蛍光分光光度計(RF)は物質の発する蛍光を測定し、濃度測定や物質特有のスペクトルを得る機器です。新しい研究で蛍光測定をしたいけど、原理が難しくて、どのメーカーの機器がいいのかわからないですよね。またこれまで使っていた蛍光分光光度計の買い替え時期で、購入を検討することもあると思います。
蛍光分光光度計はさまざまなメーカーが販売していますが、各メーカーの機種を把握し価格を比較することは、多忙な研究者には手間です。そこで今回は蛍光分光光度計の原理と特徴をお伝えし、メーカー別に機器を紹介します。さらにスペックと価格を比較するので、あなたの研究に最適な蛍光分光光度計が見つかり、研究に活かせますよ。
蛍光分光光度計(RF)とは?
光が物質に当たると、光のエネルギーは物質に吸収されます。光を吸収した物質は安定な状態(基底状態)からエネルギーの高い状態(励起状態)になります。励起状態の物質は元の安定な基底状態に戻ろうとしますが、その際にエネルギーの一部を光として放出し、その光が蛍光やりん光として発光するのです。
物質には特有の蛍光強度とスペクトルがあります。蛍光分光光度計(RF)は、物質の発する蛍光をとらえて、濃度測定や溶媒などの周囲の性質測定が簡単にできます。蛍光分光光度計の特長は次の3つです。
- 高感度
- 高い選択性
- 周囲環境の測定
引用元:日本分光「分光蛍光光度計の基礎(2)分光蛍光光度計でわかること」
蛍光分光光度計の用途
蛍光分光光度計はバイオテクノロジー・工業材料・食品分野など、さまざまな分野での研究や品質管理に使われています。バイオテクノロジー分野においては、細胞内カルシウムイオンの測定に用いられます。材料分野では白色LEDや衣料の蛍光剤の評価ができ、食品分野では、産地や混合割合の測定に使用されています。このように蛍光分光光度計は、私たちの生活を安全で快適にするために、品質管理や研究の場で蛍光分光光度計は欠かせないものです。
分光光度計との違い
分光光度計(UV)と蛍光分光光度計は似ていますが、測定している光の種類が大きく違います。
分光光度計が用いているのは吸光光度法で、物質に光を当てどのくらい吸収されたかを測定しています。
参考:株式会社日立ハイテクサイエンス 分光蛍光光度計の基礎講座1.蛍光ってなに より
一方、蛍光分光光度計は物質の発する蛍光を測定します。
参考:株式会社日立ハイテクサイエンス 分光蛍光光度計の基礎講座1.蛍光ってなに より
蛍光分光光度計は吸光光度法の約1000倍の感度があると言われています。その理由は、吸光度光度法はブランクからの吸光度の差を測定しているのに対し、蛍光法は試料そのものの蛍光を測定するので、低濃度でも蛍光があるかないかが判別できるからです。
ただ蛍光分光光度計は汎用性が少なく、分光光度計に比べて価格が高いので、市場規模は分光光度計より小さいです。
蛍光分光光度計メーカー別紹介|各機器の特長と価格
蛍光分光光度計を製造する日本メーカー4社を、2020年度の販売台数トップから順に紹介します。
また各メーカーの機器の特長を詳しく解説し、価格もお伝えします。あなたの研究に合う蛍光分光光度計選びの参考にしてください。
「日本分光」販売台数1位(シェア49.1%)
日本分光は販売台数および金額ともにトップです。
用途に応じて選べる機器とアクセサリ類が豊富で、測定したい物質によって自由にカスタマイズできます。
■「FP-8050シリーズ」
FP-8050シリーズは3つの特長があり、用途に応じて5つのラインナップから選べます。
▼FP-8050シリーズの3つの特長
感度-Supreme-
クラス最高レベルの感度で、S/N=350(Peak to Peak)および1400(RMS)以上を達成。自動高次光カットフィルター搭載で、高次高の影響を排除したスペクトルが得られます。スペクトル補正も簡単で、補正するための治具も取り揃えています。
簡単-Smart-
インターフェースがわかりやすく、初心者でも感覚的に操作しやすいです。付属品を取り付けると自動で感知し、測定データにも記載されるので入力忘れを防げます。
管理-Support-
装置のベストコンディションを維持するサービスが充実しています。バリデーションプログラムや日常点検プログラムが内蔵されており、誰でもバリデーションができます。装置の使用記録も自動で管理するので、複数ユーザーのいる研究室でも利用状況の把握が容易です。FP-8050シリーズのために開発されたキセノンランプは、従来品と比べて3倍の長寿命で最大3000時間使用可能です。
▼FP-8050シリーズのラインナップ
機器名 | 用途 | 特長 |
FP-8250 | 液体測定専用のエントリーモデル | 1滴測定ユニット、水冷ペルチェセルホルダーなどのアタッチメント追加可能 |
FP-8350 | 付属品と組み合わせ可能なスタンダードモデル | ライフサイエンス分野の試料測定可能。マイクロプレートリーダーや自動偏光子ユニット取り付け可能 |
FP-8550 | シリーズ最高感度のフラッグシップモデル | あらゆる形状の試料測定可能。積分球や光ファイバーユニット対応 |
FP-8650 | 近赤外測定用高感度モデル | オプションで1010nmまでの波長を拡張 |
FP-8750 | 近赤外測定用広帯域モデル | 1700nmまでの感度を有する冷却型の光電子倍増管を採用 |
▼価格
215万円~(日本科学機器協会より)
「島津製作所」販売台数2位(シェア24.5%)
販売台数2位の島津製作所は高性能な蛍光分光光度計で、ソフトウエアの使いやすさも魅力です。実験室の他機器も島津製作所製なら、すぐに感覚的に使いこなせるでしょう。
■「RF-6000」
島津製作所の「RF-6000」は高感度で高速測定ができ、標準で900nmまでの蛍光測定が可能です。
▼RF-6000の5つの特長
高感度測定
光学系と信号処理系を従来品から再設計し、高い感度を実現しました。S/N=350(Peak to Peak)および1000(RMS)以上を達成。1×10-13mol/Lまのでのフルオレセインの蛍光スペクトルが測定できます。
高速測定
最速60,000nm/minの高速スキャンで、わずか1秒で全波長域のスペクトル測定や、3次元蛍光スペクトル測定が可能です。
安定した測定
従来機の4倍の高寿命キセノンランプを搭載。
最大2000時間の寿命があり、ランプ交換も簡単にできます。
長波長測定
900nmの長波長域の測定が可能で、これまで測定が難しかったクロロフィルやインドシアニングリーンの測定が容易にできます。
使いやすいソフトウェア
ソフトウェア「LabSolutions RF」は操作が簡単で、誰でも使いやすいです。バリデーション機能や消耗品や付属品の状態も、一目で確認できます。
▼価格
265万円~(日本科学機器協会より)
「日立ハイテクサイエンス」販売台数3位(シェア24.5%)
日立ハイテクサイエンスは条件に合わせて、3つのラインナップから蛍光分光光度計を選べます。島津製作所とシェア2位を争っており、根強い人気があります。
■「F-7000」
「F-7000」は日立ハイテクサイエンスの分光蛍光光度計のベーシックモデルで、コンパクトな本体です。従来品の2/3の体積で、狭い実験台にも置けます。クラス最高レベルの高感度で、超高速の波長スキャンが特長です。付属品オプションも充実しており、環境、工業材料、製薬、バイオなど幅広い分野の蛍光分析で活躍します。
▼価格
375万円~(日立ハイテクサイエンスより)
■「F-7100」
日立ハイテクサイエンスのロングセラーモデルであるF-7000の光学系を踏襲し、基本機能が向上させたモデルが、「F-7100」です。クラス最高レベルの高感度で、S/N=360(Peak to Peak)および1200(RMS)以上を達成しています。従来機のF-7000に比べて1.5倍も感度が上がりました。
またロングライフ光源で、光源寿命は2500時間あります。ランプの寿命が長いので、ランプ交換頻度が減りランニングコストを抑えられます。食品分野における蛍光指紋測定が得意で、根強い人気がある機種です。有機ELなどの工業分野、バイオ分野での細胞内カルシウム濃度測定など、広い分野で使えます。
▼価格
395万円~(日立ハイテクサイエンスより)
■「F-2700」
汎用タイプの「F-2700」は小型で、PCなしでパネルで簡単に操作ができます。日立の技術が詰め込まれた機器で、高性能で操作性がとてもいいです。日本工業製品規格(JIS K 0120)に準拠したバリデーション機能を内蔵しており、全自動でバリデーションを行いレポートも出力します。価格も最安値でPCも不要なので、手軽に蛍光分光測定を行いたい方におすすめです。
▼価格
190万円~(日立ハイテクサイエンスより)
「堀場製作所」販売台数4位(シェア2.5%)
堀場製作所の蛍光分光光度計は他のメーカーにはないオンリーワンの機能が備わっています。特定の物質に特化した機器もあり、産業分野で活躍します。
■Duetta
「Duetta」はコンパクトなサイズでスタイリッシュなデザインです。新たな蛍光指紋測定を提案しており、蛍光と吸光を同時に測定できます。1100nmまでのスペクトル測定が可能で、使いやすいタッチスクリーン対応ソフトウエアを採用しました。
▼価格
450万円~(和研薬株式会社より)
■Aqualog
「Aqualog」は水中溶存有機物(CDOM)の測定に特化した機器です。多波長励起-蛍光マトリックスを用いて水中のCDOMを測定します。CCD検出による高速スキャニングや内部吸収効果補正機能などがあります。水処理プラントでの水質調査や大学の地球物理学分野、公的研究期間の水分析に最適です。
▼価格
お問い合わせ下さい。
■Fluoro Max Plus
「Fluoro Max Plus」は高感度で実用性の高い蛍光分光光度計です。りん光測定モードも搭載し、1台で紫外~近赤外領域の広い範囲を測定できます。5×10-12mol/Lのクマリン153のスペクトル測定も容易で、超低濃度試料の蛍光スペクトルが取得できます。
▼価格
530万円~(和研薬株式会社より)
蛍光分光光度計 比較表
これまでに紹介した蛍光分光光度計のスペックと価格を比較表にまとめました。
メーカー | 機器名 | 検出感度 S/N | 波長 nm | ランプ寿命 (時間) | 本体サイズ (W×D ×H mm) | 重さ (kg) | 価格 (万円) |
日本分光 | FP-8550 | 350(PP) 1400(RMS) | 200~850 | (最大使用時間) 3000 | 570×545×270 | 39 | 215~ |
島津製作所 | RF-6000 | 350(PP) 1000(RMS) | ~900 | 2000 | 600×565×274 | 38 | 265~ |
日立ハイテクサイエンス | F-7000 F-7100 F-2700 | 250(PP) 800(RMS) 360(PP) 1200(RMS) 800(RMS) | 200~750 200~750 - | - 2500 - | 620×520×300 620×520×300 600×503×343 | 41 41 41 | 375~ 395~ 190~ |
堀場製作所 | Duetta Aqualog Fluoro Max Plus | - - 5000(FSD) | 250~1100 250~620 290~850 | - - - | 432×519×366 620×440×330 826×483×267 | 20 30 34 | 450~ - 530~ |
まとめ
蛍光分光光度の購入を検討している研究者に、蛍光分光光度計の原理をご紹介し、メーカー別に機種と価格をお伝えしました。
蛍光分光光度計は、物質に光を当てて発せられる蛍光を計測し、濃度や周囲環境を測定するものです。蛍光分光光度計は分光光度計(UV)の約1000倍の感度があり、低濃度の物質でも濃度測定が可能なことが特長です。
蛍光分光光度計を製造販売する日本メーカーは、日本分光・島津製作所・日立ハイテクサイエンス・堀場製作所の4社があります。機器選定に悩んだら、シェアトップの日本分光や島津製作所がおすすめです。そこまで感度は必要なく価格を抑えたいなら、日立ハイテクサイエンスのF-2700が最適です。蛍光以外に吸光度測定もしたいなら、1台2役の堀場製作所のDuettaがあります。
価格は日立ハイテクサイエンスのF-2700が最安で190万円~です。蛍光分光光度計の相場は、200~400万円程度です。また測定条件に応じてアクセサリ類を追加すると、さらに価格は上がります。
必要な性能と予算を加味して最適な機器を選び、研究成果を上げてくださいね。
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