マイクロピペットは、生化学実験を実施する際に必須のアイテムです。マイクロピペットは容量によって機種を変えなければならないので、複数本を準備し総額で10万円を超えることもあります。そのため、できるだけコスパのいいマイクロピペットを探したいですよね。また多くの研究室で使われているメーカーなら、実績があり安心できることもあります。
そこでこの記事では、マイクロピペットのおすすめメーカーを7社ご紹介します。さらに各社の主力製品を例に挙げて、価格も比較するのでメーカー選びの参考にしてみてください。
また分析計測ジャーナルでは、マイクロピペットのメーカーに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
マイクロピペットのおすすめメーカー7選
マイクロピペットはさまざまなメーカーから販売されています。今回はおすすめの7社をご紹介します。各メーカー特色があるので、目的に応じたメーカーを選びましょう。
eppendorf(エッペンドルフ)
エッペンドルフはドイツの科学機器メーカーです。マイクロピペットは手動・電動・シングルチャンネル・マルチチャンネルなど、幅広いラインナップがあります。中でもEppendorf Research plusは、世界で広く使われているピペットの1つです。超軽量なので長い時間使っても疲れにくく、耐久性も高いのが特徴です。
参考:eppendorf カタログ
GILSON(ギルソン)
ギルソンのマイクロピペットは、ピペットマンという商品名のものが主力です。多くの研究室で長年愛用されているため、マイクロピペットのことを通称としてピペットマンと呼ぶ研究者もいます。高い精度の保障が必要なら、校正証明書つきのピペットマンもあります。高い品質と長年の信頼があるギルソンは、マイクロピペットのおすすめメーカーの1つです。
参考:エムエス機器㈱
Thermo Fisher(サーモフィッシャー)
サーモフィッシャーのマイクロピペットは、Finnpipette(フィンピペット)という商品名のものが人気です。Finnpipetteはとても軽く使いやすいです。さらにフィンガーレストが回転するので、左利きの方も違和感なく使えます。
(株)エー・アンド・デイ(A&D)
A&Dは日本の計測機器メーカーです。マイクロピペットは電動のものが販売されています。電動のマイクロピペットはボタン1つで吸引排出をしてくれるので、経験が浅くても精度よく使えます。一般的に電動のマイクロピペットは手動のものに比べて2倍ほど価格が上がりますが、A&Dの電動マイクロピペットMPAシリーズは、他メーカーの手動のものと大差なく購入しやすい価格です。
参考:A&D 電動マイクロピペット
㈱ニチリョー
ニチリョーのマイクロピペットは、パステルカラーで実験台が華やかになるデザインが特徴です。かわいいデザインですが精度は世界最高水準で、価格は低めなのでコスパがとてもいいです。Nichipet® Airはオートクレーブも対応しているので、バイオハザード対策もばっちりできます。
SARTORIUS(ザルトリウス)
ザルトリウスは天秤が有名ですが、マイクロピペットも販売されています。人間工学に基づいて設計されたマイクロピペットは、楽な姿勢で使えるので長時間の実験でも疲れにくいです。スタイリッシュなデザインのマイクロピペットで、雑然としやすい実験台をすっきり見せてくれますよ。
参考:SARTORIUS
㈱三商
㈱三商のマイクロピペットは他メーカーに比べて価格が安いので、学生実験用に大量購入する際におすすめです。価格は安いですが日本製で容量テスト結果がついているので、信頼できます。とにかく安いマイクロピペットを探しているなら、三商のマイクロピペットはいかがでしょうか。
参考:㈱三商 商品詳細
マイクロピペットの価格比較
各社のマイクロピペットの価格をインターネットより調査し、下の表にまとめました。今回は手動の容量可変式1000μLを一例とします。㈱エー・アンド・デイのみ手動の製品がないため電動1200μLです。各マイクロピペットの価格から、メーカー選びの参考にしてみてください。(価格は変動する可能性があります。詳しい価格は、販売店にお問い合わせください。)
マイクロピペットの精度は?各メーカー主力製品比較
メーカー | 商品名 | 価格 | 参考URL |
eppendorf | Eppendorf Research® plus | 40,200円 | エッペンドルフ カタログ |
Gilson | P1000 | 34,000円 | エムエス機器 ピペットマンP |
Gilson | P1000(校正証明付) | 39,300円 | エムエス機器 ピペットマンP |
Thermo Fisher | Finnpipette F1 | 38,000円 | ㈱ケニス カタログ |
(株)エー・アンド・デイ(A&D) | MPA-1200(電動) | 42,000円 | A&D 商品・サービス |
㈱ニチリョー | Nichipet Air | 33,000円 | ㈱ニチリョー カタログ |
SARTORIUS | Mline | 34,200円 | ㈱アズワン AXEL |
㈱三商 | 三商マイクロピペット SP-1000N | 13,200円 | ㈱三商 商品検索 |
マイクロピペットの精度はIOS8655に従って実施されており、各社規格を決めています。それぞれのマイクロピペットに適合したチップを使い、蒸留水を量り取った際の系統誤差(正確度)およびランダム誤差(精密度)は、以下の表のとおりです。
メーカー | 容量レンジ | 検定容量 | 系統誤差 | ランダム誤差 | 出典URL |
ISO8655(参考) | 100-1000μL | 1000μL | ±8.00μL、±0.80% | 3.00μL、0.30% | Thermo Fisher |
Gilson | 100-1000μL | 1000μL | ±8.00μL | ≦1.5μL | Gilson |
eppendorf | 100-1000μL | 1000μL | ±6.00μL、±0.60% | ±2.0μL、±0.2% | eppendorf |
ニチリョー | 100-1000μL | 1000μL | ±0.6% | ≦0.2μL | ニチリョー |
SARTORIUS | 100-1000μL | 1000μL | ±7.0μL、±0.7% | 2.0μL、0.2% | SARTORIUS |
系統誤差とは測定容量の差で、ランダム誤差は平均分注量前後の分注量分布です。各社ともIOS8655よりも厳しい規格を自社で設定し、規格を満たした製品を出荷しています。どのメーカーも精度に大きな差はなく、どのメーカーも安心できます。マイクロピペット個別の校正結果は、購入時に同封されていることもあるので確認してみてください。
マイクロピペットの正しい使い方と注意点
マイクロピペットは初心者でもなんとなく使えてしまいますが、正しい使い方を知らないと正確な容量を量り取れません。また注意しなければならない点もあり、守らないとマイクロピペットが破損してしまう可能性もあります。
そのためマイクロピペットの正しい使い方と注意点について、ポイントを絞ってお伝えします。詳しい使い方と注意点を確認したい場合は、以下のページも参考にしてみてください。
マイクロピペットの正しい使い方
- マイクロピペットの使い方は以下の6つのステップです。
- マイクロピペットの選択
- 容量の設定
- チップの装着
- 液体の吸い込み
- 液体の排出
- チップの取り外し
使い方における重要なポイントは次の3点です。
- 容量設定は大きな値から小さな値へ
- マイクロピペットのプッシュボタンは2段階式
- チップの付け外しは丁寧に
マイクロピペットの注意点
マイクロピペットを使うときは、以下の5点に注意して使用しましょう。注意点を守りマイクロピペットを大切に使い続けてくださいね。
- チップの先は液体に入れすぎない
- プッシュボタンはゆっくり上げ下げ
- 使用中はマイクロピペットを倒さない
- しばらく使わない場合は目盛りを最大値に
- 腐食性のある液体は注意
まとめ
マイクロピペットのおすすめメーカーを7社紹介しました。
- eppendorf(エッペンドルフ)
- Gilson(ギルソン)
- Thermo Fisher(サーモフィッシャー)
- (株)エー・アンド・デイ(A&D)
- ㈱ニチリョー
- SARTORIUS(ザルトリウス)
- ㈱三商
世界的に人気のあるマイクロピペットメーカーは、エッペンドルフ・ギルソン・サーモフィッシャーです。日本企業もコスパのいいマイクロピペットを販売しているので検討してみてください。各マイクロピペットの精度は大きな差はなく、各社ともISO8655の規格よりも厳しい条件を設定しクリアしたものだけが出荷されているので、安心して使えます。
分析計測ジャーナルでは、マイクロピペットメーカー選びのご相談を承っております。またデモ機の貸し出しサービスなども、メーカーによっては可能です。(お受けできない製品もあります。ご了承ください)お気軽にお問い合わせください。
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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