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顕微FT-IRの基礎知識|おすすめ機器と価格も紹介

2022.09.09 (Fri)

  • 顕微FT-IR

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

顕微FT-IR

「顕微FT-IRで何が測定できるの?」「顕微FT-IRを購入したいけどどれがいいかわからない」「顕微FT-IRを低価格で測定できる方法は?」

この記事では、顕微FT-IRに関する基礎知識とおすすめ機器の紹介をします。また各メーカーの価格も調査したので、予算申請や購入検討にお役立てください。

分析計測ジャーナルでは、顕微FT-IRに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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顕微FT-IRとは?顕微FT-IRで測定できること

顕微FT-IRとは、光学顕微鏡とFT-IRを組み合わせた機器のことです。FT-IRは有機物の同定に用いられます。光学顕微鏡と合体させた顕微FT-IRは、FT-IRのみでは測定できない微小な物質の測定が可能です。装置は光学顕微鏡とFT-IRが一体になったものと、通常のFT-IRに赤外顕微鏡などを装着する2つのタイプがあります。

顕微FT-IRは以下の3つの測定に用いられることが多いです。

  • 異物分析
  • 故障解析
  • 金属コーティング分析

引用元:BRUKER 顕微FT-IRの基礎

顕微FT-IRの原理

顕微FT-IRの測定は、顕微鏡下でFT-IRを測定する状況をイメージしてください。顕微鏡に取り付けられたアパーチャ(視野絞り)で、特定のエリアだけのFT-IRを取得しています。検出器の原理は、通常のFT-IRと同じです。

FT-IRとは赤外分光法の1つで、フーリエ変換型とも呼ばれます。連続した赤外光を試料に照射し、物質特有の干渉パターンをフーリエ変換して吸収スペクトルを得る方法です。吸収スペクトルのパターンをライブラリのスペクトルで比較し、有機物の同定をおこないます。

FT-IRの原理について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

FTIR分析って何がわかるの?分析機器商社が解説

顕微FT-IR|3つの測定方法

顕微FT-IRは、試料の状態によって3つの測定方法を選んで測定します。それぞれの測定方法と原理を詳しく解説します。

  • 透過法
  • 正反射法
  • 全反射法(ATR)

透過法

透過法は試料に光を照射して、透過した光を検出する方法です。透過法で用いる試料は、薄い膜状にする必要があります。測定は試料を含まないバックグラウンドから、試料測定結果を差し引いて吸収スペクトルを得ます。

正反射法

正反射法は金属の試料台に試料を置き、光の反射を測定する方法です。有機物が金属上にあるとき、光は金属表面まで達してから反射するので、物質によって異なる吸収スペクトルが得られます。顕微FT-IRでは、金属表面のコーティング分析などに用いられる方法です。

全反射法(ATR)

全反射法(ATR)は、透過法と反射法で測定できない試料に有効です。前処理がほとんど必要ないので、顕微FT-IRでは最も用いられています。測定方法は試料をプリズムに密着させ、光を照射するだけ。小さい角度で照射した際に起こる光の全反射を利用し、試料にもぐり込んだ光を検出しています。

試料を非破壊で測定できるので、異物分析や故障解析に使えます。しかしプリズムを測定面に接着させるため、測定部分は凹凸のないフラットな状態でなければなりません。

引用元:福島県ハイテクプラザ FT-IR分析における測定方法

顕微FT-IRのおすすめ機種と価格

顕微FT-IRは国内外の分析機器メーカーから販売されています。今回は4社の顕微FT-IRを挙げて特徴をご紹介します。また価格もインターネット上より調査しましたので、購入時の予算申請などにお役立てください。(価格は変動する可能性があります。詳しくはメーカーもしくは分析機器商社へお問い合わせください)

LUMOS Ⅱ(BURUKER ブルカー)

LUMOS Ⅱ(BURUKER ブルカー)
出典:BRUKER  LUMOSⅡ

ブルカーのLUMOSⅡは、光学顕微鏡とFT-IRが一体型になったコンパクトなタイプです。横幅30cmなので、狭い実験台にも省スペースで置きやすい。透過法・全反射法・ATR法での測定が可能で、これ1台であらゆる微小試料の有機物同定ができます。

フルオートで測定してくれるので、測定に慣れていない研究者でも操作が簡単です。FT-IRを持っておらず、顕微FT-IRが必要ならLUMOSⅡがおすすめです。

希望小売価格(税別):11,740,000円~(出典:リカケンホールディングス㈱ 製品カタログ

参考:BRUKER LUMOSⅡ

Spotlight200i(PerkinElmer パーキンエルマー)

Spotlight200i(PerkinElmer パーキンエルマー
出典:PerkinElmer Spotlight150i/200i

パーキンエルマーのSpotlight200iは全自動赤外顕微鏡で、同社のFT-IR(Spectrum TWOもしくはSpectrum 3)を検出器として使用します。Spotlightシリーズとして、手動操作が必要ですが価格を抑えた(希望小売価格(税別):8,240,000円~)150iもあります。SpotlightはATR測定におけるプリズム接触部はわずか100μmφなので、凹凸のある試料でも測定が可能。すでにパーキンエルマーのFT-IRをお持ちなら、Spotlightを検討してみてください。

希望小売価格(税別):11,700,000円~(出典:和研薬㈱ Spotlightシリーズ 赤外顕微鏡システム

参考:PerkinElmer Spotlight150i/200i

Irtronμ IRT-1000(日本分光㈱)

Irtronμ IRT-1000(日本分光㈱)
出典:日本分光㈱ Irtronμ  IRT-1000

日本分光㈱は日本初の赤外分光光度計を製造販売した会社で、光分析機器の老舗企業です。

Irtronµ IRT-1000は日本分光のFT-IR(FT-IR4600)に取り付けて使用します。FT-IR本体の試料室に設置するので、追加スペースが必要ありません。取り付けが簡単で光学調整が必要ないので、顕微FT-IRと通常のFT-IRで使い分けが簡単です。他メーカーに比べて価格が安いので、予算が通りやすいかもしれませんよ。

参考価格:2,500,000円~(出典:㈶日本科学機器協会 マルチチャンネル赤外顕微鏡 IRT-7200 赤外顕微鏡 IRT-5200/IRT-1000X

参考:日本分光㈱ Irtronμ  IRT-1000

AIM-9000(㈱島津製作所)

AIM-9000(㈱島津製作所)
出典:㈱島津製作所 AIM-9000

島津製作所のAIM-9000は、簡単な操作のみで複雑な解析がおこなえます。日本企業が開発したソフトなので日本語表記でわかりやすく、異物を自動認識する機能も標準搭載、ボタンを押すだけで測定ができます。グッドデザイン2017を受賞した機器で、洗練されたデザインが特徴です。AIM-9000は、同社のFT-IR(IRTracer-100)と組み合わせて使用します。蛍光X線システムと組み合わせると有機物・無機物を双方解析できる異物解析システムが構築できます。初心者でもスムーズに不良解析をしたいなら、使いやすいAIM-9000はいかがでしょうか。

参考価格:11,330,000円~(出典:㈶日本科学機器協会 赤外顕微鏡 AIM-9000自動不良解析システム)参考:㈱島津製作所 AIM-9000

初めて顕微FT-IRを測定なら共同利用や分析委託

顕微FT-IRは1000万円を越えるものが多く、予算が降りず購入が難しいこともあります。そのため機器の購入の前に、共同利用や分析委託などはいかがでしょうか。共同利用できる場所や、おすすめの分析委託会社をお伝えします。

大学の研究室で学外利用

大学の研究室に設置している顕微FT-IRは、一般の研究者へ開放しているものがあります。実際に測定を試してみたい、低価格で測定したいなら学外利用がおすすめです。

千葉大学共用機器センター

千葉大学の共用機器センターでは、日本分光の機器(IRT-5000およびFT/IR-4200ST)を所有しています。ライセンス試験を通過すれば、学外一般利用30分2,000円で利用できます。参考:千葉大学共用機器センター 機器利用案内

東北大学 テクニカルサポートセンター

東北大学では青葉山キャンパスに設置されている顕微FT-RIが学外利用可能です。日本分光の機器(IRT-5000およびFT/IR-6300)が使用できます。費用は1時間2,964円です。参考:東北大学 テクニカルサポートセンター

全てお任せの分析委託

測定条件の検討からレポートの提出まで全てお任せしたいなら、分析委託はいかがでしょうか。顕微FT-IRの測定に実績のある3社をご紹介します。

㈱東ソー分析センター

東ソー分析センターの顕微FT-IRによる異物分析は、長年の経験から得た技術と知識で定評があります。試料の特性に合わせて、独自のノウハウで最適な前処理を施して測定。分析データの提供だけでなく測定結果の解釈までサポートをモットーに、熟練した技術者が担当してくれますよ。参考:㈱東ソー㈱ 【装置紹介】イメージング顕微FT-IR 物質分布の解析、微小異物の同定

㈱近畿分析センター

㈱近畿分析センターでは、パーキンエルマー製の顕微FT-IRを所有しています。工業分野の材料分析や環境分析が得意な会社です。工業材料の異物分析や故障解析には、近畿分析センターはいかがでしょうか。参考:㈱近畿分析センター 使用分析装置一覧

㈱島津テクノリサーチ

㈱島津テクノリサーチは、分析機器会社の㈱島津製作所のグループ会社です。そのため島津製作所製の最新機種が揃っています。現在研究室で島津製作所のFT-IRを所有しており、将来的にAIM-9000の購入を検討しているなら、島津テクノリサーチが最適です。参考:㈱島津テクノリサーチ 構造解析

まとめ

顕微FT-IRは光学顕微鏡とFT-IRを組み合わせた機器で、微小部位の有機物同定ができます。顕微FT-IRで使われるメインの手法は全反射法(ATR)で、試料を非破壊で測定できるのが特徴です。

おすすめの機器は以下の4つです。

  • LUMOS Ⅱ(BURUKER ブルカー)
  • Spotlight200i(PerkinElmer パーキンエルマー)
  • Irtronμ IRT-1000(日本分光㈱)
  • AIM-9000(㈱島津製作所)

予算や研究室で所有しているFT-IRの機種によって、最適な機器を選んでくださいね。

顕微FT-IRは高額なので、共同利用や分析委託という手段もあります。分析計測ジャーナルでは、顕微FT-IRに関する分析委託先のご紹介や機器の相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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