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HPLC検出器はどれが最適?8個のタイプ使い分けを紹介

2024.07.10 (Wed)

  • HPLC

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

使い分け

液体クロマトグラフィー(HPLC)の検出器は、多くの種類があります。そのためどの検出器を選べばいいのか難しいです。検出器の原理もさまざまですが、理解しておかなければ測定してもクロマトグラムのピークが得られない、なんてことも起こりえます。

そこでこの記事ではHPLCの検出器の種類と原理について解説し、感度や使用できる条件についてもお伝えします。

分析計測ジャーナルでは、HPLCの検出器に関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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HPLCの検出器はどれが最適?定量できる8個の検出器を解説!

HPLCの定量において用いられる検出器を8個紹介します。原理だけでなく測定可能な物質や選択性についてもお伝えするので、測定に最適な検出器を選んでくださいね。

最も使用されている「紫外可視(UV-VIS)検出器」

紫外可視(UV-VIS)検出器は、HPLCの検出器の中で最もよく使われている検出器です。UV-VIS検出器は1台で195nm~700nm程度の波長を選択できます。UVのみだと195nm~370nm程度の紫外線、VISは400nm~700nmの可視光線です。

測定できる物質は吸光物質で、色素・芳香族・タンパク質など多岐に渡ります。吸光物質は紫外可視領域の光が照射されると、特定の波長の光を吸収します。物質を透過した光を測定すれば、その吸光度から試料の濃度が求められるのです。

吸光物質は種類が多いので、カラムからの溶出時間が同じならピークが重なってしまい、選択性は落ちます。また低波長では移動相由来のノイズも検出されることも。しかし感度はよく汎用性もいいので、HPLC検出器の第一選択になっています。

UV検出器の光源は重水素ランプ、可視光線はタングステンランプが用いられています。ランプには寿命があるので、測定後はランプをオフにしておくと、長く使えますよ。

蛍光物質は「蛍光(RF)検出器」

蛍光(RF)検出とは、物質に光を照射し励起状態に遷移した物質が、元の基底状態に戻るときに発する光(蛍光やリン光)を検出する方法です。蛍光物質は限定されており、移動相由来の蛍光はないので選択性がとても高いのが特徴です。UV検出器と比較すると、10倍~100倍も感度が高いので、希薄試料でも測定できます。

HPLCで用いられるRF検出器は、220~900nm程度の蛍光が測定できます。RF検出器の光源は、キセノンランプです。蛍光物質なら感度と選択性の高いRF検出器がおすすめです。

全ての物質対応の「示差屈折率(RI)検出器」

示差屈折率(RI)検出器は、光の屈折率を測定する検出器です。RI検出器のセルは試料が通過するサンプルセルと、リファレンスセルの2つにわかれています。リファレンス用のセルには移動相を満たしておきます。試料がサンプルセルを通過したときに生じるリファレンスセルとの屈折率の差を求めることによって、濃度測定ができるのです。

RI検出器は吸光や蛍光のない物質にも使え、あらゆる物質に適応しています。たとえば糖やアルコールなどの測定には、RI検出器が適しています。しかしRI検出器やUV検出器に比べて感度が落ちるのが難点です。またリファレンスセルとの屈折率を求めるので、移動相組成を変えるグラジエント測定はできません。

広範囲の吸光度測定は「フォトダイオードアレイ(PDA)検出器」

フォトダイオードアレイ(PDA)検出器は、195nm~650nm程度の連続した波長が測定できます。そのため吸光度以外に吸収スペクトルの測定も可能です。

UV検出器のクロマトグラムは時間に対して吸光度のみ取得するのに対して、PDA検出器は上の図のように波長軸も取得できます。そのため最大吸光波長の異なる混合物でも、見逃しにくいです。さらに標準物質と試料の吸収スペクトルを比較すると、未知物質の同定にも使えます。

吸光物質の混合試料で2波長以上同時に測定したい、未知物質のスペクトルも取得したいならPDA検出器がぴったりです。

無機物イオンは「電気伝導度(CD)検出器」

電気伝導度(CD)検出器は無機イオンの検出に適しています。イオンクロマトグラフィーをおこなうならCD検出器は欠かせません。CD検出器の原理は、一定の電圧をかけておき、試料が通過したときの電流の変化を検出します。

検出が可能な物質は、無機イオンだけでなく有機酸やアミノ酸類などの有機物もあります。CD検出器は移動相の電気伝導度も検出するため、ノイズが大きく出るのが難点です。そこでノイズを避けたいなら、サプレッサの導入がおすすめです。サプレッサはイオン交換樹脂を用いて、移動相の電気伝導度を下げてくれます。0.1ppm以下の希薄試料で、ノイズが気になる場合はサプレッサも検討してみてください。

電気的活性があるなら「電気化学(EC)検出器」

酸化や還元など電気化学的に反応する物質には、電気化学(EC)検出器があります。シアン・糖質・アミノ酸の検出にEC検出器は有効です。

EC検出器は試料セルに電位をかけ、試料が放出する電子を電流測定値から求めます。電流値は、反応した物質の量(試料量)に比例するので、定量が可能になるのです。

選択性がよくUV検出器の10倍~100倍程度の感度があります。

汎用性が高い「蒸発光散乱(ELS)検出器」

蒸発光散乱(ELS)検出器は、カラムから出てきた試料を噴霧し光を当ててその散乱光を測定する検出器です。不揮発性物質ならどんなものでも適応可能で、汎用性が高いのが特徴です。糖類・アルコール類などUV検出器が使用できない物質でも、測定できます。

汎用性のあるRI検出器と比べると、ELS検出器のほうが感度はよくグラジエント測定も可能です。しかし移動相に不揮発性の塩類は使用できないので、用いる移動相には注意しましょう。

高感度で汎用性がある「コロナ荷電化粒子(CAD)検出器」

荷電化粒子(CAD)検出器は、不揮発性のものならほとんどの物質で使えて、ELSよりも検出感度が高い検出器です。CAD検出器は試料を霧状にして、荷電化させて検出します。電気信号として測定するので、粒子の数や質量に比例し、物質が違っても濃度が同じなら同じ面積になるのが特徴です。そのため標準試料がないものでも、別の物質を使って定量値を推定できます。

グラジエント分析が可能で、検出限界は数ppbもあるので、これまで他の検出器で測定が難しかったものでも検出可能なことがありますよ。CAD検出器は現時点では、サーモフィッシャー(Thermo Fisher Scientific)社のみの販売です。

HPLC検出器の特徴比較表

これまでに紹介した検出器について、選択性と感度などを表にまとめました。検出器の使い分けに悩んだときは、参考にしてみてください。

検出器名選択性最小検出感度(g)グラジエントよく使われる分離モード
UV-VIS検出器あり10-11逆相クロマトグラフィー順相クロマトグラフィー
RF検出器あり10-13逆相クロマトグラフィー順相クロマトグラフィー
RI検出器なし10-7×サイズ排除クロマトグラフィー
PDA検出器あり逆相クロマトグラフィー順相クロマトグラフィー
CD検出器あり10-10イオン交換クロマトグラフィー
EC検出器なし10-12イオン交換クロマトグラフィー
ELS検出器なし10-8サイズ排除クロマトグラフィー
CAD検出器なし10-9イオン交換クロマトグラフィー
引用:JIS0124通則
10-11

未知物質の定性分析には「質量分析計(MS)」

分析

HPLCの検出器として、質量分析計(MS)もよく使用されます。MSを使ったHPLC分析は、「LC-MS」と呼ばれることが多いです。MSは分子量を測定できるので、未知試料の定性分析に適しています。さらにMSは個々のイオンを検出できるので、複数成分が同時に溶出していても分離が可能です。検出感度はRF検出器よりも高く、選択性がとてもいいのが特徴です。

MSの原理や特徴を詳しく解説します。

MS検出器の原理

MS検出器は、試料をイオン化し質量電荷比(m/z)に応じて分離し検出する方法です。イオン強度から定量も可能です。イオンを分離し検出する方法は、下記の4種類があります。

検出方法

  • 二重収束型(磁場型)
  • 四重極型
  • イオントラップ型
  • 飛行時間型

これらの検出方法の中で最も用いられているのは、四重極型です。四重極型は4本の電極に直流と高周波の電圧を加え、その比率を増減させ当てはまるm/zごとに分離します。四重極型は真空度が低くても検出器にイオンを集められやすく、LC-MSの検出器としてもよく使われています。

MSのイオン化方法と特徴

MSのイオン化の方法は、下記の3種類がよく使われる方法です。得られるマススペクトルはイオン化の方法によって変わるので、どのイオン化法が使われているのか把握しておきましょう。

イオン化の方法

  • 電子イオン化(EI)
  • エレクトロプレーイオン化(ESI)
  • マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)

EI法はGC-MS、ESI法はLC-MSで使われるイオン化です。ESI法は大気圧下で試料を噴霧し、イオンだけを質量分析計に導入します。

HPLC以外でMSが活躍する分析

MSはHPLC以外に、以下の分析機器と合わせて使用されます。

  • ガスクロマトグラフィー(GC-MS)
  • ICP質量分析計(ICP-MS)
  • MALDI-MS
  • 探針エレクトロスプレーイオン化質量分析計(PESI-MS)

ガスクロマトグラフィー(GC)は液体クロマトグラフィーと似ていますが、キャリアー(移動相)にガスを使用する点が異なります。GC-MSはキャリアーで運ばれた試料をカラムで分離し、MSで検出する方法です。

ICP-MSは、プラズマで液体試料の元素をイオン化しMSで検出します。無機物である元素が液体の状態なら、ほとんど前処理なしで装置にかけるだけで測定可能です。

MALDI-MSは分子量数万程度の高分子の分析に向いています。PESI-MSは微量な液体のMS測定ができます。㈱島津製作所製のPESI-MSは、サンプルプレートの上に試料溶液を置くだけの簡単操作でMSが取得できる優れものです。

引用:㈱島津製作所 質量分析計

まとめ

HPLCで使われる検出器は、以下の8個です。

  • 紫外可視(UV-VIS)検出器
  • 蛍光(RF)検出器
  • 示差屈折率(RI)検出器
  • フォトダイオードアレイ(PDA)検出器
  • 電気伝導度(CD)検出器
  • 電気化学(EC)検出器
  • 蒸発光散乱(ELS)検出器
  • コロナ荷電化粒子(CAD)検出器

HPLCでよく使われている検出器はUV-VIS検出器で、有機物やタンパク質など対象物は多様です。検出器の種類によって、測定できるものや選択性が異なるので、測定物質に適した検出器を選んでくださいね。HPLCで定性分析をするには、質量分析計(MS)を検出器に使用したLC-MSがあります。

分析計測ジャーナルでは、HPLCの検出器やMSに関する相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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