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HPLCのピークがおかしい!6個のトラブル別に原因と対処法を解説

2022.07.04 (Mon)

  • HPLC

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

トラブル別に原因と対処法を解説

HPLCの測定結果をみたら、ピーク形状がこれまでと違っていて困っていませんか?
測定条件の検討をしているが、どうしてもきれいな形のピークが得られなくて悩むこともあります。
HPLCで得られるクロマトグラムのピーク異常は、機器や測定条件などのトラブルを表しています。
きれいな形状のピークでなければ、正しく評価ができているとは言えません。

しかしピークの異常は何が原因なのか、わかりにくいです。
原因が1つでない場合もあります。

そこでこの記事では、製薬会社の研究員としてHPLCの測定条件を研究していた私が、理想のHPLCピークが出ずにお困りのあなたに、解決策を提案します。
今回は私もよく遭遇した、6つのHPLCピークにまつわるトラブルを挙げました。
それぞれの原因と対処法を丁寧に解説していますので、あなたのお悩みを解決することでしょう。

さらにHPLCの測定条件を検討をしている方におすすめのサービスも紹介しますので、最後までお読みください。

トラブル1:HPLCのピーク面積にばらつきがある

研究者たち

HPLCでピーク面積のばらつきがあると、正確な成分の定量値が算出できません。
また日本薬局方では、HPLCを用いた試験を実施する際、ピーク面積が一定かどうかを確認することが求められています。

参考:厚生労働省 第十八改正日本薬局方 参考情報 システム適合性

ピーク面積がばらついていると、試料の測定を開始すべきではありません。
HPLCのピークがばらつく原因と対処法は次のとおりです。

原因

  • オートサンプラーに空気が嚙んでいる
  • 試料の温度が安定していない
  • 移動相の調製が不十分
  • キャリーオーバーしている

オートサンプラーに空気が入っている場合、毎回の試料注入量が異なります。
また液体は温度によって体積が変化するので、サンプルクーラーを使用し試料温度が安定していない場合も、注入量が一定ではありません。

移動相の有機溶媒相と水相がしっかり混ざっていない場合も、移動相勾配が一定ではなくなるので、ピーク面積がばらつきます。

対処法

  • オートサンプラーの脱気をおこなう
  • 試料の温度が安定するまで待つ
  • 移動相を調製しなおす
  • インジェクター洗浄液を補充する

製薬業界の品質管理においてピーク面積のばらつき具合は、相対標準偏差(RSD)で判断します。
同一試料を6回注入し、定量の場合RSD=1.0%以下、類縁物質測定の場合RSD=2.0%以下に設定されることが一般的です。

参考:厚生労働省 第十八改正日本薬局方 参考情報 システム適合性

ピーク面積の値だけを見るのではなく、RSDを算出し許容できる範囲のばらつきかどうかを判断しましょう。

トラブル2:HPLCのピークが出ない

HPLCのピークが出ないと測定を開始できません。
これまでと同じ分析条件にもかかわらずピークが出ないのか、新しい分析条件でピークが出ないのか、状況によって原因と対策が異なります。

原因

これまでと同じ分析条件でピークが出ない

  • 液が漏れている
  • カラムの接続忘れ
  • 検出器の電源が入っていない

新しい分析条件でピークが出ない

  • 検出波長が間違っている
  • 試料濃度が薄すぎる
  • カラムに試料が吸着している
  • 試料がカラム内から出てきていない

ピークが出ない原因は、初歩的なミスとカラムの問題の2つあります。
試料がカラムから出てきておらず検出器まで流れていない、検出器が適切に設定されていない場合はピークがでません。

対処法

  • カラム接続部分や検出器接続部分を接続しなおす
  • 検出器の状態と波長を確認する
  • 試料濃度を変更する
  • カラムの種類や移動相組成を再検討

これまでと変わらない分析条件で測定してピークが出ない場合は、液漏れや検出器に異常がないかを確認しましょう。

条件検討しているときにピークが出ないなら、カラム・試料・移動相の相性を再確認してください。
逆相クロマトグラフィーの場合、試料の疎水性が高くカラムから出てきていない場合があります。
移動相の有機溶媒比率を上げて、ピークが出てくるかどうか試してみてしてください。

新しいカラムを使ってピークが出ないなら、残存シラノールや金属不純物に吸着している可能性が考えられます。
何回か測定をしてカラムを使い慣らすか、充填剤を残存シラノールが少ないものに変更することもおすすめです。

トラブル3:HPLCのピークがブロード

HPLCのピークがブロード

ピーク形状は、鋭くシャープなものが正常なピークです。
横に広がり高さが低いブロードな形状のピークは、測定結果の精度が落ちます。

原因

  • カラムが劣化している
  • 試料がカラムに吸着している
  • 試料の注入量が多すぎる
  • 配管にデッドボリュームが発生している
  • 試料の調製溶媒が移動相の有機溶媒比率と異なる

ピーク形状がブロードになる原因は、試料とカラムの相性の問題やカラムの状態の変化です。
これまでと同じ条件で分析していてピーク形状がブロードになった場合は、カラムの劣化を疑ってみてください。

対処法

  • カラムを洗うか交換する
  • 試料の注入量を減らす(半分~1/10程度)
  • 配管をつなぎ直す
  • 試料溶液と移動相の有機溶媒比率を同じにする

逆相液体クロマトグラフィーで試料調製溶液に有機溶媒100%を使うとブロードになることがあります。
そのため試料溶液の有機溶媒比率は、移動相の比率に合わせることがベストです。

トラブル4:HPLCのピークが重なる

HPLCのピークが重なる

HPLCのピークが重なっている状態は、2つの成分が分離できていない状態を示します。
重なっているピークをいかにして分離させるかということは、HPLCの条件検討で最も難しく、研究者の醍醐味でもあります。
2つのピークが分離しているかどうかの指標は、ピークを目視する他に分離度(Resolution:R)を確認してください。
日本薬局方において、分離度1.5以上が完全にピークが分離していると定義されています。

参考:厚生労働省 第十八改正日本薬局方 一般試験法 液体クロマトグラフィー

原因

これまでに測定したことのある分析条件で突然ピークが重なるようになったら、カラムの劣化が原因であることが多いです。
もしくは移動相の調製に失敗してる可能性もあります。

分析条件の検討においてピークが重なる場合は、条件の変更が必要です。

対処法

分析条件の検討でピークを分離させる方法は、たくさんあります。
どの方法で効果があるのか机上で検討しつつも、一つずつ試すことが早く条件を確立させる近道です。

  • カラム充填剤の粒子径を小さくする
  • カラムの長さを長くする
  • 移動相の有機溶媒を変える
  • カラム温度を変える
  • 有機溶媒比率を変える
  • 移動相のpHの変える
  • カラムの充填剤の種類を変える

参考:一般財団法人 化学物質評価研究機構 セミナー資料

トラブル5:ゴーストピークが出る

ゴーストピークとは、試料の成分とは関係のないもので、検出されるべきではないピークのことです。
形状が定まらない幅の広いものやシャープなものなど、形状はさまざまです。
ゴーストピークが成分のピークと重なってしまうと、正確な測定ができません。

原因

  • 移動相に含まれる水の不純物
  • 試料溶液の溶媒
  • 前試料のキャリーオーバー
  • 有機溶媒に含まれる安定剤
  • バイアル瓶のシリコン樹脂
  • 実験室の環境

対処法

  • HPLC用の水を使って移動相調製する
  • 試料溶液の溶媒を移動相と同じにする
  • インジェクターやシリンジを洗う
  • 安定化剤の入っていないHPLC用有機溶媒を使用する
  • バイアルの種類を変える
  • HPLCにエアコンの風が直接当たらないようにする
  • 長時間空気にさらした移動相は廃棄して調製し直す

移動相が空気にふれる状態で長時間置いておくと、空気中の成分が移動相に溶け込み、ゴーストピークとして検出されることがあります。
長時間の測定で後半の試料に突然ゴーストピークが現れた場合や、以前に調製した移動相を使いまわしてゴーストピークがみられた場合は、空気中の成分が影響している可能性が高いです。
HPLCが実験室のエアコンの吹き出し口に近く、風が直接当たっている場合、ゴーストピークが現れることがあります。
風の向きや強さを変えてみてください。

トラブル6:ピーク形状が悪い

ピーク割れや肩ピークがあるものは、正しく分離ができていません。
1つのピークのみに異常がみられる場合と、全てのピークに同様の異常がみられる場合で、原因と対処法が異なります。

原因

1つのピークのみにみられる場合

  • 2つの成分が含まれており分離しきれていない

全てのピークにみられる場合

  • カラムが劣化している
  • カラムに不純物が付着している
  • 移動相と試料溶液の溶媒の溶出力が異なる

対処法

  • 分析条件を検討する
  • カラムを交換する
  • カラムを洗浄する
  • 試料溶液と移動相の有機溶媒比率を同じにする

ピーク割れや肩ピークが特定のピークのみにみられる場合は、2つ以上の成分が分離していません。
分析条件の「トラブル4:ピークが重なる」の対処法を参考に、分離する条件を検討してください。
全てのピークに異常がみられる場合は、カラムの状態が悪いことが多いです。
カラムを洗浄するか別のカラムに交換してみましょう。

HPLCのピークトラブルまとめ表

トラブル原因対策
面積がばらつく・オートサンプラーにエア
・試料温度が一定でない
・移動相が不均一
・キャリーオーバー
・オートサンプラーの脱気
・試料温度が安定するまで待つ
・移動相を調製し直す
・インジェクターを洗う
ピークが出ない・液が漏れている
・カラムの接続忘れ
・検出器の電源入れ忘れ
・検出波長が間違っている
・試料濃度が薄い
・カラム内から試料が出ていない
・カラムに試料が吸着
・設定条件を見直す
・試料溶液の濃度を確認
・カラムの種類を変える
・移動相組成を変える
ピークがブロード・カラムが劣化
・試料がカラムに吸着
・注入量が多すぎる
・デッドボリュームがある
・試料と移動相の溶媒比率が異なる
・カラムを洗う
・カラムを交換する
・注入量を減らす
・配管をつなぎ直す
・試料溶媒と移動相の組成を合わせる
ピークが重なる・カラムの劣化
・成分が分離していない
・カラムを交換する
・分析条件を再検討する
ゴーストピークが出る・水の不純物
・試料の溶媒
・キャリーオーバー
・有機溶媒の安定化剤
・バイアル瓶のシリコン
・実験室の環境
・移動相を調製し直す
・試料溶媒と移動相の組成を合わせる
・機器を洗浄する
・バイアルの種類を変える
・HPLC本体に風が当たらないようにする
ピーク割れ/肩ピーク・分離が不十分
・カラムの劣化
・カラムに不純物が吸着
・試料と移動相の溶媒比率が異なる
・分析条件を検討
・カラムを交換する
・カラムを洗う
・試料溶媒と移動相の組成を合わせる

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まとめ

まとめ

HPLCのピークに異常がみられて悩んでいる方に、よくある6つのトラブルを挙げて原因と対処法をご紹介しました。
ピークに異常がみられる原因はさまざまで、対処法も1つではありません。
異常が出ている原因に目星をつけて、1つずつ対処法を試していきましょう。


分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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