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理化学試験の初心者必見!分析の精度を上げる9個のワザ

2022.07.04 (Mon)

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bunseki-keisoku

初心者

化学メーカーや製薬会社に入社して理化学試験を担当することになった、部署移動があり理化学試験を初めて実施することになったというあなた、分析の精度が上がらず何度やっても異なる結果が出て困っていませんか?
試験の手順書や日本薬局方に記載されている試験法は、手技のポイントが明確になっていないことがあります。
そのため何度やってもうまくいかない、という事態が起こるのです。

そこでこの記事では理化学試験の初心者に向けて、分析精度を上げる9つのポイントを紹介します。
さらに難易度が高い試験や、トレーニングの時間がない場合におすすめのサービスもお伝えするので、最後までお読みください。

理化学試験とは

理化学試験とは食品・材料・医薬品などの品質や性能を確かめるために、分析機器を用いて化学的に評価することです。
微生物を使って評価する試験や、バイオ医薬品の試験(アッセイ)は理化学試験には含みません。

日本では製造した製品を消費者の元に届ける前に、安全であるか評価しなければなりません。
品質や性能を評価するために実施されるのが、理化学試験です。
製品はそれぞれの分野の法律に適合した理化学試験で、品質が評価されます。
各製品における遵守すべき法律は、次のとおりです。

  • 食に関係するもの:食品衛生法
  • 化粧品や家庭用品:薬機法、家庭用品規制法
  • 医薬品:薬機法

医薬品の理化学試験は日本薬局方

化学医薬品の理化学試験は、日本薬局方(にほんやっきょくほう)にしたがって実施します。
日本薬局方とは、薬機法(第41条)に基づいて作成されたもので、厚生労働大臣が認可した文書です。
日本薬局方は、局法(きょくほう)や薬局方(やっきょくほう)とも呼ばれることがあります。
国内の事情や国際調和に対応するため定期的な改正がなされており、現時点(2022年)で第十八改正版が最新です。

医薬品の理化学試験は、日本薬局方の「一般試験法」や「参考情報」を参考にし実施します。

医薬品医療機器総合機構 第十八改正日本薬局法
https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0192.html

分析精度を上げるワザ|基本編

日本薬局方にはさまざまな試験方法が記載されていますが、手順の詳細は記載されていません。
そのため理化学試験の初心者は、思うような試験結果が出せないことがあります。
分析精度を上げるためには、いくつか注意すべき点があるのです。
まずは、理化学試験の基本操作で注意するポイントを5つ紹介します。

秤量

物質の重さを量る「秤量(ひょうりょう)」は、天秤を使用します。
天秤を選択するときに注意したいことと、物質を量るときに注意したいことを解説します。

天秤の選択

  • 秤量したい物質の重さと天秤のレンジが合っているか
  • 定期点検が実施されている天秤か
  • 日常点検に異常はないか

天秤は種類によってレンジが異なります。
量りたい物質と天秤のレンジが違うと、正確に秤量ができません。
機器の取り扱い説明書や、独自で作成している機器の作業手順書などを読んで、天秤のレンジを把握しておきましょう。

天秤は繊細な機器で、正しい使い方をしていても長期間使っていると秤量値がずれることがあります。
そのため専門業者の定期的な点検が必要です。

日常点検では、機器が水平であるか・内部分銅の校正は正常か、などのチェックを満たしているかどうか確認します。
どんな機器でも、突然壊れることがあります。
そのため、日常点検は欠かすことなく実施してください。

秤量時のポイント

  • 空調が直接機器に当たらないようにする
  • 静電気に注意
  • 物質の吸湿性をチェック

エアコンなどの空調の風が天秤に直接当たると、秤量値がずれたり、軽い物質が風に飛ばされたりします。
静電気の多い場所では、天秤に乗せた物質が舞い上がり正しい重さが表示されません。

物質によっては吸湿性の高いものがあります。
秤量時に空気中の湿気を取り込み、値がどんどん上がっていきます。
そのため吸湿性の高い物質を秤量する際は、湿度の低い部屋で素早く作業をしなければなりません。

溶解し切ったか確認

物質を秤量し水などに溶かす(溶解)ときは、溶け残りに注意が必要です。
水溶液を振ったりスターラーで攪拌したりして溶解させますが、完全に溶けたかどうかよく確認しましょう。
溶け残りがあれば目的の濃度になっていないため、試験結果にズレが生じます。

pH測定・調製

液体のpHを測定したり、試料調製の際にpHを調整するときには、pHメーターを使います。
pHメーターを使うときに注意するポイントは次の3つです。

  • 機器や電極に異常はないか
  • 校正用の標準液で校正されているか
  • 液温は適切か

pHメーターの電極は薄いガラスでできており繊細なもので、割れることがあります。
そのため使用前の電極に、ヒビなどの傷がないかチェックしましょう。
電極内には内部液と呼ばれる液体が入っていますが、枯れている場合があるので確認して足りていないなら補充してください。

pHメーターは日常的に標準液で校正しなければ、正しい数値がでません。
またpHは液温に左右されます。
固体の物質を溶解させた直後の水溶液は、温度が変化しています。
標準液と同じ温度(室温)になるまで、しばらく待ってから測定してください。

容量をはかるポイント

液体の容量は、メスシリンダー・ピペット・メスフラスコ・ビュレットなどの器具を使ってはかります。
これらの器具に共通して注意したい点は、以下の3つです。

  • はかりたい容量のレンジに合わせたサイズを選ぶ
  • メニスカスを正しく読む
  • 器具のグレードに注意

液体をはかるレンジと、器具のレンジを合わせなければ正確に容量がはかれません。
たとえば、2mLの液体を取るのに、100mLのメスシリンダーを使うと値がずれます。
2mLを取るなら、10mLや5mLのメスシリンダーを選びましょう。

標線の見方
出典:https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2008/200801nyuumon.PDF

液体の体積をはかるときは、液面(メニスカス)に目線を合わせなければなりません。
メニスカスを斜め上や下から見てしまうと、値がズレるので注意してください。
上の図のように、メスアップの場合は標線とメニスカス、ビュレットなどは目盛りとメニスカスをまっすぐ見て読み取ります。

またガラス器具には、グレードが設定されているものがあります。
試験のレベルや、求めたい結果に応じて最適なグレードの機器を選んでください。

コンタミに注意

試料のコンタミ(異物の混入)は、測定結果に影響することがあります。
理化学試験でコンタミが発生しやすい場所は次のとおりです。

  • パスツールピペット
  • パスツールピペットのスポイト部分
  • 薬さじ
  • 実験台の汚れ

バスツールピペットは液体を出し入れする際に使いますが、使い分けをしっかりしておかないとコンタミする可能性があります。
またパスツールピペットでたくさん吸い込みすぎると、上部のスポイト部分が汚染されます。
薬さじも物質ごとに新しいものに変えなければ、コンタミします。
汚れた実験台を使っていると風に舞った物質やこぼれ落ちた物質が入るので、実験台はいつもきれいに保ちましょう。

分析精度を上げるワザ|HPLC編

HPLC編

液体クロマトグラフィー(HPLC)は物質の含量や不純物の測定のために、理化学試験でよく使われる方法です。
しかしHPLCの試料調製は実験者の技術が必要なこともあり、初めは含量が揃わないことがあります。
HPLCの試料調製において、分析精度を上げるワザを4つ紹介します。

ガラス吸着を防止

物質によっては、ガラスに吸着しやすいものがあります。
HPLCで使うガラス器具は、メスフラスコ・ホールピペット・HPLCバイアルなどです。
新しいガラス器具と古いガラス器具では、吸着の度合が違うこともあります。
そのため吸着しやすい物質は、ガラス器具の状態に注意が必要です。

吸着を減らすための対策は、液体を取る前に共洗いをすることです。
ガラスに試料を満遍なく流して、表面に吸着させておきます。
共洗いに使った液体は捨てて、新しいものをはかり取ってください。

ホールピペットの欠けをチェック

ガラスでできているホールピペットの先は細く、よく欠けていることがあります。
先が欠けていると、正確に液体を取れません。
使用するホールピペットの先が欠けていないか、都度チェックしましょう。

酸化・分解しやすい成分は要注意

試料溶液中で酸化や分解するものは、試料調製後から測定までの時間を注意します。
試料はできるだけ状態が変化しない溶媒に溶かしますが、どうしても分解してしまう物質は、調製後すぐに測定できるよう機器を準備しておきましょう。

また溶媒の蒸発も、含量がズレてしまいます。
蒸発しやすい有機溶媒を使っている場合は、しっかりと栓や蓋を閉めて保管してください。

小さすぎるスケールはズレやすい

1mL以下のホールピペット、10mg以下の秤量は精度が落ちます。
そのため試料量に余裕があれば、ホールピペットは2mL以上、秤量は20mg以上がおすすめです。

試料溶液の調製で、希釈回数が多すぎる場合もズレやすいです。
希釈回数が増えると作業量が多くなり、集中力が落ちてミスをする可能性も高まります。
希釈回数はできるだけ少なく(2回程度)抑えられるよう、希釈倍率を検討してください。

精度を上げにくいなら外注|理化学試験の受託分析メーカー

外注

理化学試験の初心者は何度かトレーニングをおこなって、精度を上げることが可能です。
しかし試験系が難しく精度が上がらない、自社でトレーニングをしている時間がない、という場合は、受託分析メーカーに外注するのはいかがでしょうか。
おすすめのメーカーを4社ご紹介します。

日本検査株式会社

日本検査株式会社は、プラントの検査や設備の安全管理、理化学試験事業など幅広い分野の「検査」をしている会社です。
理化学試験事業は環境分野をメインに、豊富な知識と人材で受託分析をおこなっています。

参考:日本検査株式会社ホームページ
https://jic-global.com/service/laboratory/

株式会社島津テクノリサーチ

株式会社島津テクノリサーチは、分析機器大手の島津製作所が株主の分析受託メーカーです。
環境・材料・医薬品まで、さまざまな分野の分析が可能です。
島津製作所製の機器が豊富で、高分解能GC-MSは全国随一の保有台数があります。

参考:株式会社島津テクノリサーチ ホームページ
https://www.shimadzu-techno.co.jp/

株式会社住化分析センター

株式会社住化分析センターは、国内大手の分析受託メーカーです。
理化学試験の受託分析のみならず、電子材料の評価や各国への製造販売申請なども受託しています。
理化学試験は、分析法の開発や安定性試験の受託も可能です。

参考:株式会社住化分析センター ホームページ
https://www.scas.co.jp/

一般財団法人日本食品分析センター

日本食品分析センターは、食品・化粧品・医薬品などの分析が実施できる会社です。
正しい分析結果を伝えてくれるだけに留まらず、お客様に寄り添ったサポートをモットーにさまざまな分析の悩みも解決してくれます。

参考:一般財団法人日本食品分析センター ホームページ
https://www.jfrl.or.jp/

初めての受託分析はご相談ください

ご相談を

受託分析メーカーは得意不得意な分野があり、選ぶのが難しいです。
最適な会社を探したいなら、分析計測ジャーナルにご相談ください。
理化学試験の難易度や予算に応じて、さまざまな受託分析メーカーを紹介します。

各種受託分析・試験はこちら

まとめ

理化学試験の精度が上がらず悩んでいるあなたに、精度を上げるポイントを9つ紹介しました。
一つずつ実験操作を再確認し、見落としている点がないかチェックしてみましょう。

難易度が高い試験やトレーニングの時間がない場合は、受託分析メーカーに依頼することも可能です。
最適な受託分析メーカーの紹介は、以下のリンクからお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター:バッハ

大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。

さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。

幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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