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SEM画像がきれいにとれない!~暗い・歪む・ぼやける…そんな現象を回避するためのポイント教えます~

2022.06.09 (Thu)

  • SEM

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

 SEMとは走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)のことであり、電子線を試料にあてて、試料表面から出てくる電子を検出することで試料表面の観察を行う装置です。また、サンプルに電子を当てると元素特有の特性X線が生じますが、X線検出器で分析することで元素分析を行うことも可能です。光学顕微鏡と比較して非常に分解能が高いことから、材料、生物、医学などの様々な分野で利用されています。

SEMの原理

 SEMは真空中で電子線を照射する必要があり、電子線発生の仕組みとして代表的なものとして2種類あります。

熱電子銃型

 一つ目がタングステンフィラメントを使用した熱電子銃型です。加熱したタングステンに電圧をかけることで電子を放出する方式であり、比較的低い真空度(10-4Pa程度)で動作が可能であることから汎用SEMとして普及しております。

真空度が低いことから、比較的大きなサンプルの観察や、低真空モードでの観察まで幅広く使用されます。一方で、他のタイプのSEMと比較して高い分解能(すなわち細い電子線)を得るために必要な輝度とエネルギー幅で劣ります。

電界放出(Field Emission)電子銃

二つ目が電界放出(Field Emission)電子銃であり、このタイプのSEMはFe-SEMと呼ばれます。タングステン単結晶チップの先端に強電界をかけることで室温でも電子を放出することが可能です。高い分解能を得るために必要な輝度とエネルギー幅が非常に優れていることから、高分解能SEMとして用いられており、10万倍以上の観察も可能です。

その一方で、電子銃室は超高真空(10-8 Pa)が必要であり、常時電源を入れポンプで真空度を維持する必要があります。そのため停電用にバックアップ電源が必要であり、仮に電子銃室の真空度が低下してしまった場合、メーカーによる修理が必要となるため取り扱いに注意する必要があります。

 他にも六ホウ化ランタン熱電子銃やショットキー電子銃型があります。このように、SEMの種類によっても性能や特徴が異なってくるため、使うSEMの選定も重要となってきます。

SEM画像がうまく取れない原因

原因

 SEMを使っていると像が動いたり歪む、またはピントが合わないなどで画像をうまく取れないなどがよくあると思います。 原因の一つとしては電子線による帯電現象(チャージアップ)や試料ダメージ、コンタミネーションや外的要因があります。

帯電現象は導電性のない試料に電荷が蓄積する現象であり、像の歪みや輝線、明るさのむらの原因となります。帯電現象や試料ダメージは高加速電圧や高い照射電流条件で起こりやすいです。

コンタミネーションは試料周辺の炭化水素系のガス分子が電子線により試料表面に固着する現象であり、観察をしているとその部分が暗くなる現象です。これを抑制するためには導電性テープ等の使用量を少なくすることや、サンプルを真空加熱する、長時間同じ場所で観察を行わないなどに注意する必要があります。

このように適切なサンプル処理と観察条件にすることで抑制することがあります。次にピント合わせがうまくいかないことが要因としてあり、これは主に光軸調整が不十分であることが要因です。

光軸合わせはある程度の慣れが必要ですが、装置について正しく理解し正しい手順で調整を行えばきれいな画像を取ることができます。条件設定の方法や光軸調整の方法について次に述べます。

試料の準備

SEMうまくとる準備

 きれいなSEM画像を得るためには、正しい試料の準備が必要です。絶縁性のサンプルは帯電をおこしやすいので白金や金でコーティングする必要があります。

 また、熱によるダメージや水分の蒸発を抑制したいサンプルの場合、冷却可能なステージを使用することで観察できるようになります。また、大きめのサンプルの場合、観察面近くに導電性テープを張ることで導電経路を確保し、帯電を抑制することが可能です。

他にも生物試料については生物試料前処理法により生物試料の状態を保ったまま観察することが可能です。

条件設定

1. 加速電圧

加速電圧の選択は試料観察において非常に重要です。加速電圧が高いほど電子の波長は短くなるため、分解能が向上します。ただし、前述でも述べたように、高加速電圧では電子線照射による熱ダメージと帯電が起こりやすいです。

そのため、熱に弱い試料や帯電しやすい試料は低加速電圧で観察することが好ましいです。金属被着で帯電を防止することもできますが、金属被着をしたくない場合や含水試料を見たい場合には低真空状態でSEM観察を行う方法もあります。

 次に、表面の凹凸を見たい場合には高加速電圧は不向きです。加速電圧が大きくなるほど、試料表面だけでなくより深い位置においても二次電子が発生するため、材料の表面形状を観察することが難しくなります。

そのため、材料表面形状を見たいときには加速電圧を下げることが適切ですが、試料によっては表面の汚れ等が強調されてしまうこともあるため、試料に応じて適切な加速電圧を選択することが重要です。

 一般的には10kV前後あれば十分であり、凹凸を強調したいときや試料ダメージ、帯電を軽減したいときに加速電圧を下げるとよいです。

2. スポット強度

 スポット強度は電子線電流値を示すパラメータであり、コンデンサレンズ(集束レンズ)の励磁により制御します。スポット強度が低いと照射電流量が少なくなり分解能が向上する一方、S/N比が悪くなります。

このようにトレードオフの関係になるため、SEM画像を取る際はスポット強度を低めに設定することで分解能を上げ、EDXのようにある程度のS/N比が必要な場合ではスポット強度を大きくします。

 

SEM上手くとるコツ

3. 作動距離(WD:Working distance)

 作動距離は対物レンズと試料との距離を意味します。作動距離が短いほど開口数が大きくなり、分解能が高くなります。そのため、作動距離が短い方が基本的に解像度の高い画像が取れます。

 ただし、作動距離が小さいと開き角が大きくなり、焦点深度が小さくなります。焦点深度とはぼやけが十分に少ない像が得られる範囲であり、焦点深度が深いほど凹凸の大きいサンプルや奥行きのある画像を取ることができます。つまり、作動距離を小さくすれば分解能は高くなりますが、その分焦点深度が小さくなり奥行きのある撮影が難しくなります。また、作動距離が短いとサンプルとレンズがぶつかる可能性があるため、注意する必要があります。

4. 対物絞り

 対物絞りは電子線の開き角やプローブ電流を調整する役割があります。高い分解能を得るためには電子線径をより小さくする必要がありますが、SEMによって最適絞り径が異なるので使用している装置の特性を正しく把握する必要があります。また、焦点深度を大きくするには絞り径を小さくする必要がありますが、一方でS/N比をよくするには絞り径を大きくする必要があり、観察目的によって適宜最適な絞り径を選ぶ必要があります。

5. その他

 そのほかには対物絞り、鏡筒内の汚れによりうまく画像が取れないこともあります。きれいなSEM画像を得るためには定期的なメンテナンスで鏡筒内をきれいな状態に保つことも重要です。

SEMの観察手順

SEM手順

1. 電子ビームの光軸調整

 レンズの光軸と電子線を一致させる作業であり、SEMできれいな画像を得るために重要です。軸調整のモードにおいてSTIGMA/ALIGNMENTのXおよびYつまみをまわし、モニターに表示される円形のスポットが中心になるように調整します。機器によっては画像が最も明るく表示されるように調整するなど仕様が若干異なる場合があるため、各機器の説明書の指示に従って調整を行います。

2. 対物絞りの位置調整

 対物絞りの調整つまみは鏡筒に設置されており、ディスプレイに表示される画像を見ながら、X、Yつまみによって調整します。

3. 明るさ、コントラスト調整

 この後にフォーカス調整や非点収差の補正を行うのですが、そのためには画像の明るさ、コントラストを調整する必要があります。それぞれつまみで調整可能ですが、現在は自動調整も可能です。

4. フォーカス調整

 最初に観察したい対象を中心に置きます。次に、撮影したい倍率よりも高い倍率(2倍程度)に設定します。フォーカスを調整し、ピントが合うようにします。

5. スティグマアライメント調整(非点収差補正)

非点収差とはレンズのX軸とY軸を通った電子の焦点のずれにより生じるぼやけです。

非点収差のモードにした後、STIGMA/ALIGNMENTのXおよびYつまみを片方ずつ回し像の流れがなくなるシャープな像になるように調整します(像の流れが同心円状になります)。

自動で調整する機能がありますが、1万倍以上の高倍率で撮影をする場合では手動で補正することをお勧めします。

4と5の手順を繰り返し、最もシャープな画像が得られるところで撮影倍率に設定し、再度明るさ・コントラストを調整して撮影を行います。これらは画像を見ながら調整を行いますが、できるだけ画面から離れて全体を見るように行うとシャープな画像が識別しやすいと思います。加速電圧や試料が変わる場合は1から調整することが理想です。このように調整方法を紹介しましたが、機器により若干仕様が異なる場合があるので、各機器の説明書に従ってください。

その他注意点

 これまでの説明は基本的な二次電子像による観察の注意点です。一方で、観察のモードによって注意する点も異なってきます。例えば低真空モードでのSEM観察では真空度が低くなるほど電子の平均自由行程が短くなるため、作動距離は十分に短くすることが必須条件です。

また、EDX分析では検出器の位置関係で作動距離が決まっていたり、調べたい元素の特性X線の発生に必要な加速電圧以上に設定する必要があります。行う測定方法や試料に合わせて適切な分析条件を設定することが重要です。

まとめ

ここまで、SEMに関する原理やうまく取れない原因、上手にとるために注意することをまとめてきました。SEMはあらゆる分野に広く浸透している分析手法であり、研究者に限らず多くの理系大学の学生も研究室で触れる機会があると思います。SEMの画像をきれいに取れるようになれば、研究の質も大きく向上することになるでしょう。

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