HPLCのピークの形がおかしいと感じたことはありませんか?ピーク割れや肩ピークが異常ピークとして知られていますが、その原因の1つとしてHPLCカラムの寿命が挙げられます。この記事ではカラム交換だけでなく、交換する際に分析時間を短縮できるおすすめのカラムも紹介します。
HPLCカラムはなぜ劣化するのか?
固定相を充填したカラムの両端に配管を接続し、ポンプで圧力負荷をかけて試料のHPLC分析や分取を行います。高圧下であるためカラム内部に充填されているシリカゲルは負荷を受けて溶解します。これがカラムの劣化の原因の1つです。他にも、カラム劣化の原因として以下が挙げられます。
- 試料中の異物による目詰まり
- 溶液中の気泡の混入
- フィルターの汚れ
ピーク異常については
HPLCのピークがおかしい!6個のトラブル別に原因と対処法を解説
こちらの記事で詳細に解説していますので、ご参考ください。
試料中の異物による目詰まり
析出しやすい色素骨格を持つ化合物などは、カラムが詰まる原因となります。カラムが詰まったと感じたら、メタノールなどの溶媒で洗浄すると良いでしょう。
溶液中の気泡の混入
気泡が混入している溶媒をそのまま使用するとカラムの劣化につながります。HPLC分析を行う際は使用する移動相のソニケーションを行うことで、気泡の混入リスクを出来るだけ減らせます。
フィルターの汚れ
フィルターが汚れているままHPLC分析を行うと、必要以上にカラム圧が上昇するため、カラムの劣化につながります。定期的にフィルターが汚れていないかチェックすることでカラムの劣化をできるだけ防げます。
カラム交換前にチェックするべきこと3選
カラムは高価であるため、交換する必要がない時はしなくても良いでしょう。本当にカラム交換をする必要があるのか、交換前にチェックした方が良いポイントは以下の通りです。
- フィルターの目詰まりチェック
- カラムの洗浄
- カラムの空気抜きを実施
フィルターの目詰まりチェック
まずはHPLC流路に設置されているフィルターの目詰まりを確認しましょう。まずはソニケーションを行い、それでも改善されない場合はフィルターを交換します。
カラムの洗浄
フィルターが詰まっていないことを確認できた場合、カラムが詰まっていることや空気が混入していることを疑いましょう。
カラムの空気抜きを実施
カラムに空気が混入した場合、カラムの出力側の配管を取り外し、その面を上にしたまま溶液を流し、気泡が出なくなるのを待ちます。気泡が出なくなることを確認した後に配管を再接続し、20分程度溶媒を通液します。
用途に応じた交換用カラム3選
カラム交換をするのであれば、用途に応じて違うカラムへ交換することを検討してみませんか?用途に応じたおすすめのカラムを3つ紹介します。
- Shim-pack XR-ODS
- Shim-pack AMINO
- Shim-pack Arata LCカラム
分析時間を短縮できるカラム
カラム長を短縮したり、耐圧上限が高いカラムを使用したりすることで分析時間を短縮できます。SHIMADZUのShim-pack XR-ODSはカラム長を短縮する一方で充填剤粒子経を小さくしているので、分離能を維持したまま分析時間を短縮可能です。このカラムの強みは2つあります。
- 通常のカラム圧条件下で高速分離を行える
- 使用する溶媒量も節約可能
通常のカラム圧条件下で高速分離を行える
Shim-pack XR-ODSは30MPaの圧力領域でも高速高分離を行えるので、特別なHPLC装置は必要ありません。HPLC装置はそのままで、カラムを交換するだけで分析時間を短縮できます。
使用する溶媒量も節約可能
分析時間が減るため、それに伴って使用する溶媒量も節約可能です。
アミノ酸分析を効率化できるカラム
アミノ酸分析に特化したカラムも存在します。アミノ酸分析を頻繁に行うのであれば、1つ用意しておくと良いでしょう。Shim-pack AMINOシリーズは、アミノ酸分析に特化したShimadzuのカラムです。以下の特徴があります。
- 自動誘導体化が可能
- 短時間で高性能分析
自動誘導体化が可能
特定のオートサンプラーと組み合わせることで、分析開始前に試料と反応試薬を混合して誘導体化反応を行います。通常のカラムに比べて安定条件下で測定を行えます。
高性能分析
Shim-pack AMINOシリーズは、ポリスチレンゲルを基材としており、静電的相互作用だけでなく、疏水的相互作用も利用して分離を行えます。さらに、カラムの種類を変更することで遊離アミノ酸の分析も可能です。
Shim-pack Arata LCカラム
塩基性化合物は電荷的にシラノール基と相互作用しやすいため、使用するカラムによってはうまく分離できません。しかし、Shim-pack Arata LCカラムは塩基性化合物のピーク分離に特化しているため、分離効率を改善できるかもしれません。
まずはHPLCカラムの交換必要性を検討しましょう
HPLCのピーク形状が悪化した場合、カラム交換を検討することは重要です。しかし、フィルター交換やカラム洗浄によって改善する場合もあります。交換を実施する前に、まずはHPLCの配管を分解し、問題点がどこであるのかを明確にしましょう。それらに問題がない場合は、カラム交換が必要です。分析時間を短縮できたり、塩基性化合物の分離能を改善できたりするHPLCカラムもありますので、必要に応じてご検討ください。分析ジャーナルではカラムはもちろん、HPLC関連の消耗品も一部幅広く取り扱っていますので、お気軽にご相談ください。
ライター:吉野克利
プロフィール:名古屋市立大学薬学部出身、専攻分野は有機化学。
「光に反応して分解する化合物の合成および機能評価」の研究をしています。
様々な分析機器を使用した経験を持ち、実験や研究などで得た知識をより多くの研究者の役に立てるようお伝えしていきます。
旅行が趣味で、カメラ片手に全国を駆け巡っています。
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