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【2024年度版】ラマンのおすすめメーカー11選

2024.11.29 (Fri)

  • ラマン
  • ラマン分光計

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bunseki-keisoku

ラマンとはラマン散乱光から物質を評価する機器のことです。ラマンを使うと未知物質の化学構造や濃度がわかります。医薬品の原料受入試験において、各国局方にて全数検査が求められているためラマンを利用している企業も多くなりました。また新材料の研究においても、ラマンは欠かせない存在です。ラマンは製造プロセスに組み込んで、反応をモニタリングするのにも使われています。

この記事では、ラマンのおすすめメーカーを11社紹介し、各社の人気機種の特徴をまとめてお伝えします。価格も調査したので機器選びの参考にしてくださいね。

分析計測ジャーナルでは、ラマンに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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ラマン分光法とは?ラマンスペクトルからわかること

ラマン分光法の原理とラマンを使って得られる情報について、詳しく解説します。またラマンが利用されている事例についてもお伝えします。

ラマン分光法とは

ラマン分光法とは、物質に光を照射しその散乱光から物質を評価する方法です。

ラマン散乱光のイメージを上記図に示しました。励起光が分子に当たると、励起光とは異なる波長の光が出てきます。出てくる光は、ラマン散乱光とレイリー散乱光と呼ばれるものです。物質から出てきたラマン散乱光は、分子構造によって固有のエネルギーを持つため、分子状態の把握に使えるのです。

ラマン散乱光には、ストークス散乱とアンチストークス散乱の2種類あります。一般的にストークス散乱のほうが強いので、ラマンスペクトル測定ではストークス散乱を用います。ラマン散乱光と励起光のエネルギー差をプロットしたものが「ラマンスペクトル」と呼ばれるもので、単位は[cm-1]です。

ラマンを使ってわかること

ラマンを使うと、次のようなことが把握できます。

  • 分子構造情報
  • 物質の同定
  • 結晶構造の情報
  • 化学的環境の変化
  • 応力
  • 歪み
  • 定量分析
  • 反応速度定数の決定

スペクトル全体で物質の分子構造や結晶構造の情報が読み取れます。有機化合物のスペクトルデータベースを参照すれば、未知物質の同定も可能です。ラマンバンドの強度から定量や反応速度定数も求められます。

ラマンは非破壊で測定ができるので、さまざまな分野で利用されています。透明な容器であれば試料を容器に入れたまま測定でき、ガラス容器だけでなくビニール袋やプラスチック容器でも問題ありません。また機器の小型化も可能で、活躍の場は無限大です。

ラマンの仕組みとタイプ

ラマンの機器の仕組みについて解説し、種類についても紹介します。ラマンの基本的な構造を理解し、最適な機器選びに活かしてくださいね。

ラマンの仕組みと注意点

ラマンの構成は、励起光光源・集光光学系・分光器・検出器から成り立っています。

励起光光源にはレーザーが用いられるのが一般的です。試料にレーザーを照射するとレイリー散乱光とラマン散乱光が発生しますが、集光光学系にてラマン散乱光のみにします。分光器に送られたラマン散乱光は検出器で検出され、パソコンにてラマンシフト値として算出されます。

ラマン散乱光は非常に微弱な光です。そのため試料に不純物があれば測定が困難なことがあります。とくに液体試料の場合、浮遊物があれば適切なラマンシフトが得られません。浮遊物がある場合は、メンブレンフィルターを使ってろ過したものを測定しましょう。

ラマンのタイプ

ラマンには大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 卓上型:実験台に据え置きで使用
  • 携帯型:持ち運びが容易で片手でも持てるサイズ感
  • インライン型:製造ラインなどに組み込むタイプ

卓上型とは吸光度計やFTIRのように、実験台に置かれた機器に試料をセットし測定するものです。携帯型とはリモコンのような形状の装置を試料に向けて測定します。動かすのが難しい大型な試料の評価には携帯型が便利です。ラマンは製造ラインに組み込むことも可能で、インライン型はリアルタイムで反応をモニタリングしたり、終点を確認したりするのにも使えます。

励起波長について

励起光源のレーザー波長は、一般的に220〜1064nmのものがあります。短波長では散乱光のエネルギーが大きくなり、精度よく測定できるものの試料へのダメージが懸念されます。一方高波長では蛍光影響を軽減し試料ダメージは少ないですが、ラマン散乱光の強度が下がるデメリットも。そのため試料の特徴を把握した上で励起波長の選択が必要です。装置によっては2波長以上を選択できるタイプもありますよ。

ラマンおすすめメーカー11選

注意ポイント

ラマンを製造しているメーカーは国内外にたくさんあります。今回はラマンのおすすめメーカーを11社紹介し、各社の製品の特徴をお伝えします。また参考価格も調査しましたので、機種選定や予算申請の参考にしてみてください。

アントンパール

アントンパールは、密度測定機器や粘弾性測定機器の世界シェアが大きい会社です。ラマンは実験室で使いやすいタイプと、持ち運びできるタイプの2種類があります。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
Cora シリーズ(5X00、7X00)卓上型532nm
785nm
1064nm
機種によって異なる
Cora5X00シリーズは汎用性の高いラマンです。コンパクトなサイズで、バッテリーオプション追加で持ち運びも可能。
Cora7X00シリーズは高精度ラマン。
770万円〜
Cora 100携帯型785nm携帯型のラマンで重さは650g。防塵防水機能もあり耐久性抜群。日本語利用もオプションにて可能。454万円〜

㈱リガク

㈱リガクからは2シリーズ4機種のラマンが販売されています。リガクのラマンは全て携帯タイプです。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
Progeny携帯型1064nm米国薬局方に準拠したソフトウェアを搭載しているため、製薬会社での原料受入試験に最適。メーカーにて分析法バリデーションサービスもあり。550万円〜
CQL IDシリーズ携帯型1064nmエントリーモデルのNarc-ID、特殊物質に特化したGen-ID、最上位モデルのMax-IDの3機種。最大5成分の混合物を分析する。お問い合せください

日本分光㈱

光分析に強みがある日本分光㈱からは、タイプの異なるラマンが多く販売されています。種類が豊富なので、日本分光なら目的に応じたラマンが見つかりやすいでしょう。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
NRS-4500卓上型532nm
(標準レーザー)
試料室の扉が上に開くので省スペースに設置可能。オプションで8種類の波長から最大3種類選べる。お問い合わせください
NRS-5500/7500卓上型532nm
(標準レーザー)
高い精度と分解能を有したハイエンドモデル。2つの検出機と最大8種類のレーザー波長により幅広い物質の測定が可能。お問い合わせください
RMP-500 series多目的型532nm
785nm
1064nm
機種によって異なる
測定対象物に合わせて、顕微鏡・ファイバープローブ・生産ライン埋め込みなどカスタマイズできる。お問い合わせください
PR-1s/PR-1w携帯型785nm手のひらに収まるコンパクトサイズ。日本語ソフトウエアは直感的に使いやすく初心者にも最適。298万円〜

ブルカー

ブルカーでは多用途のラマンが販売されています。ブルカーが買収したTornade社の機種も紹介します。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
BRAVO携帯型785nmと853nm
デュアルレーザー
原料受入試験に特化したラマン。各国局方に対応。お問い合わせください
SuperFluxラマン分光計
(Tornade社)
インライン型785nm従来のプロセスラマンより高感度で高精度。高速測定も可能。お問い合わせください
HyperFluxPRO Plusラマン分光計
(Tornade社)
インライン型785nm低出力レーザーを使用しており安全性が高い。ポータブル設計で移動可能。お問い合わせください

メトラー・トレド

出展:メトラー・トレド ラマン分光法とインライン分析

メトラー・トレドのReactRaman 802Lは、化学反応をモニタリングするのに便利なインライン型ラマンです。ラボスケールから生産ラインスケールまで導入できます。持ち運びも可能なので、異なる場所での使用にも便利です。

励起波長:785nm
参考価格:お問い合わせください

アジレント・テクノロジー㈱

アジレント・テクノロジーのラマンは製薬会社向けのものが多いです。製剤の定量が短時間でできる機種もあります。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
Vaya携帯型830nm製薬の原材料受入れ試験用ラマン。原料が茶色の紙袋に入っていても測定可能。お問い合わせください
RapID携帯型
(キャスター移動)
830nm大型の容器や多層包装の原料も測定できる。原料受入用。お問い合わせください
TRS100卓上型830nm錠剤やカプセル剤の定量に最適なラマン。最大300サンプルが数分で測定できる。含量均一性試験に便利。お問い合わせください
Resolve携帯型830nm不透明な容器に入った未知物質の同定に最適な機種。危険物質の確認を安全にできる。お問い合わせください

サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱

サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱のラマンは、微小なものから大型なものまで観察できるラマンがあります。また使いやすい携帯型も販売されています。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
DXR3シリーズ卓上型455nm、532nm、633nm、785nmイメージング顕微ラマン、顕微レーザーラマン、Smartラマン、Flexラマンの4タイプ。メンテナンスが簡単でいつもベストコンディションで測定できる1341万円〜
TruScan™ RM 携帯型ラマン分析計携帯型785nm密閉されたパッケージでも内容物のラマンが取得できる。操作画面はカラーで大きいので、使いやすい。お問い合わせください

㈱相馬光学

㈱相馬光学は光分析技術に特化したメーカーです。分析機器やラインに組み込みできるラマンが販売されており、産業分野で需要があります。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
小型ラマン分光計卓上型
インライン型
532nmまたは785nmフローセルによる微量測定ができるので、HPLCに組み合わせ可能。オプション利用でインラインプロセスにも。お問い合わせください
ラマン分光計卓上型
インライン型
532nm、671nm、785nmのうち1波長選択最大6チャンネルで異なるラインを同時測定。分析機器やラインに組み込み用。お問い合わせください

メトローム

スイスに本社を置くメトロームは、電気化学分析・分光法・滴定などに特化した企業です。ラマンは用途に合わせた機器が多くそろっています。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
Mira P携帯型785nm原料試験の合否をその場で表示。たった数秒で試験完了。795万4000円〜
MISA 表面増強ラマン散乱分光計卓上型785nm食品の汚染物質検出に利用できるラマン。容易に持ち運びも可能。お問い合わせください
i-Raman シリーズ卓上型532nm、785nm、1064nmから選択品質管理や教育用に最適なベーシックモデルと、動的プロセスの監視に適した2シリーズ展開。お問い合わせください
NanoRam携帯型1064nm原材料受入試験用ラマン。励起波長1064nmでセルロースやポリソルベートなどを正確に認識。お問い合わせください
PTRamインライン型785nmプロセス開発用ラマン。ラボスケールからパイロットプラントまで利用可能。リアルタイムモニタリング。1390万4000円〜

レニショー

レニショーは工業用機器や医療機器などを製造しているメーカーです。ラマンは測定の目的に特化した製品が多数あります。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
in Viaラマンマイクロスコープ卓上型229〜1064nm微小な物質の観察に最適な顕微ラマン。高精度なラマンイメージを作成。エントリーモデルからハイエンドモデルまで3タイプ。お問い合わせください
RA802 製薬用分析装置卓上型785nm錠剤などの観察に最適な機種。高速イメージング機能により、短時間で測定が完了する。お問い合わせください
Virsa™ ファイバーラマン装置卓上型(ファイバープローブ付き)532nm、660nm、785nmから選択5mの光ファイバーケーブルを有しており、生産ラインのモニタリングや、持ち運びできない大きな試料の測定に便利。1200万円〜
RA816 生物学用分析装置卓上型785nm生物サンプル用のラマン。サンプルの前処理がほぼ不要で、スライドを挿入するだけでデータ取得まで完了する。お問い合わせください

㈱堀場製作所

㈱堀場製作所のラマンは、高度な解析ができる専門的な機種があります。最先端の研究用を探しているなら、堀場製作所のラマンを検討してみてください。

製品名
(製品名をクリックするとカタログにリンクします)
タイプ励起波長特徴参考価格
LabRAM Odyssey卓上型200〜2100nmメーカー最高ランクの顕微ラマン。超高速イメージング機能で、秒単位でラマンイメージを取得。4114万円〜
LabRAM Soleil卓上型532nm(標準)高機能なイメージングを短時間で取得。3Dラマンイメージも取得可能。お問い合わせください
MacroRAM™卓上型785nm品質管理や学校教育用に適したモデル。サンプルフォルダを替えると、液体や粉体などさまざまな状態の試料が測定できる。985万円〜
プロセスラマンシステムインライン型不明製造プロセスのモニタリング用ラマン。プローブを変えて、多様なラインに適応可。お問い合わせください

分析機器にラマンを組み合わせ!より高度な解析が可能に

ラマンはさまざまな分析機器に取り付けて、より詳しい評価が可能です。今まで見えていなかったことも、ラマンを使うと見えてくることがありますよ。ラマンを組み合わせて使える機器と、どのような評価ができるのか、詳しく紹介します。

赤外分光法+ラマン

出展:㈱島津製作所 AIRsight™

㈱島津製作所のAIRsight™は、赤外測定(FT-IR)とラマン測定が同時にできる機器です。両者の測定結果から異物などの未知物質の特定ができます。赤外顕微鏡では測定できない微小な試料も、AIRsight™なら評価可能です。この1台で有機・無機の情報が得られます。

参考価格:3210万円〜(別途FTRI本体が必要)

LC+ラマン

出展:㈱堀場製作所 LC-Raman System

HPLCでは全く同じ保持時間に2成分以上が混在してしまうことがあります。分離条件の最適化をしてもどうしても分離できないことがありますが、ラマンを組み合わせれば多成分が混在していても成分の同定が可能です。構造異性体や特異性の確認に、LC-Raman Systemは有用です。

参考価格:2750万円〜(別途LCが必要)

レオメーター+ラマン

出展:アントンパール MCR Evolution & Cora 5001

レオメーターとは物質の粘弾性を評価する機器です。レオメーターにラマンを組み合わせると、粘弾性の変化による分子構造の変化が読み取れます。-20℃〜300℃のレオロジーを確認しながらラマン測定ができ、プロセス評価などの研究に役立ちます。

参考価格:770万円〜(別途レオメーターが必要)

まとめ

ラマンのおすすめメーカーは、次の11社です。

  • アントンパール
  • ㈱リガク
  • 日本分光㈱
  • ブルカー
  • メトラー・トレド
  • アジレント・テクノロジー㈱
  • サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱
  • ㈱相馬光学
  • メトローム
  • レニショー
  • ㈱堀場製作所

これらのメーカーには、卓上型・携帯型・インライン型のラマンがそろっています。またラマンは別の分析機器に組み合わせて使用もでき、より詳細な評価が可能です。ラマンの購入に迷ったらこれらのメーカーを検討してみてください。

分析計測ジャーナルでは、ラマンに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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