紫外可視分光光度計(UV-Vis)は、物質の特性や定量に使える便利な機器ですが種類が多くて、どれを選べばいいのか判断が難しいです。またすでに持っていて買い替えの時期なら、今と同じメーカーの最新機種でいいのか悩ましいですよね。そこでこの記事では、UV-Visのおすすめメーカーを6社紹介し、人気の機種もお伝えします。さらに価格も調査しましたので、予算申請に役立ちます。
分析計測ジャーナルでは、紫外可視分光光度計(UV-Vis)のご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
紫外可視分光光度計(UV-Vis)とは?
紫外可視分光光度計は、紫外(UV)領域と可視(Vis)領域の波長の吸収から、物質の特徴や濃度を求める機器です。UV-Visの原理と、実際に現場でどのように使われているかを紹介します。
紫外可視分光光度計(UV-Vis)の原理
紫外可視分光光度計(UV-Vis)は、物質が特定の波長を吸収する性質を応用して、化合物の特性や濃度を求める機器です。一般的に紫外可視分光光度計の波長は、200nm〜800nmまで測定可能で、以下の化合物で使えます。
- 有機化合物
- タンパク質や核酸
- 金属イオンや錯体
- 酸化還元試薬
機器は上記の図のような構造となっており、光源・スリット・分光器・検出器・演算部・表示部から成り立っているのが一般的です。光源にはタングステンランプ(350nm〜2600nm)と重水素ランプ(190nm〜400nm)が使われるものが多く、波長に応じて切り替えています。その他にキセノンランプやハロゲンランプなどが用いられることも。光源から発せられる光は、広い波長を含んだ光なので、分光器にて単一波長だけを取り出し、試料に当たるようにします。その後試料を通過した光を測定し、吸光度が求められるのです。
紫外可視分光光度計(UV-Vis)が活躍するとき
紫外可視分光光度計(UV-Vis)は、さまざまな工業分野で活用されています。具体的な活用例は以下。
- 飲料に含まれるビタミンやカフェインの濃度測定
- 医薬品に使われる物質の特性分析
- 河川から採取した水中の有害物質測定
- 石油製品の不純物や添加物の濃度測定
- 酵素活性を測定するために基質の消費や生成をモニタリング
UV-Visが多くの場面で活躍している理由は、非破壊的に手軽に測定できて、高感度かつ高精度な測定が可能だからです。水や溶媒に溶けている状態なら、試料をセルに入れるだけで測定できて簡単。希薄な溶液でも高精度に吸光度測定できるので、サンプル量が貴重な生体分子の測定にも向いていますよ。
紫外可視分光光度計(UV-Vis)のおすすめメーカーと機種
紫外可視分光光度計(UV-Vis)のおすすめメーカーを6社挙げ、人気機種を中心に特徴を紹介します。さらに参考価格もリサーチしましたので、予算の申請にお役立てください。
島津製作所
島津製作所の紫外可視分光光度計(UV-Vis)は、高品質なものが揃っています。世界的にも有名なメーカーで、業種問わず、さまざまな企業で導入実績あり。島津のUV-Visは直感的な操作と、多彩なアクセサリーが人気の理由です。初心者から専門家まで、幅広いユーザーに対応できる機種がありますよ。
「UV-1900i」
UV-1900iは使いやすさにこだわった、紫外可視分光光度計です。人間工学に基づいて見やすい角度で設置された操作パネルは、立っても座っても使いやすいです。画面も大画面でわかりやすいアイコン。コンパクトなデザインなので、狭い実験台の片隅にも置きやすいですよ。29,000nm/minの高速スキャンでスペクトル測定ができるので、測定時間の短縮化や早い反応速度のモニタリングにも使えます。
参考価格:196万円〜
「UV-2600i/2700i」
UV-2600i/2700iは豊富なアプリケーションで、フィルムやプラスチックなどの固体も測定できる機種です。またオートサンプラーに接続すれば、自動測定で最大120サンプルまで測定できます。5~10mm角の固体が固定できる微小試料ホルダや、粉末試料ホルダなどのアクセサリーも充実。積分球を装着すれば、1400nmまでの近赤外までの測定も可能です。幅広い用途や製品形態なら、UV-2600i/2700iを検討してみてください。
参考価格:273万円〜(UV-2600i)、314万円〜(UV-2700i)
「UV-3600i Plus」
UV-3600i Plusは185nm〜3,300nmまでの紫外・可視・近赤外波長において測定可能で、全波長領域において高感度です。検出器が3つもあるので、測定波長により最適な検出器が作動します。ガラスの透過率や反射率の測定、化粧品の紫外線遮蔽率などで活躍中。研究所などで用途が多岐に渡り、高感度で近赤外まで測定したいなら、UV-3600i Plusはいかがでしょうか。
参考価格:824万円〜
「SolidSpec-3700i/3700i DUV」
出典:島津製作所 SolidSpec-3700i/3700i DUVカタログ
大型試料の測定をしたいなら、SolidSpec-3700i/3700i DUVがあります。最大700mm×560mmの試料を水平置きでセットできますよ。測定波長は、SolidSpec-3700iが240〜2600nm、SolidSpec-3700 DUVが175〜2600nmです。通常のUV-Visのように液体試料はもちろん、固体と大型試料の測定ができます。
参考価格:930万円〜(SolidSpec-3700i)、1,260万円〜(SolidSpec-3700i DUV)
Agilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ)
アジレント・テクノロジーズの紫外可視分光光度計(UV-Vis)は、研究から産業分野まで広いジャンルで使われており、精度の高さが人気です。シンプルなエントリーモデルから高度な機能を持つハイエンドモデルまで、幅広いニーズに応える製品ラインアップを提供しています。
「Cary 60 UV-Vis 分光光度計」
出典:アジレント・テクノロジー Cary 60 UV-Vis 分光光度計
Agilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ)のCary 60 UV-Vis 分光光度計は、アジレントが展開しているUV-Visの中で最も人気のある機種です。手頃な価格と、使いやすさから、エントリーモデルとして多くの実験室に導入されています。
参考価格:税込 1,866,700円~
「Cary 3500 UV-Vis 分光光度計シリーズ」
出典:アジレント・テクノロジー Cary 3500 コンパクト UV-Vis 分光光度計
Cary 3500 UV-Vis 分光光度計シリーズは、新製品として登場したコンパクト、マルチセル、フレキシブルの3機種と、従来のタイプを合わせて4機種を展開しています。狭い実験台の一角に置くならコンパクト、最大8セルまで同時測定できるマルチセル、マイクロプレートやマルチセルでの測定を1台でできるフレキシブルなど、用途に合わせて選べますよ。
参考価格:お問い合わせください
「Cary 6000i UV-Vis-NIR 分光光度計」
出典:アジレント・テクノロジー Cary 6000i UV-Vis-NIR 分光光度計
Cary 6000i UV-Vis-NIR 分光光度計はUV、可視(Vis)、近赤外(NIR)領域の広範囲なスペクトルを、高い精度で測定できる高性能モデルです。独自のインディウムガリウムアルミニウムヒ素(InGaAs)検出器を採用しており、とくにNIR領域での感度と精度が優れています。
参考価格:お問い合わせください
PerkinElmer(パーキンエルマー)
PerkinElmer(パーキンエルマー)のラムダシリーズは、研究者やエンジニアに使いやすい機種です。各モデルの特徴を紹介します。
「ラムダ265/465/365+」
PerkinElmer(パーキンエルマー)のラムダ265は、簡易なモデルで学生実験用に人気があり、コンパクトで軽いので実験実のどこでも置きやすいです。ラムダ465は豊富なオプションで日常業務に使いやすく、ラムダ365+はダブルビーム光学系なので精度が高いUV-Visになっています。
参考価格:お問い合わせください
「ラムダ850+」
ラムダ850+は、高精度な測定が求められる場合に最適です。超低迷光(0.00002%T以下)と低ノイズ化で、希薄な試料も高感度で測れます。アクセサリーも豊富で、拡散反射・正反射・透過測定などが可能です。
参考価格:572万円〜
Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)のUV-Visは、低価格なものから特殊なものまでラインナップが充実しています。用途が明確なら、サーモフィッシャーサイエンティフィックは選びやすいです。
「SPECTRONIC 200可視分光光度計」
SPECTRONIC 200可視分光光度計は、学生実験に適したモデルです。大きな液晶画面は見やすく、感覚的に操作できるので、学生でも容易に扱えます。サンプルフィルダーは取り外して洗浄できるので、清潔に保てるのも学生実験に向いていますよ。
参考価格:43万円〜
「GENESYSシリーズ紫外可視分光光度計」
出典:GENESYS™ 40/50 可視/紫外可視分光光度計
GENESYSシリーズは、簡単な操作で初心者でも使いやすいのでルーチンワークに最適なモデルです。電源を入れてすぐに測定できるのも、毎日使うならありがたい機能ですね。光学系の違いやサンプルフォルダの違いなどでGENESYS50、150、180の3機種から選べます。
参考価格:106万円〜(GENESYS150)
「NanoDrop紫外可視分光光度計」
NanoDropは、1~2μLのサンプル量で測定ができる機器です。DNAやRNA、タンパク質の定量に最適で、貴重な試料も無駄になりません。他社にはない圧倒的な低サンプル量で、分子生物学などの分野で多く採用されています。
参考価格:税込 1,974,500円〜
日本分光
日本分光は初の国産分光光度計メーカーとして、性能の高いUV-Visを今でも出しています。歴史のある国産メーカーなので、品質も安心です。
「V-700 シリーズ」
V-700シリーズは全5種類あり、コンパクトなタイプや高感度なもの、近赤外域まで測定可能なものなどがあります。V-750はスタンダードなモデルで、シリーズの中で人気の機種。付属品を使えば、さまざまな試料に対応します。
参考価格:お問い合わせください
日立ハイテクサイエンス
日立ハイテクサイエンスのUV-VISは、学生実験用のものから特殊なものまで、製品数がとても多いです。日本メーカーなので、操作はわかりやすく故障したときも修理体制が整っていますよ。日立ハイテクサイエンスおすすめの3機種を紹介します。
「U-5100」
U-5100は簡易的に測定したい場合や、学生実験にぴったりのUV-Visです。長寿命のランプと測定時間の短時間化で、消費電力も少なくて済みます。低価格なので数台まとめて購入もしやすいですよ。
参考価格:90万円〜
「UH-5300」
UH-5300は、液体試料なら幅広い分野で使える機種です。操作にiPadが使えて、遠隔操作やデータ処理もできます。ベーシックなモデルとして、大学の研究室や企業で多く導入されていますよ。
参考価格180万円〜
「UH4150/UH4150AD」
ガラスやフィルムなど特殊な材料の測定には、UH4150/UH4150ADはいかがでしょうか。3300nmまでの近赤外も測定できます。複数の検知器で連続したスペクトルが正確に測定でき、高精度な結果が得られるのが特徴です。
参考価格:880万円〜
分光光度計の測定で注意する2つのポイント
分光光度計で測定するときは、セルと溶媒に注意しましょう。測定波長に影響のないセルと溶媒選びが、実験成功の鍵になりますよ。
測定試料に合ったセル選び
液体試料入れるセルは、入射・透過面が透明のものです。セルは測定波長が透過するものを選びましょう。よく使われている材質と使える波長については、以下のとおりです。
測定可能波長(nm) | 価格帯 | |
溶融石英 | 170〜2500 | 1本2〜6万円 |
石英 | 200〜2500 | 1本1万円〜 |
ガラス(ホウ酸Siガラス) | 320〜2000 | 1本3000円〜 |
プラスチック(ポリスチレン) | 400〜800 | 100本1000円〜 |
プラスチック(PMMA) | 250〜800 | 100本2000円〜 |
石英やガラスセルは、使用後に水や有機溶媒などで洗浄し、繰り返し使用します。プラスチックセルは、薬品耐性が低いのでサンプルを選びますが、使い捨てができるので、洗浄の手間がなく検体数が増えてもスムーズに測定できるのが特徴です。目的に合ったセルを選んでくださいね。
測定波長に吸収のない溶媒選び
サンプルを溶かす溶媒は、測定波長に吸収のないものを選びましょう。たとえば、アセトンは335nm以上、ベンゼンは290nm以上、メタノールは220nm以上の波長でなければ、測定の邪魔になってしまいます。190nm以下の低波長で使える溶媒には、蒸留水・アセトニトリル・シクロヘキサン・n-ヘキサンなどがありますよ。
まとめ
紫外可視分光光度計(UV-Vis)のおすすめメーカーは次の6社です。
- 島津製作所
- Agilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ)
- PerkinElmer(パーキンエルマー)
- Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
- 日本分光
- 日立ハイテクサイエンス
UV-Visの価格は100万円弱〜1000万円前後まで、さまざまです。そのため目的に合った機種を選びましょう。
分析計測ジャーナルでは、紫外可視分光光度計(UV-Vis)選びのお手伝いをいたします。お気軽にお問い合わせください。
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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