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クリーンベンチの正しい使い方|無菌操作のポイントとは

2022.12.13 (Tue)

  • クリーンベンチ

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

研究

クリーンベンチは無菌操作が必要な、バイオ実験や微生物実験には欠かせない機器です。クリーンベンチ内では目に見えない細胞や菌などの微生物を扱うので、作業は正しくおこなわなければなりません。しかし無菌操作は手間が多いので難しく、少し間違えるだけでもコンタミネーション(菌の混入)を起こしてしまいます。

そこでこの記事では、製薬会社で無菌製剤の製造や実験にも関わったことのある筆者が、クリーンベンチの正しい使い方と無菌操作のポイントをご紹介します。さらにクリーンベンチの価格などもお伝えするので、参考にしてみてください。分析計測ジャーナルでは、クリーンベンチに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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クリーンベンチの正しい使い方

クリーンベンチを使うときに最も重要なのは、「菌を持ち込まない・菌を持ち出さない」ことです。使い方を誤ると、細胞培養が失敗したり、菌をクリーンベンチ外に放出してしまったりします。クリーンベンチを正しく使うには、まず準備が肝心です。また適切な後片付けができなければ実験室内を汚染することもあるので、正しい方法を身につけましょう。

クリーンベンチの準備

無菌操作をするクリーンベンチは、中を無菌状態にしなければなりません。クリーンベンチの準備は以下のとおり。

  • 使用する約1時間前にUVランプをつける
  • UVランプを消灯する
  • 作業用ライトとファンのスイッチを入れる
  • ドアを20cm程度開けて5分程度稼働する
  • 70%エタノールをクリーンベンチ内の全体に噴霧し、キムワイプもしくは滅菌ガーゼで拭く
  • クリーンベンチの準備完了

クリーンベンチのUVランプには強い滅菌能力がありますが、人間にも有害です。そのためUVランプは直視せず、クリーンベンチ使用時には必ず消灯しましょう。

実験者の準備

準備

人間の皮膚には無数の菌が存在しており、無菌操作の汚染源になります。そのためクリーンベンチで実験する前には、次のポイントを順に実践しましょう。

  • 爪を短く切る
  • 手をせっけんでしっかり洗う
  • 手洗い後の水気はペーパータオルでよく拭き取る
  • 手洗い後に70%エタノールで消毒する
  • 無菌手袋を装着する
  • クリーンベンチに入れる、肘の手前まで70%エタノールで消毒する

使用器具の準備

クリーンベンチ内で使用する器具は全て滅菌しなければなりません。滅菌方法は次のような方法がよく用いられます。

  • オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)
  • 乾熱滅菌
  • アルコール滅菌

オートクレーブ滅菌と乾熱滅菌をするには、器具を滅菌袋に入れて滅菌します。クリーンベンチへは器具が滅菌袋に入った状態で入れ、開封はクリーンベンチの中でおこなってくださいね。

実験終了時の片づけ方

全ての作業が終了したら、使用した器具を全て70%アルコールで滅菌してからクリーンベンチの外に出します。ファンを停止し、クリーンベンチのドアを閉めてUVランプを点灯。UVランプは1時間程度で消して問題ありません。実験で使用して菌が付着しているものは、適切な滅菌方法(オートクレーブなど)で処理したあと、廃棄してください。

クリーンベンチでの無菌操作のポイント

クリーンベンチでの作業中はコンタミネーションが起こる可能性が高いので、よく注意しておこなわなければなりません。無菌操作をする上で守りたいポイントを8つあります。

  • クリーンベンチの扉を開ける高さは20~25cm程度
  • クリーンベンチに持ち込む全ての器具(滅菌袋ごと)や試薬の表面は70%アルコール噴霧と拭き取り
  • 試薬や培地の入った容器の蓋の開封は最小限
  • 容器の蓋を開けた状態の上では作業はしない
  • ガスバーナーを使用すると上昇気流が発生し菌やホコリが舞うので近くに何も置かない
  • 実験中にしゃべらないクリーンベンチ使用者の近くを通らない
  • 作業を中断するときは容器の蓋を閉め、静かに手をクリーンベンチから出す

クリーンベンチでの実験中は常に菌の流れを意識し、細心の注意を忘れずに行動しましょう。

クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトの違いは?

クリーンベンチに似た機器の他に、安全キャビネットとドラフトがあります。無菌操作ができるものは、クリーンベンチと安全キャビネットです。3つの機器の特徴と違いを詳しくお伝えします。

クリーンベンチとは

クリーンベンチは、試料を無菌状態で作業するのを目的に作られています。気流はHEPAフィルターを通った無菌状態のものが、作業台から実験作業者に向かって流れています。そのためクリーンベンチで人間に有害な物質を使うと、作業者が暴露してしまうのです。クリーンベンチは細胞培養や人間には無害の菌培養を無菌環境でおこなうときに適しています。

安全キャビネットとは

安全キャビネットは、実験者に対して有害物質の暴露をおさえつつ無菌作業ができるものです。HEPAフィルターを通った気流は、庫内上部から作業台へ流れ、作業台下部から吸い込まれて排気口に流れていきます。エアーカーテンができるので、作業者にクリーンベンチ内の気流が当たることはなく、有害物質から守ってくれるのです。安全キャビネットでの作業は、クリーンベンチと同じ無菌作業のポイントを実践し、とくに「持ち出さない」を意識しましょう。

安全キャビネットは、メーカーによってクリーンベンチと同じ分類とされているところもあります。医薬品の調製、感染物質の取り扱い、有害な菌培養には、安全キャビネットを選んでください。

ドラフトとは

ドラフト(ドラフトチャンバー)は、化学実験において有害なガスや揮発性物質から実験者を守るものです。庫内が無菌状態である必要はなく、クリーンベンチや安全キャビネットのようにHEPAフィルターや滅菌のためのUVランプはついていません。気流は庫外から庫内に流れています。大気に放出するのを避けるべき物質を取り扱う場合は、スクラバーつきのドラフトチャンバーを使用してください。スクラバーは有害ガスを無害にして大気中に放出する装置です。

クリーンベンチの価格は?タイプ別におすすめ紹介

クリーンベンチの価格は、卓上型や簡易型で40万円~、独立型で100万円~230万円が相場です。3つのタイプに分けて各特徴とおすすめ機器も紹介するので、クリーンベンチの導入を検討しているなら参考にしてください。

【独立型】クリーンベンチ

クリーンベンチ
引用:㈱池田理化 バイオ用クリーンベンチCCVシリーズ

独立型のクリーンベンチは、作業スペースが広く一般的なタイプです。実験室の空きスペースに設置します。作業スペースは横幅1m以上あるものなら、検体数が多い実験でも広々使えます。

㈱日立産機システムのCCVシリーズは、実験者が有害な菌の暴露を防ぐ安全キャビネット機能もついて、価格は¥1,138,000~です。清浄度はISOクラス4(クラス10)で、高い清浄度が保たれます。作業スペースを大きく取りたいなら、CCV-1917Eでは横幅1865mm×奥600mmもあります。半日以上かかる無菌作業があるなら、作業スペースが広い独立型のクリーンベンチがおすすめです。

参考:㈱日立産機システムバイオ用クリーンベンチ

参考:㈱池田理化 バイオ用クリーンベンチCCVシリーズ

【卓上型】クリーンベンチ

出典:㈱島津理化 クリーンベンチ卓上型

卓上型のクリーンベンチとは、既存の実験台の上に設置するタイプです。卓上型は無菌作業と通常の作業を同じ実験台でおこないたいときに最適。

㈱島津理化のSCB-840TSは、大きさW845×D620×H1045mmで実験台の空きスペースに置きやすいです。価格は¥395,000。ちょっとした無菌作業が必要なときに、卓上型のクリーンベンチは活躍します。

参考:㈱島津理化 クリーンベンチ卓上型SCB-840TS

【簡易型】クリーンベンチ

簡易型のクリーンベンチは、使用者が組み立てて使えるものです。フレームや作業台などの部品が分かれてコンパクトに納品されるので、搬入口が小さな実験室でも設置できます。

日本エアーテック㈱のSS-BS-15Yは、作業スペースが横1240mm×奥620mmの広々としたスペースを備えながら、価格は¥445,000でコスパがいいです。価格は安くてもHEPAフィルターを通した気流が、清浄度ISOクラス5(クラス100)を保っています。

参考:日本エアーテック㈱ カタログ

クリーンベンチのHEPAフィルターは重要!性能チェックと定期交換を

クリーンベンチに入る空気は、HEPAフィルターを通して入ってきます。HEPAフィルターは0.3μmの粒子を99.97%以上捕集する集塵効率があります。しかし長期間使用すると、フィルターが目詰まりし、風量と風速が落ちます。風速と風量が落ちると、適切な無菌環境が維持できません。さらに小さなピンホールができることもあり、菌がピンホールをすり抜けて入ってくることも。

HEPAフィルターの性能が落ちたかどうかを判断するには、差圧計を確認しましょう。差圧計の目盛りが新品のHEPAフィルター設置時から上がっているようなら、目詰まりが起こっている証拠です。また差圧計がないクリーンベンチでも、1年に1度を目安にHEPAフィルターを交換するのがよいとされていますよ。クリーンベンチを販売しているメーカーでは、定期点検を含めた年間保守契約プランもあるので、使用頻度が高いなら検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

まとめ

クリーンベンチを使う上で守りたいポイントは、菌を持ち込まず、菌を持ち出さないことです。無菌操作するときは常に菌の存在を意識しながら、細心の注意を払って作業しましょう。無菌操作をするにはクリーンベンチ以外に、安全キャビネットも使えます。安全キャビネットは試料を無菌環境に保つだけでなく、実験者も菌の暴露から守ってくれるものです。

クリーンベンチには大きく分けて3つのタイプがありますが、一般的なものは独立型で価格は100~230万円程度です。ちょっとした無菌実験には、卓上型や簡易型のクリーンベンチも検討してみてください。分析計測ジャーナルでは、クリーンベンチに関するご相談や、価格の見積もりを受け付けています。お気軽にお問い合わせください。

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分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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