
pHメーターは簡単に物質のpHが測定できる機器です。学生実験でも使う機会は多く、研究者なら一度は使ったことがある機器ではないでしょうか。pHメーターの使い方は簡単です。しかしポイントを守らないと正しいpHは測定できません。
そこでこの記事では、pHメーターの正しい使い方を解説します。またよくあるトラブルと対処法をご紹介し、おすすめの機種もお伝えします。
分析計測ジャーナルでは、pHメーターに関するご質問を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
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pHメーターとは?|原理も紹介
pHメーターとは、水溶液や土壌などのpHを測定し測定結果がデジタル表示される機器のことです。pHの管理は実験において非常に重要で、pHが異なれば実験結果が変わるため、pHメーターは実験室に欠かせない機器の一つです。pHメーターは工場のラインモニタリングや、河川などの環境モニタリングでも活躍しています。
pHメーターの原理は、ガラス電極法というものが用いられています。比較電極とガラス電極の2つの電極間の電位差を測定し、試料のpHを算出しているのです。一般的に使われている卓上型pHメーターの電極は、ガラス電極・比較電極・温度センサーが一体になったガラス複合電極です。

①:銀/塩化銀内極
②:ガラス電極
③:ガラス応答膜
④:比較電極内部液
⑤:液絡部
⑥:内部液補充口
⑦:温度センサー
ガラス複合電極は上の図のような構造をしています。内部液はpH7.0の塩化カリウム溶液が用いられます。ガラス応答膜は破損しやすいので、取り扱いは慎重におこないましょう。またガラス応答膜は湿潤保管が必須のため、使用しないときは乾燥しないよう保管してくださいね。
pHメーターの正しい使い方
pHメーターは電極を試料に入れるだけで簡単にpHが表示されます。しかし正しい使い方を知らないと、正確なpH測定はできません。今回は実験室でよく使う卓上型のpHメーターについて、使い方を解説します。それぞれの段階で守りたいポイントを挙げましたので、今一度pHメーターの使い方をチェックしてみてください。
- 電極をチェック
- 適切な校正
- 試料のpH測定
- 測定後の処理
電極をチェック
使用前に電極の状態を確認します。確認するポイントは次の3点です。
- 内部液は不足していないか
- 電極内部に気泡が混入していないか
- 比較電極内部液の補充口を開けたか
内部液は蒸発して量が減っていることがあります。そのため毎回、補充口近くまでしっかり内部液が満たされているかどうか確認しましょう。内部液を追加するときに、気泡が電極内に入ることがあります。気泡が入ってしまったら、軽く電極を振るなどして気泡を出してください。測定時には内部液の補充口を開けておく必要があります。補充口が閉まっていると水圧によって試料と内部液がうまく接しません。補充口を開けることは毎回の測定で必要ですが忘れやすい操作なので、気をつけてくださいね。
適切な校正
校正は正確なpH測定のために欠かせません。pHの校正で守りたいポイントは以下の3つです。
- 校正は最低1日1回
- 校正ポイントは2つ以上
- 標準液の劣化に注意
pHの校正は、最低1日1回おこなうのがおすすめです。校正するpHは、試料溶液のpHに近い2点以上について実施します。たとえば、pH5付近の試料を測定するなら、pH7とpH4の標準液で校正してください。pHの測定範囲が広くなる場合(pH2~pH8など)は、3点のポイントで校正すると精度が上がります。校正の順番に決まりはありません。
標準液は開封すると空気に触れて変質することがあります。特にアルカリ性の標準液(pH9以上)は変質しやすいので、保管時はしっかりキャップを閉め、開封後は早めに使い切りましょう。
試料のpH測定
電極の状態が問題なく、適切な校正が実施されていれば試料のpH測定を開始できます。試料測定時に注意したいポイントは2つです。
- 電極を洗浄してから試料に浸す
- 電極を入れる深さに注意
電極には標準液や保存液がついているので、純水で流しキムワイプなどで軽く拭き取ります。洗浄する場所はガラス応答膜の部分のみで構いません。液絡部に純水がかかると電極内部液と混ざるので、液絡部は避けてください。複数の試料を連続して測定する場合は、試料のコンタミを防ぐために都度電極を洗浄します。
電極を試料に入れたときの試料液面は、「内部液の液面より下」かつ「液絡部および温度センサーより上」です。液絡部と温度センサーの高さまで試料が足りない場合は、試料量を増やしてください。
測定後の処理
試料のpH測定が終了したら、適切な方法でpHメーターを保管します。
- 電極の洗浄
- 補充口の窓を閉める
- 湿潤保管
試料のコンタミがないよう、電極は洗浄します。補充口も内部液の蒸発を防ぐために閉めてください。電極は湿潤保管が基本です。メーカーによって推奨されている方法が異なりますが、純水や内部液などでガラス応答膜が乾燥しないよう適切な方法で保管してください。
pHメーターでよくあるトラブル

pHメーターを使用しているときによく起こるトラブルを挙げました。対処法もお伝えするので、pH測定で困ったら参考にしてみてください。
pHが上がり続ける/下がり続ける
pH測定中に数値が上がり続けるまたは下がり続けるときは、空気中の成分が影響していることが多いです。下がり続ける場合は空気中の二酸化炭素が溶け込んでいる可能性があります。実験室では複数の研究者がさまざまな物質を取り扱っています。アルカリ性で揮発性のある物質をpHメーターの近くで取り扱っていると、pHが上昇することも。スターラーの回転速度を落として素早くpH測定を終えましょう。
pHが安定しない
pHが上下して安定しない原因は、温度が一定でないことが多いです。pH以外に温度も見てみると温度の変化が起こっていませんか?物質を溶解させた直後の水溶液は、吸熱や発熱していることがあります。pH測定で適切な温度は25℃前後です。温度が安定するまでしばらく待ってから、pH測定をおこないましょう。
pH応答が遅くなった
これまでに比べてpH測定結果が出るまでに時間がかかるようになっていたら、次の原因が考えられます。
- 液絡部が目詰まり
- ガラス応答膜が汚れや乾燥
- 電極の劣化
液絡部とガラス応答膜はさまざまな種類の試料に触れるため、汚れや目詰まりが起こりやすいです。電極の先をよくチェックし、汚れていたら純水での洗浄やメーカー推奨の洗浄液で洗浄してください。
複合ガラス電極は消耗品です。電極を洗浄してもpH応答が遅い、他機種と比較してpHがおかしいという場合は電極を交換しましょう。
用途に応じて選ぼう!pHメーターの種類を紹介
pHメーターのタイプは大きく分けて3つあります。用途に応じて適切な機種を選びましょう。
卓上型
卓上型のpHメーターは実験台に据え置きで使用します。見やすい大きな表示画面と電極が固定できるスタンドがあるのが特徴です。主に実験室での水溶液のpH測定に用いられます。pHメーターでスタンダードなタイプが卓上式です。精度が高く、pH測定以外に導電率測定ができる機種や、測定結果改ざん防止機能がついた機種などもあります。
ポータブル型
ポータブル型は持ち運びができるpHメーターです。実験室での使用はもちろん、工場ライン中の原料pH測定や河川のpH測定におすすめです。ポータブル型のpHメーターは卓上型と同じくガラス電極法でpH測定しています。持ち運びを想定して作られているので、強度があり専用ケースも付属しています。
コンパクト型
コンパクト型のpHメーターは、センサーに試料を1滴落とすだけでpHが測定できるタイプです。現場で簡易的にpH測定するのに適しています。価格は3タイプの中で一番安いので、学校教育や自由研究にも使いやすいです。
pHメーターのおすすめ機種
pHメーターの購入を検討しているなら、これから紹介する3つの機種はいかがでしょうか。どの機器も国内外で愛用者が多いので安心して使えますよ。
LAQUA(HORIBA)
HORIBAのpHメーターは、日本でトップのシェアを誇ります。LAQUAシリーズには、卓上型・ポータブル型・コンパクト型があり、用途に応じて多くの機種から選べます。消耗品も全て揃っているので、pHメーター選びに悩んだらまずはLAQUAを検討してみてください。
SevenExcellenceシリーズ(METTLER TOLEDO)
メトラートレドのSevenExcellenceシリーズは、分析化学実験に最適です。メトラートレドはスイスの会社ですが、pHメーターは日本語表示もあるので安心。大画面のカラー表示で操作性も抜群です。製薬会社の実験室や食品会社の品質管理などには、世界中に愛用者がいるSevenExcellenceシリーズはいかがでしょうか。
参考:METTLER TOLEDO SevenExcellenceシリーズ
Mylana(東亜ディーケーケー)

出典:Mylanaカタログ
東亜ディーケーケー㈱のMylanaは、ポータブル型のpHメーターです。MylanaシリーズのMM-42DPは、1台でpH・ORP・電気伝導率・光学式溶存酸素の4つの項目が測定できる優れもの。現場に複数の機器を持参しなくても、4つの指標がチェックできます。本体の防水加工もされているので、濡れやすい河川のpH測定にぴったりです。
まとめ

pHメーターの正しい使い方についてご紹介しました。pHメーターは試料に電極を入れるだけの簡単操作ですが、正確な測定値を得るためには次のポイントを守りましょう。
- 電極のチェック
- 適切な校正
- 測定時は電極の深さに注意
- 測定後の処置は忘れずに
pHが安定しない場合は、温度や空気中の成分が影響していることがあります。また電極は消耗品のため劣化している可能性も考えられます。
分析計測ジャーナルでは、pHメーターのトラブルのご相談や機器のご紹介などを承っております。お気軽にお問い合わせください。
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ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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