粘性のある物質について粘度だけでなくさらに詳しい物性を評価したいなら、レオメーターがおすすめです。レオメーターでは粘度以外の弾性や粘弾性などの指標も評価できます。
レオメーターは各社からさまざまな機種が販売されていますが、どのメーカーのどの機種が合っているのか悩ましいですよね。海外メーカーも多く、イマイチ特徴がわかりにくいです。そこでこの記事ではレオメーターの種類を解説し、おすすめメーカーを8社紹介します。複数シリーズを販売しているメーカーも機種ごとに特徴を比較していますので、目的に応じた機種選びに役立ちますよ。
分析計測ジャーナルでは、レオメーターの相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
レオメーターとは?
出展:Thermo Fisher Scientific HAAKE™ MARS™ iQ 回転式レオメーター
レオメーターは液体や柔らかい物質が、どのくらいの力でどのように動くかを評価する機械です。レオメーターの仕組みや種類について詳しく解説します。
レオメーターの原理とわかること
レオメーターは物質に力を加えて、その反応を測定する機器です。レオメーターでは物質を押したり引いたりして力を加えて動きを評価します。物質に加える力を「せん断」や「応力」と呼びます。レオメーターでわかる指標は以下です。
- 粘度:さらさら・ドロドロを判断する指標
- 弾性:形を元に戻そうとする力の指標
- 粘弾性:粘性と弾性が合わさった指標
レオメーターは、新製品の最適化・品質管理・新素材の開発などで活躍している機器です。食品、製薬、産業業界でレオメーターは欠かせません。
レオメーターの種類
レオメーターには3つの種類があります。それぞれの原理や特徴、用途を以下の表にまとめました。
種類 | 原理・特徴 | 対象製品・用途 |
回転式レオメーター | 回転するコーンやディスクを使って、物質にせん断応力を加える。回転速度やトルクから粘度やせん断応力を算出する。 | ケチャップ・塗料・クリームなど 日常製品の流動性解析 |
振動式レオメーター | 周期的な振動により応答力とひずみの関係を分析。物質が時間に応じてどのように変化するのかわかる。 | ゼリー・ゲル・樹脂など 時間・温度依存性の評価 |
キャピラリーレオメーター | 細い管から高圧で物質を押し出し、流れる速度を測定する。 | プラスチック・ゴム・接着剤など高粘度材料の加工性解析 |
レオメーター市場の多くを占めているのは、回転式レオメーターです。回転式レオメーターは低粘度から高粘度まで測定できる汎用性の高さを有しており、温度依存性や時間依存性(チキソトロピー性)も評価できます。
粘度計との違い
レオメーターに似た指標が測定できる機器に、「粘度計」があります。レオメーターと粘度計の違いは、レオメーターのほうがより高度な評価ができるという点。粘度計は一定の速度(せん断速度)でしか評価できないのに対して、レオメーターは回転数を自由に変化できます。これにより実際の使用状況や製造工程により近い環境で、粘弾性などの物性が評価できるのです。
粘度計の原理やおすすめ機器については、こちらの記事でも紹介しています。ブルックフィールド回転粘度計(B型粘度計)や細管粘度計などについて、原理を図解でわかりやすく説明しているので参考にしてください。
レオメーターのおすすめメーカー8選
レオメーターを製造販売しているメーカーは、主に海外メーカーです。レオメーターのおすすめメーカーを8社紹介し、各社の機種の特徴もお伝えします。レオメーター業界を網羅的に把握するのに役立ちますよ。
Anton Paar (アントンパール)
アントンパールはレオメーター業界を牽引するメーカーです。25年の歴史があり、世界で1万台以上も利用されています。レオメーターの種類が豊富で、用途に合った機種がアントンパールなら見つかるでしょう。
機種名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | タイプ | 特徴 | 参考価格 |
モジュラーコンパクトレオメーター: MCRシリーズ | 回転式・振動式 | コスパのいいモデルから最上位機種までシリーズ全6機種。1台で回転式と振動式の両方で評価可能。アントンパール社のレオメーターで人気No.1のシリーズ。 | お問い合わせください |
回転式レオメーター: RheolabQC | 回転式 | 品質管理用に使いやすい機種。回転粘度計としても利用可能。 | 178万円〜 |
動的粘弾性測定装置: SmartPave | 回転式・振動式 | アスファルトやビチューメンの評価に特化した機種。 | お問い合わせください |
高温粘度計・レオメーター: FRS | 回転式・振動式 | FRS1600:温度範囲300℃〜1530℃ FRS1800:温度範囲600℃〜1730℃ ガラスや金属などが融解したときのレオロジーを評価できる機器。安全対策にも力を入れている。 | お問い合わせください |
Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャー・サイエンティフィック)
サーモフィッシャー・サイエンティフィックのレオメーターは、HAAKE™シリーズで3シリーズあります。サーモフィッシャーでは誰でも使いやすいレオメーターを目指して開発されており、初心者から熟練者まで操作しやすいです。
機種名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | タイプ | 特徴 | 参考価格 |
HAAKE™ MARS™ iQ 回転式レオメーター | 回転式・振動式 | 日常の製品評価に適したモデル。直感的な操作で誰でも使いやすい。回転部の構造違いでボールベアリングとエアベアリングの2機種展開。 | お問い合わせください |
HAAKE™ Viscotester™ iQ レオメーター | 回転式 | 用途に応じて5つのタイプから選べる。簡単なセットアップと正確なギャップ調整で初心者でも使いやすい。 | お問い合わせください |
HAAKE™ MARS™ レオメーター | 回転式・振動式 | 高度な測定ができるハイエンドモデル。顕微観察およびFTIR・ラマン測定も。日本語対応。 | お問い合わせください |
TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)
ティーエー・インスツルメンツのレオメーターは3シリーズです。ルーチン測定に向いているものから高度な測定ができるものまでそろっています。幅広い測定モードが選べるのがティーエー・インスツルメンツのレオメーターの特徴です。
機種名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | タイプ | 特徴 | 参考価格 |
Discovery Core Rheometer | 回転式・振動式 | ルーチン試験向けレオメーター。タッチスクリーンが大きくカラーで、操作しやすい。ガイドに従って操作するだけなので、誰でも使える。 | お問い合わせください |
Discovery Hybrid Rheometer | 回転式・振動式 | 広い測定範囲と30種類以上のアクセサリーで、汎用性が高い。ラマンや顕微鏡も取り付け可能。LIMSとも接続可能で、品質管理や製造管理用にも最適。 | お問い合わせください |
ARES Rheometer | 回転式・振動式 | 研究開発向きの高性能機種。応力と歪が独立して測定できる世界唯一の技術を採用。引張りや3点曲げなどの動的機械測定も可能。 | お問い合わせください |
INSTRON(インストロン)
出展:INSTRON SR20 / SR50 キャピラリーレオメーター
インストロンのレオメーターはプラスチックの評価に最適なキャピラリーレオメーターです。最大荷重範囲の異なる2タイプ(CEAST SR20とCEAST SR50)を展開。プラスチックのプロセスシミュレーションによく用いられています。SR20 / SR50 キャピラリーレオメーターは作業者の安全対策もバッチリの装置です。
参考価格:お問い合わせください
㈱エー・アンド・デイ
出展:㈱エー・アンド・デイ 音叉振動式レオメーター RV-10000A(RHEO-VISCO)
㈱エー・アンド・デイのレオメーターは、音叉振動式のレオメーターです。液体試料中で振動子を振動させて、一定の振り幅に要する力から粘度を測定します。RV-10000AとRV-10000の2機種展開で、RV-10000Aのほうが振動幅を無段階で変化できる上位機種です。音叉振動は平板プレートに比べて、試料の組織破壊が少なく安定した評価が可能です。
参考価格:200万円〜(RV-10000A)、120万円〜(RV-10000)
NETZSCH Japan㈱
機種名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | タイプ | 特徴 | 参考価格 |
Kinexus シリーズ | 回転式・振動式 | 品質管理から研究開発まで広く使えるレオメーター。シリーズは3機種展開で、測定範囲によって選べる。測定治具の脱着が簡単。 | 530万円〜 |
Rosand シリーズ | キャピラリー | シリーズ4機種、卓上型と床置き型がある。ツインキャピラリーで、測定時間短縮と精度向上。 | お問い合わせください |
㈱島津製作所
㈱島津製作所のCFT-EX シリーズは、キャピラリーレオメーターです。ゴム・トナー・セラミックなどのプロセスシミュレーションに有用です。50年以上流動性素材の評価に携わっており、多くの日本企業に納入実績があります。測定可能範囲の異なる2機種展開です。日本企業のレオメーターなので、オペレーションがしやすくサポートも充実しています。
参考価格:566万円〜
京都電子工業㈱
京都電子工業㈱のEMS-1000Sは、レオメーターの機能も一部備えた粘度計です。評価できる指標は粘度だけでなく、せん断速度を変えて流動曲線も取得できます。EMS粘度計では試料の中に入れた鉄球を磁場により回転させ、鉄球に生じた応力から粘度を算出します。少量の試料量で測定できて、試験管内での評価なので揮発性のある試料にも使えるのが特徴です。評価したい指標が限られておりレオメーターでは測定しにくい試料なら、EMS-1000Sを検討してみてください。
参考価格:616万円〜
回転レオメーター測定で気をつけること
最近の回転式レオメーターは機器からの指示を受けながら操作できるものが多く、オペレーションが簡単になってきています。そのため初心者でも測定が容易なのが特徴です。しかしいくつかのポイントを守らないと、結果が安定しません。レオメーターでよく使われるコーンプレートによる測定において、注意ポイントは次の4点です。
- サンプル量は一定に
- サンプルは均一にする
- 気泡が含まれないようにする
- 清掃はしっかりと
サンプルの添加量はマイクロピペットなどを使って毎回一定量にしてください。添加量が少ないと適切な応力が得られず、多いと必要以上の力がかかってしまいます。気泡がある場合は潰しておきましょう。連続で測定する場合、前のサンプルがしっかり除去できる条件で清掃します。サンプルが残ってしまうと次の測定に影響するからです。これらの点に注意して作業すると、安定した結果が得られますよ。
まとめ
レオメーターは材料のレオロジー(物質の変形や流動)を評価するのに欠かせない機器です。レオメーターでは物質の粘度・弾性・粘弾性が評価できます。
レオメーターのおすすめメーカーは次の8社です。
- Anton Paar (アントンパール)
- Thermo Fisher Scientific (サーモフィッシャー・サイエンティフィック)
- TA Instruments (ティーエー・インスツルメンツ)
- INSTRON(インストロン)
- ㈱エー・アンド・デイ
- NETZSCH Japan㈱
- ㈱島津製作所
- 京都電子工業㈱
レオメーター選びに悩んだら、今回紹介した8社から探してみてください。また分析計測ジャーナルでは、レオメーター選びに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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