「そろそろ大学の修士論文に本腰入れる時期だな~
なんとなく不安だけど、実際のところどうなんだろう」
大学院の卒業に必須の修士論文(修論)。
どんなに大学院生活が充実していても、修論を提出できなければ、卒業することはできません。そして卒業できなければ、社会人として新たな一歩を踏み出すこともできないでしょう。
大学院生はそんな不安から、夏~秋は卒論のことが少しずつ気になりはじめ、ソワソワしだす頃かと思います。
特に理系の学生や、学生を監督する教官の方々は、修論に向けた実験計画や検証、実際の論文の執筆など、やることが山積みでため息をついていることでしょう。
ですが、なんとなく不安はあるものの、「まだ時間はある」と、色んなことを先延ばしにしていませんか?
そんな風に先延ばしをしていても、不安は消えません。
そもそも不安なのは
「修論完成までのタイムスケジュールがぼんやりしている」
「修論を落とさないために気を付けるべきことがわからない」
そんなところだと思います。
こちらの記事では、理系の大学院生に向けて、
✅最後ギリギリで慌てないために、修論についてやるべき事前準備
について、お話ししていきたいと思います。
■必要なのは余裕のあるタイムスケジュール
文系と違って、理系の大学院生がしなければいけないのが「実験」です。
ですので、この「実験」を軸に、修論提出までのタイムスケジュールを組んでいかなければなりません。
しかし実験にはハプニングがつきもの。
想定していない事態にかかる時間を考えていないと、
「タイムスケジュールが狂ってしまった!提出が間に合わないかも!?」
なんてことになりかねません。
つまり必要なのは
「スケジュールを逆算して、余裕をもって事前準備をしておくこと」
です。
それには何が必要なのでしょうか?まずは一般的な理系の大学院生の、修論提出までのスケジュールを見ていきましょう。
■理系の大学院生の一般的な修論提出までの流れ
まず一般的な理系の大学院生の、修論提出までのスケジュールは下記の通りです。
(注:京都大学大学院のヒアリング結果です。各大学によって差はあります)
夏から秋にかけてテーマを決め、提出までの計画を立て、事前準備を行います。その後、実際に実験に取りかかり、「実験」と「検証」を繰り返し、論文執筆して提出する…といった流れです。
ただし実験は、事前に計画をしっかり立てていても、仮説通りにうまくいくとは限りません。思った通りの結果が出なかったり、検証に時間がかかったりは日常茶飯事です。そこに加え、途中段階で、第三者の意見(先輩・教官等)を聞くような時間も設ける必要があります。
■計画倒れする学生がやりがちな失敗4つ
計画がうまくいかず、どんどん後ろ倒れになり大慌て…
そんな学生がやりがちな失敗が下記の4つです。
①実験に必要な部品の欠品
実験に使う部品は、きちんとストックされていますか?
例えばクロマト装置でよく使う「カラム」という部品ですが、海外メーカーのものが多く、取り寄せに1ヶ月以上かかるものもあります。
「明日からの実験に使いたい!」と思ってから発注しているようでは、実験に使えるのは1ヶ月以上先…なんていうことになりかねません。
実際、計測機器メーカーや理化学機器販売店から、
「『明日にカラムが欲しい』と注文が入ったが、もちろん納期がかかるのでお断りした。その学生は実験計画の変更を余儀なくされて、冷や汗をかきながら実験計画を立て直したものの間に合わず、修論を提出できず留年してしまったようだ。」
そんな話しを聞くことがあります。
他には「部品の価格を把握していなかったために予算が足りず、部品を購入できなかった」といったパターンもあります。
「1年間に使える部品の予算は決まっているけど、実験に使いたいと思っていた部品が思いのほか高くて買えない!どうしよう!」
そんな風に困っているのも、よく見る光景です。
②装置がうまく動かない
いざ装置を使ってみたら「メンテナンスをおこなっていなかったのでうまく動かなかった」なんてこともあります。
そこでよくあるのが、
「今すぐ装置を動かしたいので至急メンテナンスをしてください!」
と、装置のメンテナンス会社に焦って連絡を入れてみたものの
「メンテナンスには作業員の予定調整が必要なので、すぐには無理です」
と言われてしまう場合です。
また、メンテナンス費用も決して安くはないので、そのあたりも早めに把握しておくべきでしょう。
普段から定期的にメンテナンスをしていたり、日常的に稼働しているような装置ならすぐに使えますが、「そういえばあの装置、半年ぶりに使うな…」といった装置は要注意です。装置がなければ実験はできません。
③機械の取り合い
「実験したい学生たちで装置が混みあっていて、使いたいときに使えない」といったこともあります。特に卒論の時期は、いつもより装置を使いたい学生で混みあうことでしょう。
全員が卒論でピリピリしている雰囲気の中、こういったことが続くと、装置を取り合って余計なイライラを抱え込むことにもなりかねません。
④第三者の意見(先輩・教官等)を聞く時間がない
意見を聞きたい相手に突然、「ちょっと今よろしいですか」と聞くのは失礼にあたるときもあります。下手すれば「こっちの都合を考えてないやつだな…」と思われるかもしれません。
ですので、実験室の先輩や教官の意見を聞きたい場合、相手の予定を事前に聞く必要があります。ですが、計画をタイトなものにしすぎると、「今すぐ意見を聞きたいけど、○○さんの予定が空いてない…」なんていうことになりかねません。
…といったように、
①~④のような想定外のことが起こると、予定していた実験がストップしてしまうことは想像できるかと思います。
■計画倒れしないために事前にやるべきこと4つ
では、どういったことを事前に準備するべきなのでしょうか。ポイントは4つです。
①実験に必要な部品の確認・補充
実験をはじめる段階ではなく、まずは実験計画を立てた段階で、自分に必要な部品の納期を確認しましょう。部品の納期によって、実験計画も大幅に変わってきます。
また、納期だけでなく、価格を事前に知っておくことも大切です。「実験に必要な部品が予算内でそろえられるか」も確認しておく必要があるでしょう。
②装置が動くかあらかじめチェックしておく
すぐに実験をおこなえるかの事前チェックをしておきましょう。大幅に時間が取られるかもしれないメンテナンスや修理は、早めにしておくべきでしょう。
③学生同士で情報共有し、サンプリングスケジュールを設定する
使いたい装置のバッティングが起こらないように、学生同士で共有しておくとよいでしょう。Googleカレンダーなど、世の中にある「予定共有ツール」をうまく使って、お互いの予定を把握しておくとストレスなく実験が進められます。
【Googleカレンダー】
https://calendar.google.com/calendar/u/0/r?pli=1
【Googleカレンダースタートガイド】
https://support.google.com/calendar/answer/2465776?co=GENIE.Platform%3DDesktop&hl=ja
また、オートサンプラーのように「サンプリングスケジュールが設定できる」ような装置があれば、スムーズに実験を進めていくことができます。
(参考:株式会社島津製作所 オートサンプラーAOC-20シリーズ、オートサンプラーSIL20A-20AC)
分析の際、試料を手動で注入するマニュアルインジェクタというものがありますが、これを自動化したもの(=自動試料導入装置)がオートサンプラーです。
オートサンプラーがあれば「Aさんは14時から16時、Bさんは16時から18時にスケジュール設定」といったことが可能です。また、夜間など実験室に不在の場合でも、スケジュールを設定してサンプリング・分析まで完了させることができます。
ですので、お互いのスケジュールをきちんと共有しあい、設定をして分析すれば、全員がやきもきせず、他のタスクを進めながらスムーズに実験を進めていくことができます。
④第三者(先輩・教官等)の予定は早めにおさえておく
少し先の予定を提示して、先輩や教官に「〇日にいったん中間報告をしたいのですが…」「〇日に少しご意見おうかがいしたいんですが…」など、余裕をもって予定を聞きましょう。日程を押さえることで、「〇日までにここまで進めなければ」と自分にプレッシャーをかけることもできます。
■最後に
大学院生活で研究を頑張ったのであれば、修論を落として卒業できないなんてことは避けたいですよね。
でも修論完成までの道のりを考えると、「ちゃんと提出して卒業できるのだろうか…」と不安になってしまいます。
ですが、今回の記事でお伝えした通り、事前準備をしっかりしておけば、不安は少しずつ減らしていくことができます。
✅修論のタイムスケジュールをきちんと把握する
✅スケジュールから逆算して、部品の補充やメンテナンスを事前に行っておく
✅余裕をもって第三者の意見を聞いて、内容を改善する
✅学生同士でスケジュールを共有して、スムーズに実験が進むようにする
繰り返しになりますが、このあたりのチェックは必須でしょう。
特にこの中でも
✅スケジュールから逆算して、部品の補充やメンテナンスを事前に行っておく
こちらについては、ご自身で解決できる問題ではありませんので、不安なことがあれば、一度お気軽にお問い合わせ下さい。
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