粘度計の購入を検討していて、「粘度計のおすすめを知りたい」、「種類が多くてわからない」、「価格も調べないと予算が取れない」というお悩みはありませんか?この記事では分析計測ジャーナルが忙しいあなたに変わって、おすすめの粘度計と価格をリサーチしたので、まとめてご紹介します。粘度計選びと予算申請の参考にしてみてください。
さらに粘度計のタイプはたくさんあり、選び方がわからないこともありますよね?今回は図解も使って原理を詳しく紹介するので、粘度って何かわからないという場合でも適切な粘度計を選べますよ。
粘度計選びに困ったら、分析計測ジャーナルにご相談いただくことも可能です。
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粘度とは?
粘度とは、物質の粘り度合いを表す指標で、「液体の流れにくさ」を数値化したものになります。粘度の単位は、Pa・s(パスカル秒)やcP(センチポイズ)が使われ、1cP=1mPa・sです。水の粘度は20℃で1cPです。どろっとしたものは粘度の数値が高く、サラサラしたものは粘度の数値は下がります。
粘度の詳細については、以下の記事で詳しく紹介していますので参考にしてみてください。
参考記事:粘度測定の基礎知識|測定装置の特徴とおすすめメーカー3選
粘度計のおすすめメーカー5選!
世界の粘度計メーカーの中から、おすすめメーカーを5社紹介します。
- Brookfield (ブルックフィールド)
- Anton Paar (アントンパール)
- Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャーサイエンティフィック)
- TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)
- A&D Company, Limited (エー・アンド・デイ)
信頼性と精度を重視するならBrookfieldやAnton Paar、先進的なレオロジー解析を求めるならTA Instruments、コストパフォーマンスを求めるならA&D Companyなど、用途に応じて選んでみましょう。各社の特徴を詳しくお伝えします。
Brookfield (ブルックフィールド)
出典:Brookfield (ブルックフィールド)DV Plus粘度計
ブルックフィールドは、世界中で広く使用されている粘度計メーカーです。粘度計と言えばブルックフィールド!というくらい、有名で大きなシェアを持っています。回転粘度計のことをブルックフィールドと呼んでいる人もいたり、B型粘度計のBはブルックフィールドに由来していたりするほど。幅広い製品ラインナップで、低粘度から高粘度まで対応できる製品がありますよ。操作が簡単で、使いやすいのも人気の理由です。粘度計選びに迷ったら、まずはブルックフィールドを選ぶといいでしょう。
Anton Paar (アントンパール)
アントンパールの粘度計は、研究開発や品質管理など高精度な測定が求められる時に最適です。業界トップクラスの最新技術を取り入れた製品があり、粘度以外の物性も測定できる機器があります。回転粘度計だけでなく、落球式もアントンパールは取り扱っています。密度計、レオメーターも購入を検討しているなら、アントンパールはいかがでしょうか?
Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャーサイエンティフィック)
出典:Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャーサイエンティフィック)HAAKE Viscotester 3 回転式粘度計
サーモフィッシャーサイエンティフィックは分析機器の世界的大手メーカーで、あなたの研究室にも1つはサーモフィッシャー製の機器があるのではないでしょうか。粘度計は、簡単なものから高度なレオメーターまで、幅広い種類が揃っています。サポートも充実で、導入後にわからないことがあればメーカーに聞きやすいのも特徴です。
TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)
出典:TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)VIS413高温粘度計
ティーエー・インスツルメンツの粘度計(レオメーター)は高度な粘度測定を求めるならピッタリです。研究開発での導入事例が多くみられます。低粘度から高粘度まで1台で全て測定できるので、さまざまな物体に使える装置です。
A&D Company, Limited (エー・アンド・デイ)
出典:A&D Company, Limited (エー・アンド・デイ)音叉振動式粘度計 SV-Aシリーズ
エー・アンド・デイの粘度計は、高品質なのに手頃な価格でコスパがいいのが特徴です。簡単で使いやすく、はじめて粘度計に触れる方でも簡単に測定できます。産業に対応可能な製品ラインも揃っているので、工場で初めての粘度計購入にもおすすめのメーカーです。
おすすめの粘度計と価格
粘度計のおすすめをタイプ別に紹介します。今回紹介する粘度計のタイプは以下の4つです。
- 回転粘度計
- 細管粘度計
- 落球粘度計
- 振動粘度計
価格や特徴もわかりやすくお伝えするので、予算申請や購入の参考にしてみてください。
回転粘度計
回転粘度計のおすすめ商品と価格は以下の表の通りです。高度な測定ができるレオメーターは価格が高めですが、物質の特性を解明したい研究開発において最適です。物質の簡単な粘度を知りたい、品質管理で特定条件のみの粘度を測定したいなら、手頃な価格のB型粘度計はいかがでしょうか。
メーカー | 商品名 (商品名をクリックするとカタログにリンクします) | タイプ | 価格帯 | 特徴 |
ブルックフィールド | デジタル粘度計DV2T | B型粘度計 | 約100万万円〜200万円 | デジタルタッチスクリーン、高い精度、広範囲の測定 |
TAインスツルメンツ | ディスカバリーハイブリッドレオメーター | レオメーター | 約300万円〜700万円 | 高度な測定機能、柔軟性がある、使いやすいインターフェース |
アントンパール | MCR72、MCR92 | レオメーター | MCR72モデル: 約200万円〜400万円 MCR92モデル: 約300万円〜600万円 | 直感的なソフトウェア、強力なモーター、精密な温度制御 |
サーモフィッシャー | HAAKE粘度計シリーズ | B型・E型・落球型 | 約50万円〜300万円 | 多用途対応、コンパクトデザイン、ソフトウェア互換性 |
回転粘度計のタイプには、大きく分けて以下の3つがあります。
- B型粘度計:試料にスピンドルを浸して粘度を測定する。粘度測定に特化しており、研究所から工場まで幅広く使われている。試料量が必要。
- E型粘度計:コーンプレートとも呼ばれ、平板とコーンプレート間のわずかな隙間に試料を置いて測定する。試料量が少量でも測定可能。
- レオメーター:粘度測定だけでなく、物質の流動特性や弾性特性を測定できる。精密な温度制御もできて、温度依存性の解析に優れる。
各粘度計の原理については、後ほど詳しく解説します。
細管粘度計
細管粘度計は、試料をガラスでできた粘度計に入れて、ある点からある点まで液体が流れる時間を測定し粘度を算出するものです。簡易的に粘度を測定したい場合や、低コストで粘度測定したいなら、細管粘度計が最適ですよ。おすすめ商品を以下の表で紹介します。
メーカー | 商品名(商品名をクリックするとカタログにリンクします) | 価格帯 |
CANNON | CANNON-FENSKE ルーチン粘度計 | 42,400円〜 |
CANNON | CANNON-FENSKE 不透明粘度計(逆流式) | 52,800円〜 |
柴田科学 | ウベローデ粘度計 | 55,000円 |
柴田科学 | オストワルド粘度計 | 12,000円 |
細管粘度計は種類が多いですが、JISで認められているものや、一般的に使われているのは次の4タイプです。
- キャノン-フェンスケ粘度計
- キャノン-フェンスケ不透明液用粘度計
- ウベローデ粘度計
- オストワルド粘度計
落球粘度計
落球粘度計は液体の中で球が自由落下する速度を測定し、粘度を求める粘度計です。ストップウォッチを使って目視にて球が通過する時間を求めるものと、装置が自動で時間を測定してくれるものがあります。
メーカー | 商品名 (商品名をクリックするとカタログにリンクします) | 価格帯 | 特徴 | 用途 |
上島製作所 | へプラー粘度計VR-2110 | 不明 | 高精度、温度制御が容易、DINおよびISO規格準拠 | 透明な液体、微細な懸濁液 |
サーモフィッシャー | HAAKE™ C 型落球式粘度計 | 不明 | 精密温度制御、ユーザーフレンドリーデザイン、ISOおよびDIN準拠 | 産業用途、研究用途 |
アントンパール | Lovis 2000 M/ME | 239万8千円〜 | 最少100μLの少量サンプルで測定可能、局方収載、オートサンプラー | 製薬、化学 |
振動粘度計
振動粘度計は製造プロセス中の粘度モニタリングに使われることが多い装置です。ハンディタイプもあるので、持ち運びも容易で使いやすいものが揃っています。
メーカー | 商品名 (商品名をクリックするとカタログにリンクします) | 価格 | 特徴 |
エー・アンド・デイ | 音叉振動式粘度計 SVシリーズ | 266,200円〜 | 音叉振動式、低粘度から測定可能、粘度変化をリアルタイムに確認 |
セコニック | VMシリーズ | 480,480円 | 振動粘度計、約1mLの少量試料から測定可能、製造プロセス中の抜き取り検査に便利 |
エー・アンド・デイ | 音叉振動式粘度計 ハンディタイプ SV-Hシリーズ | 248,000円 | ハンディタイプの粘度計、長時間測定可能、試料量2mLから |
粘度計の原理
粘度計にはさまざまな種類があります。そのため装置や測定法が違えば、「同じ物質でも粘度が違う」「どれが本当の粘度なのかわからない」、なんてことも起こります。測定に使う機器の原理を理解しておくと、このようなトラブルを避けられますよ。さらに各方法のメリット・デメリットも紹介するので、粘度計選びの参考にもなります。
回転粘度計(B型粘度計)
B型回転粘度計は試料の中にローターを入れ、回転させるのに必要な力(回転トルク)を測定し、粘度を算出する原理です。図のようなアナログタイプのB型粘度計では、回転トルクによるスプリングのねじれ角を読み取り粘度に換算します。この方法は簡単で機器の価格も安いので、初めて粘度の測定に最適です。しかし高粘度のものは測定が困難なことがあります。また試料量がたくさん必要なので、貴重な試料の場合は向いていません。
回転粘度計(E型粘度計・コーンプレート)
E型回転粘度計は、平板とコーンプレートの間に試料を置いてコーンプレートを回転させて粘度を測定する方法です。回転させるのに必要なトルクを測定し、粘度を算出しています。E型回転粘度計は試料量が100μL〜と非常に少量から測定可能です。さらに高粘度のものでも測定できます。しかし測定機器の価格が高いのがデメリット。さらに試料の添加にバラツキがあると、測定結果に影響することもあります。
細管粘度計
画像引用:柴田科学株式会社 粘度計取扱説明書
細管粘度計はある点からある点までを試料が通過する速度をストップウォッチで測り、粘度を算出する方法です。大掛かりな装置が不要で、手軽に測定できるのが細管粘度計のメリットです。必要なものは、細管粘度計の他に水浴とストップウォッチだけ。測定も簡単です。上の図はウベローデ粘度計ですが、具体的な測定方法を以下に示します。
- ①L管より試料を入れ静置し、温度を一定にする
- ②M管を指で塞ぎながら、N管からシリンジなどを使い吸引し試料を上げる
- ③M管から指を離し、すぐにN管を指で塞ぐ
- ④毛細管の下まで試料が流れたら、N管の指を離して測定を開始する
細管粘度計は形の違う4つのタイプがあり、特徴などは以下の表の通りです。
粘度計の種類 | 用途 | 特徴 | 適用範囲 |
キャノン-フェンスケ粘度計 | 透明な液体の動粘度測定 | U字型ガラスキャピラリー、透明液体用、高精度、シンプル操作 | 石油製品、化学薬品、溶剤など |
キャノン-フェンスケ不透明液用粘度計 | 不透明な液体の動粘度測定 | 不透明液体用の特殊デザイン、高精度、シンプル操作 | 不透明な石油製品、化学薬品など |
ウベローデ粘度計 | 高精度な動粘度測定、特に低粘度液体に最適 | 液柱高さ一定設計、温度変化に対する安定性、高精度、やや複雑な操作 | 石油製品、溶剤、化学薬品など |
オストワルド粘度計 | 相対粘度や特定粘度の測定 | U字型キャピラリー、基準液との比較で粘度測定、高精度だが他タイプに比べやや劣ることも | 溶液の特性比較、教育現場、簡易実験 |
どの方法も、ガラス器具の形が違いますが原理と測定方法は同じです。
落球式粘度計
落球式粘度計は、重力で物質が落下する速度を測定し粘度を算出する方法です。装置がシンプルで操作が容易なので、誰でも測定できるのがこの方法の特徴です。しかし目視で落球速度を測定する機器は、透明試料しか測定できません。さらに高粘度なものは落球速度が遅いので、測定に向いていないこともあります。
一方、自動タイプなら高粘度や不透明でも測定可能です。たとえばアントンパールのLovis 2000 M/MEは0.3〜10,000mPa・sまでの範囲測定できるようです。(参考:Lovis 2000 M/MEカタログ)
振動粘度計
振動粘度計は、液体中で振動する物体の減衰特性や共振特性を利用して液体の粘度を測定する方法です。上の図のように試料に振動子を入れ一定の振動数で振動させると、振動子と試料に粘性による摩擦が生じて振幅が変化します。振幅が一定になるように振動子を動かし、その駆動電力から粘度を求めるられるのです。(参考:粘度計SV-Aシリーズカタログ)
振動粘度計は低粘度から高粘度まで測定でき、リアルタイムでのモニタリングにも使えますよ。
まとめ
粘度計のおすすめメーカーは次の5社です。
- Brookfield (ブルックフィールド)
- Anton Paar (アントンパール)
- Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャーサイエンティフィック)
- TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)
- A&D Company, Limited (エー・アンド・デイ)
これらのメーカーは世界的に有名で、ユーザーも多く機種も幅広いラインナップであります。
粘度計の価格は、細管粘度計なら1万円台〜、高度な測定もできる粘度計なら500万円以上するものもあります。測定したい試料の特徴、予算に応じて最適なものを選んでくださいね。
分析計測ジャーナルでは粘度測定に関するご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。
\リクナビやマイナビにない非公開求人も!?PR/
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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