pHメーターはさまざまなタイプが販売されており、どれを選べばいいのか難しいですよね。安いものではないので、買い物に失敗したくないと思います。
そこでこの記事では、pHメーターのおすすめメーカーと、おすすめ機種、さらに価格も紹介します。分野別におすすめ機種を紹介するので、あなたに最適な1台が見つかりますよ。
分析計測ジャーナルでは、pHメーターに関するご質問を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
pHメーターの基礎知識
pHメーターとは、水溶液や土壌の酸度やアルカリ度を計測する機器です。
①:銀/塩化銀内極
②:ガラス電極
③:ガラス応答膜
④:比較電極内部液
⑤:液絡部
⑥:内部液補充口
⑦:温度センサー
pHメーターの基本的な構造は、ガラス電極、参照電極、およびそれらを保持するメーター本体から成り立っています。ガラス電極は測定対象の液体に浸され、電極内の電位差がpH値として表示されるのです。pHメーターの電極の基本構造は図のようなものですが、用途に合わせてさまざまな形の電極が出てきています。
pHメーターの詳しい使い方に関してはこちらの記事も参考にしてみてください。
pHメーターのおすすめメーカー4選!
pHメーターを製造する国内外のおすすめメーカーは次の4社。
どのメーカーも多くのシェアを持っていますが、得意な分野や人気のタイプなどが異なるので、メーカー選びの参考にしてみてください。
メトラー・トレド (Mettler Toledo)
メトラー・トレド (Mettler Toledo) は、計測機器および精密機器の分野で世界的に知られるスイスの企業です。pHメーターは、使いやすさと正確性を兼ね備えており、さまざまな用途に対応しています。研究室での高精度な測定が求められる場面や、製造工程での品質管理において、メトラー・トレドのpHメーターが採用されていることが多いです。
ホリバ (Horiba)
ホリバ (Horiba) は、分析機器や計測機器の製造を手掛ける日本の企業です。pHメーターは、使いやすく正確性が高いので、研究室での厳密な分析や品質管理に広く使用されています。pHメーターの電極といえばホリバという研究室も多いのではないでしょうか。ホリバは日本企業ならではの高い品質と、安心のサポート体制が整っています。
東亜ディーケーケー
東亜ディーケーケーのpHメーターは、研究室での精密な分析から、工業プロセスや環境モニタリングに至るまで、幅広い用途に対応しているのが特徴です。ポータブルタイプや据え置き型、ターンテーブル付きなど、多様なニーズに応えるための豊富な製品ラインナップを揃えています。なかなか目的のpHメーターが見つからない、というときは東亜ディーケーケーのpHメーターを検討してみてください。
ハンナ インスツルメンツ (Hanna Instruments)
ハンナ インスツルメンツ (Hanna Instruments) は水質測定機器の専門メーカーです。pHメーターは研究室だけでなく農業、水質管理、食品製造など幅広いジャンルで使われています。土壌用や河川用のpHメーターも多くあるので、フィールドワークでのpHメーターを探しているなら、ハンナ インスツルメンツをチェックしましょう。スマートフォンと連携できる、便利なpHメーターもありますよ。
分野別!pHメーターのおすすめ機種と価格
pHメーターは使用する分野によって、形や精度、価格帯が異なります。今回は以下の分野ごとに紹介します。
- 研究・実験室
- 環境モニタリング・フィールドワーク
- 農業・土壌測定
- 食品・飲料業界
- 教育機関
分野ごとに必要な機能や特徴もポイントもあるので、それぞれ解説し、価格もお伝えします。機種選定や予算申請の参考にしてみてください。
研究・実験室向け
企業や大学の研究用pHメーターに必要な機能は、以下のものがあるのが望ましいです。これらの機能を備えたおすすめ機種は2つあります。
- 高精度
- 広い測定範囲
- 温度補正機能
- 耐薬品性
- データ記録、転送機能あり
HORIBA LAQUA pHメーター F-74
画像出典:HORIBA LAQUA F-74
HORIBA LAQUA pHメーター F-74は、研究室や実験室での高精度なpH測定を可能にする信頼性の高い計測機器です。このモデルは、堀場製作所の先進的な技術とノウハウを結集し、正確で安定したpH測定が測定できます。各国薬局方に準拠しているので、製薬業界で人気の機種です。pH以外の測定も同時にできるので、業務の効率化にも役立ちますよ。
価格:418,000円〜
メトラー・トレド SevenExcellence S400
出典:メトラー・トレド SevenExcellence S400
メトラー・トレド SevenExcellence S400は、最先端の技術と使いやすい設計で、あらゆる測定ニーズに応える機種です。海外メーカー機種ですが、日本語設定があったり、直感的に操作ができたりするので、初心者でも簡単に使えます。内部メモリに大量データを保管できるだけでなく、パソコンにデータを取り込むこともできるので、品質管理などで毎日たくさん測定している現場にも便利です。
価格:295,500円〜
環境モニタリング・フィールドワーク向け
環境モニタリングに使うpHメーターは、次の4つのポイントがあれば便利です。
- 携帯性のよさ
- 耐久性
- 長時間バッテリー
- 簡単に校正できる
YSI EcoSense pH100A
YSIのエコセンスpH100Aは、片手でも操作ができるコンパクトなpHメーターです。小さいですが±0.01pHの高い精度があります。1000時間のバッテリー寿命と50データメモリで、長期間のデータ採取にもぴったりです。言語は英語のみなので、操作に慣れるまでに時間がかかる場合があるかもしれません。
価格:98,680円〜
ハンナ インスツルメンツ HI991301
ハンナ インスツルメンツのHI991301は、多用途対応のpHメーターです。pH以外に、EC・TDS・温度が同じ電極で測定できます。接続部もしっかり防水仕様なので、雨の日でも外で使いやすい。駆動は単4電池3本で、約600時間も連続使用できます。196gと軽量なので、他の測定機器で荷物が多くなっても邪魔になりにくいですよ。
価格:129,800円〜
HORIBA LAQUAtwin pH-33
出典:HORIBA コンパクトpHメータ LAQUAtwin
HORIBAのLAQUAtwinは、平面タイプの電極を搭載したpHメーターです。微量測定も可能で、わずか0.1mLのサンプル量で測定できます。シンプルなデザインで、誰でも簡単に使えますよ。バックライトがあるので、夜間の測定でも結果が見やすいです。
価格:22,000円〜
農業・土壌測定向け
土壌測定用のpHメーターは専用のものでなければなりません。特徴は次の3つ。
- 土壌専用の電極
- 自動温度補正
- BluetoothやWi-Fiでのデータ転送
シンワ測定㈱土壌酸度(pH)計 A
シンワ測定㈱土壌酸度(pH)計 Aは、コスパのいい土壌用pHメーターです。価格は1万円以内で、家庭菜園でも取り入れやすい価格帯になっています。農業のプロでも簡易的にpHを測定したいなら、おすすめの一台です。1分間土に刺すだけで簡単にpHがわかるので、機械に苦手意識があっても使えますよ。
価格:7,480円〜
ハンナ インスツルメンツ HALO2 土壌用pHテスター HI9810302
出典:ハンナ インスツルメンツ HALO2 土壌用pHテスター HI9810302
ハンナ インスツルメンツのHI9810302は、Bluetoothを搭載したワイヤレスpHテスターです。測定データは専用アプリでスマホやタブレットに転送できるので、pHのモニタリングに便利。土壌以外の溶液も測定可能なので、水耕栽培や液体肥料のpH測定にも使えます。
価格:31,900円〜
食品・飲料業界向け
食品業界で求められるpHメーターの要素は以下の4つです。
- 迅速な測定
- 衛生的なデザイン
- 対象製品に合った電極
- 携帯性のよさ
アタゴ PAL-pH DPH
アタゴ PAL-pH DPHは電極が割れないのが最大の特徴です。そのため異物混入が命取りになる、食品業界にぴったりの機種。ポケットに入るコンパクトサイズで、現場に持って入るのも容易です。たった3滴のサンプルでpHがわかります。測定時間は3秒なので、急速に変化するタイミングも逃しません。
価格:26,000円〜
東亜ディーケーケー ポータブルpH・ORP・イオン計HM-40P
出典:東亜ディーケーケー ポータブルpH・ORP・イオン計HM-40P
東亜ディーケーケーのHM-40Pは、食品業界で人気のpHメーターです。持ち運びがしやすく、製造プロセス途中のモニタリングに最適なデザインになっています。防水機能と温度補正機能も備わって、どんな現場でも対応可能。測定範囲は広く、精度も±0.01pHなので正確なpHが測定できます。
価格:70,000円〜
教育機関向け
中学校から大学までおすすめのpHメーターは、以下の特徴があるものです。
- 使いやすさ
- コストパフォーマンスのよさ
- 耐久性
エー・アンド・デイ pHメータ AP-20
エー・アンド・デイのpHメータ AP-20は、耐久性があり持ち運びもしやすいpHメーターです。シンプルなデザインで使いやすく、初めてpH測定をする学生に最適。コストパフォーマンスが高く、数台同時購入もしやすい価格帯です。防塵・防水機能があるので、屋外でのpH測定にも向いています。
価格:15,000円〜
メトラー・トレド PHメーター FiveEasy F20スタンダードキット
出典:メトラー・トレドPHメーター FiveEasy F20スタンダードキット
メトラー・トレドのF20は、本格的なラボ用pHメーターですが低価格で、教育機関におすすめの機種です。測定範囲と精度が高いので、大学の研究室でも使えます。言語は英語のみですが、わかりやすく直感的に操作できるので学生でも扱いやすいです。実験室や研究室に1台だけ本格的なpHメーターを求めるなら、メトラー・トレドのF20はいかがでしょうか。
価格:103,500円〜
pHメーターの電極が割れやすいポイント
pHメーターのガラス電極はとても薄いガラスなので、少しの衝撃で割れてしまいます。私はこれまで何本もガラス電極を割った経験があるほどです。ガラス電極は消耗品とはいえ、1本1万円以上するので破損には十分気をつけましょう。ガラス電極が割れやすいタイミングは次の3つ。
- 電極を下げすぎてビーカーの底に当たって割れる
- 溶液をスターラーで撹拌しながら測定する際、スターラーが跳ねて電極に当たって割れる
- pH測定後ビーカーのフチに電極が当たり割れる
私はHPLC用の移動相調製の際に、よくガラス電極を割ってしまっていました。移動相調製のときに電極が割れてしまっても、作り直しをしたらいいだけです。しかし貴重なサンプル測定のときや、コンタミが許されない測定のときの電極破損は厳禁です。こんなときはいつもより、よく注意して作業するのをおすすめします。
まとめ
pHメーターのおすすめメーカーは次の4つ。
研究室や企業の品質管理では、メトラー・トレドやホリバがおすすめです。フィールドワーク用なら東亜ディーケーケーやハンナインスツルメンツを検討してみてください。
pHメーターの価格は、1万円以下のものから40万円以上のものまでさまざまです。価格が高くなれば機能性がよくなり、精度も上がります。用途を明確にし、最適なpHメーターを選んでくださいね。
分析計測ジャーナルでは、pHメーターのトラブルのご相談や機器のご紹介などを承っております。お気軽にお問い合わせください。
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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