あなたの実験室では、パスツールピペットを使いまわしていますか?パスツールピペットを使い捨てたいと考えていても、もったいなくて使いまわしているということはありませんか?
この記事では、パスツールピペットの正しい使い方と、うまく使いまわし、コストを抑える方法についてご紹介します。
実験コストを削減するには、目的に応じた種類のパスツールピペットを選ぶことも重要です。パスツールピペット選びに困ったら、分析計測ジャーナルにご相談ください。
パスツールピペットとは?
パスツールピペットとはガラス管を熱で細く伸ばしたものに、ゴムなどでできたスポイトキャップを上部につけて、液体を吸い込む器具のことです。化学実験によく用いられるガラス器具です。パスツールピペットという名前は、フランスの化学者ルイ・パスツールの名前が由来となっています。
パスツールピペットの用途は?
パスツールピペットの用途は、少量の液体を移動させるために使います。パスツールピペットには目盛りがないので、液体の量をはかるためには使えません。
化学実験において、パスツールピペットをよく使う場面は次の3つです。
- メスフラスコやメスシリンダーに入れた液体をメスアップ
- 粉末に液体を少量加えて溶かす
- 試料溶液を分析用の容器や機器に移し入れる
正しいパスツールピペットの使い方
パスツールピペットは使い方が簡単で、実験初心者でもすぐに使えるガラス器具です。しかしポイントを守らないと、液体をうまく吸えなかったり実験に失敗してしまったりします。正しいパスツールピペットの使い方と注意点を詳しく解説します。
正しい使い方と持ち方のポイント
使い方
- ①パスツールピペットと、その上部の口径にあったスポイトキャップを準備する
- ②スポイトキャップをパスツールピペットにしっかりはめる
- ➂利き手の中指から小指でガラス管部分を持つ
- ④親指と人差し指でスポイト部分を持つ
- ⑤スポイトを押して空気を抜いた状態で液体にパスツールピペットの先を入れる
- ⑥ゆっくりとスポイトを開き液体を吸い込む
- ⑦スポイトを押して液体を排出させる
持ち方のポイント
パスツールピペットの持ち方のポイントは、5本の指を全て使ってしっかり持つことです。スポイト部分だけを持ってしまうことがありますが、この持ち方は正しくありません。ガラス管の部分もしっかり持たなければ、パスツールピペットが安定せず液体の吸い込みに失敗します。またスポイトキャップが取れてしまった場合、パスツールピペットだけが液体の中に沈んでしまうことも。
パスツールピペットを持つときは、ガラス管とスポイトの両方をしっかり握りましょう。
使い方の注意点
パスツールピペットを使う際に注意する点は次の3つです。
- 液体を吸い込みすぎない
- 液体をゆっくり吸い込む
- パスツールピペットの先端に注意
パスツールピペットで吸い込める液体の量は、ガラス管の長さ分だけです。スポイトの空気を抜きすぎて液体を吸い込みすぎると、ガラス管内に入りきらなかった液体がスポイトの中にまで入ってきます。
また吸い込む速度も早すぎると、液体表面が跳ねてスポイト内に入ることもあります。スポイトはさまざまな実験で使いまわしすることがあるので、汚染しないよう注意が必要です。スポイト内に液体が入った場合は、汚染されたと判断し、廃棄してください。パスツールピペットの先端はとても細く少しの衝撃で折れます。ビーカーの底に軽く当てるだけでも折れることも。先端が折れたまま使っていると、手などに触れた際にケガをする恐れがあります。またガラス破片が液体の中に入ったままだと、実験に支障をきたすこともあるので注意しなければなりません。
パスツールピペットは使い捨て?使いまわしOK?
パスツールピペットは実験の種類によっては、使いまわすことは可能です。学生実験や大学の研究室では、使いまわしているところがあります。一方、企業は使い捨てが多いです。
パスツールピペットを使い捨てるメリットとデメリットを紹介し、使いまわす際の注意点を解説します。
使い捨てのメリット・デメリット
パスツールピペットを使い捨てるメリットとデメリットは、次のとおりです。
メリット
- 洗浄の手間が省ける
- コンタミの危険を避けられる
デメリット
- コストがかかる
パスツールピペットを使い捨てにすると、実験中のコンタミを防げて洗浄の手間も省けます。しかしコストがかかるので、予算の少ない実験室では使い捨てしにくいかもしれません。
使いまわしの注意点
パスツールピペットを使い捨てできない場合は、以下の2つのポイントを守って使いまわしをしてください。
- パスツールピペットの洗浄は入念に
- 洗浄中の破損ケガに注意
パスツールピペットは細くて洗いにくいですが、コンタミを防ぐため、効率的な洗浄用溶媒を選んで入念に洗ってください。先端は細くて折れやすいので、洗浄中に破損することもあります。先が折れたパスツールピペットはとても鋭利なので、ケガには十分注意しましょう。
使いまわしできる実験
パスツールピペットを使いまわすかどうかは、使用する実験によって判断することが可能です。使いまわししやすい実験のポイントは、次の2つです。
- 精度を求めない実験(多少のコンタミは許容できる)
- パスツールピペットに付いた試料が容易に洗浄できる実験
具体的には有機合成実験では使いまわすことがあります。有機合成実験の溶媒の採取だけであれば、そこまでの精度は必要ない場合があり、洗浄も容易です。
一方、高度な感度が求められる分析化学実験などでは、コンタミのリスクが高いので使いまわしは避けたほうがいいでしょう。
目的に応じたパスツールピペットの選び方
パスツールピペットは、さまざまなメーカーから何種類もの製品が販売されています。そのため使用する目的に応じたものを選ばなければなりません。パスツールピペットを選ぶ際に確認する項目をご紹介します。
長さをチェック!容量は?
パスツールピペットの全長は大きく分けて、150mmと230mmの2種類あります。価格は230mmのほうが高くなります。容量はどちらも大差はなく約2mLです。
メスフラスコやメスシリンダーなど長いガラス器具に使う場合はキャピラリー部分が長い230mm、ビーカーなど口の広い器具と使うなら150mmと使い分けができます。
綿栓の有無
スポイト部に液体が入ること(コンタミ)を防ぐためパスツールピペットの上部に綿栓がついている製品があります。実験初心者で吸い込みすぎる怖れがあるなら、綿栓有もおすすめです。しかし綿栓有のパスツールピペットは、無しのものに比べて価格が上がります。
滅菌の有無
無菌環境で実験をする場合は、滅菌有のパスツールピペットを選びましょう。滅菌方法はγ線滅菌が一般的です。使いやすいように少量のパスツールピペットが、袋に小分けになって入っています。
無菌でない一般的な環境で実験するなら、滅菌は必要ありません。価格を抑えた滅菌無のパスツールピペットを選ぶほうがいいでしょう。
パスツールピペットでコスト削減?各メーカーの価格調査
同じタイプのパスツールピペットでも、1本あたりの価格はメーカーによって異なります。
特に理由はなく同じメーカーを使い続けているなら、一度見直してみるのはいかがでしょうか。
今回はよく使われている、「全量約150mm・綿栓無・滅菌無」のタイプについて、比較してみました。
商品名 | メーカー | 全長 (mm) | 上部外径 (φ) | 入数 | 標準価格 (税抜) | 1本あたりの値段 | 参考URL |
パスツールピペット40×146mm | コーニング・PYREX | 146 | 6.5~7.5 | 200本/箱×5箱(計1000本) | 8,820円 | 8.8円 | アズワン |
パスツールピペット綿栓無 | アズワン | 150 | 6.95~7.45 | 250本/箱×4箱(計1000本) | 8,700円 | 8.7円 | アズワン |
パスツールピペット綿栓無146mm | Fisher Scientific | 146 | 7.0 | 144本/箱×5箱(計720本) | 7,700円 | 10.7円 | アズワン |
パスツールピペット2mL 全長150mm | - | 150 | 7.1 | 250本/箱×4箱(計1000本) | 6,700円 | 6.7円 | アズワン |
パスツールピペット5 IK-PAS-5P | IWAKI | 150 | 7 | 1000本/箱 | 11,390円 | 11.4円 | アズワン |
パスツールピペット綿栓なし | ヒンゲンベルグ | 150 | 7 | 250本/箱×4箱(計1000本) | 10,200円 | 10.2円 | 三商 |
キンブルパスツールピペット5インチ | Kimble | 150 | - | 250本/箱×4箱(計1000本) | 8,500円 | 8.5円 | 三商 |
三商パスツールピペット | SANSYO | 150 | 7 | 200本/箱×5箱(計1000本 | 8,300円 | 8.3円 | 三商 |
上記のとおり、今回リサーチしたパスツールピペットの1本あたりの値段(税抜)は、11.4~6.7円の幅がありました。1本にすると大きな金額の差ではありませんが、使い捨てて毎日何十本も使うなら見過ごせない差です。実験のコスト削減を考えているなら、ぜひパスツールピペットの価格をチェックしてみましょう。
パスツールピペットのご提案とサンプル品をご提供
パスツールピペットを製造しているメーカーはさまざまで、どのメーカーが最も安いのか1つずつ調べるのは難しいです。分析計測ジャーナルでは研究に忙しいあなたに代わって、パスツールピペットをご提案いたします。
また気になるメーカーがあれば、少量ですがサンプル品のご提供も可能です。ご興味ございましたら、下記リンクより分析計測ジャーナルへお問い合わせください。機器・消耗品のおためしについて案内
まとめ
パスツールピペットを使いまわすかどうかは、実験で求める精度や種類に応じて検討してください。パスツールピペットの正しい使い方のポイントは、「5本の指を全て使ってガラス管とスポイトをしっかり握る」ことです。
実験コストを削減するには、目的に応じた種類のパスツールピペットを選ぶことが肝心です。また同じ種類のパスツールピペットでも、メーカーによって価格が異なることがあります。
パスツールピペット選びに困ったら、分析計測ジャーナルにご相談ください。必要であれば、少量のサンプル品の提供も可能です。
ライター:バッハ
大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。
さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。
幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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