特徴があります。強塩基の水系溶媒を使用する際は、ディスポーザブルキュベットが第一候補に挙がります。
吸光光度計と蛍光光度計の違いとは?
先ほど軽く触れたように、ガラス製キュベットには全面透過型のものと2面透過型のものが存在します。2面透過型のものは、吸光度測定もしくは蛍光強度測定のどちらかにしか使用できません。この理由について理解するには、吸光光度計と蛍光光度計の測定原理について理解する必要があります。
吸光光度計
吸光光度計では、測定光と検出器がキュベットの直線上に位置しており、キュベットの入射光と透過光の光の強度を測定することで吸光度を求めています。吸光度は、ランベルト・ベールの式で算出されます。測定がうまくいかない場合は、試料濃度を上げたり、キュベットの光路長を長くしたりすることで改善されることがあります。
測定する際は、試料を入れたキュベットの向かい合った2面の透過性が重要です。向かい合う2面が透過型のキュベットであれば、吸光度測定に使用できます。
蛍光光度計
蛍光分光光度計では、励起光を照射した際に発せられる蛍光を検出します。吸光光度計とは異なり、反射光や透過光の影響を抑えるために、励起光と直行する側面で蛍光を測定します。
したがって、蛍光光度計で使用するキュベットは隣り合う2面が透過型である必要があります。向かい合う2面が透過型のキュベットは蛍光光度計で使用できませんので注意してください。吸光光度計と分光光度計で使用できるキュベットの種類を図にまとめます。
用途に応じてキュベットの種類を使い分けよう
石英製キュベットは万能なので、それさえあれば事足ります。しかし、ガラス製キュベットに比べて高価で破損した時のコスト的ダメージは大きいため、本当に必要な場合だけ使用すると良いでしょう。有機溶媒に強いガラス製キュベットや、強塩基の水系溶媒に強いディスポーザブルキュベットと使用目的に応じて使い分けることが重要です。キュベット選択のフローチャートを最後に紹介します。
分析計測ジャーナルでは、キュベットなどの実験器具も取り扱っています。ご購入を検討される際は、分析計測ジャーナルにご相談ください。
記事をシェアする