「カーボンニュートラルって、結局なんなの?」
カーボンニュートラルが環境問題と関係している言葉だということは皆さんご存知かと思います。しかし話のスケールが大きすぎて、ピンとこない…そんな方も多いのではないでしょうか。
ですがカーボンニュートラルは、環境問題に対して意識の高い人達だけに関係する話ではありません。
分析装置関連の仕事に従事する企業や組織にとって、これから先何十年と渡って関係してくる話なのです。
というのも、環境問題に積極的に取り組むことは、企業の価値を高めることに繋がり、投資家からの評価が上がります。そしてポジティブな評価をもとに投資を受けることのできる企業は、より成長し発展していくことができるからです。
一方、環境問題に取り組んでない会社は、未来を見据えてない企業だと評価を下げ、時代に取り残されていくことになるのです。
では、これからカーボンニュートラルとどう向き合っていくべきか…そのためには、カーボンニュートラルの概念を知り、世の中の会社の取り組みを見ていけば、何かイメージがつかめるかもしれません。
カーボンニュートラルとは何か?世の中の会社はどんな取り組みをしているのか?一緒に見ていきましょう。
■そもそもカーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、
地球温暖化の主な原因である
【二酸化炭素を含めた温室効果ガスの排出】
を全体でゼロにする
ことを意味する言葉です。
「全体でゼロってどういうこと?温室効果ガスをゼロにするなんて無理なのでは?」
と思われると思いますが、まさにその通り。人間が経済活動を行う以上、温室効果ガスの排出量をゼロにすることは不可能です。
そこで、【排出量】と【吸収量または除去量】の差し引きをゼロにすることで「実質ゼロを目指そう」といった取り組みがカーボンニュートラルなのです。
カーボンニュートラルを日本語に訳すと「カーボン=炭素」「ニュートラル=中立」で「炭素中立」となります。
これはつまり
「二酸化炭素を含めた温室効果ガスの排出量をできるだけ抑える、それでも排出せざるを得ない分に関しては、同量を吸収または除去することで、実質ゼロとする」
ということ。
これが「カーボン」を「ニュートラル」にする、ということを意味します。
地球温暖化の危機的状況については、世界レベルでの取り組みが行われており、気候変動問題に関する国際的な枠組み【パリ協定】でも
■世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
■そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
を世界共通の長期目標としています。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」
日本でも2020年10月の所信表明演説で菅総理(当時)が、
「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」
と宣言しています。
このようにカーボンニュートラルは世界的な取り組みです。ですがこういった話を聞いても「世界のお偉いさん達が頑張っている」程度の認識かもしれません。
本当にカーボンニュートラルは一部の人だけの取り組みなのでしょうか?
■従業員数が多くない会社でも取り組みは可能
「カーボンニュートラルに取り組んでるのは大企業だけでは?」と皆さんお考えかもしれませんが、こちらをご覧下さい。
参考:環境省「ひろがるカーボンニュートラル」
こちらはカーボンニュートラルに積極的に取り組んでいる企業の活動を紹介する動画です。
紹介されている企業(組織)は決して従業員数の多い大企業ではありません。
■協発工業株式会社…従業員数約40人
■株式会社艶金…従業員数約130人
■株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ…従業員数約15人
■深田電機株式会社…従業員数約100人
100人以下、もしくは100人前後の企業でも、カーボンニュートラルに取り組み成果を上げています。
カーボンニュートラルに取り組んでいるのは大企業だけではない、ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
■環境問題に取り組むことで企業価値を高める
では実際のところ、カーボンニュートラルのような環境問題に取り組むことで、企業にどういったメリットがあるのでしょうか?
もちろん第一に挙げられるのは、環境問題への貢献です。カーボンニュートラル=温室効果ガスの排出を全体としてゼロを目指すことで、地球温暖化をはじめとした環境問題に少なからず貢献できる企業になれるでしょう。
ですがメリットはそれだけではありません。「SBT認定」をご存知でしょうか。
SBTは、Science Based Targetsの頭文字を取った言葉で、前述したパリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。
参考:環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」
そしてこのSBTに対して目標設定し、申請して認定された企業が「SBT認定」を受けることができます。
日本でこのSBT認定を受けている企業は247社(2022年9月時点)。世界2位と、積極的に認定を受ける企業が多いことが見て取れます。
このSBT認定を取得することは「この企業は環境問題に貢献している企業である」といったポジティブな企業イメージを世間に認知させることに繋がります。
SDGs、サスティナブルといった言葉を頻繁に聞くようになった昨今、「環境問題に貢献している企業」ということが他社との差別化となり、ブランドイメージを高めることに大きく関わってきます。
また、こういったポジティブな企業イメージは、投資家の投資の判断基準にもなると言われているのです。
企業規模に関わらず、中小企業でも取得可能なSBT認定。環境問題への貢献を外部にアピールすることは、今後大きな意味を持つようになることでしょう。
■補助金について
「脱炭素に向けた取り組みが大事なのはわかったけど、取り組みを進めるための資金調達が難しい…」
そんな方は、環境省の「脱炭素化事業支援情報サイト」をご覧下さい。
脱炭素化に向けた取組を支援するための補助・委託事業について、事業一覧、申請フロー、活用事例等を掲載しています。
支援・補助を受けるためには申請が必要となりますので、補助・委託事業の申請フローのページをご確認下さい。
■まとめ
かつては「エコ」や「リサイクル」といった用語が使われ、一部の人のみが関心を持っていた環境問題。ですが今や環境保全問題は企業レベルで取り組むべき問題となりました。
「環境に配慮すること」が、企業の価値を高める時代。カーボンニュートラルの概念を知ることは、最初の一歩を踏み出す手助けとなることでしょう。
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