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HPLCで使える水は?実は奥が深い水の話

2022.09.02 (Fri)

  • HPLC

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bunseki-keisoku

話

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を使った分析では、試薬の他に水を使用します。水は実験室の水道から簡単に得られますが、HPLC分析で使用する水は水道水ではいけません。分析の種類によって、求める水の水質も異なります。

この記事では水の種類について解説し、HPLC分析で使える水についてお伝えします。また水の入手方法についてもご紹介。実は種類が多く奥が深い「水」について、詳しく知れますよ。

分析計測ジャーナルでは、HPLCの水に関するご質問やご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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HPLCで使える水は?水の純度を表す指標も紹介

水

HPLCで使用できる水は、「超純水」と呼ばれるもので分析に干渉しない水質です。水質は主にTOCと比抵抗値で評価されます。2つの評価項目について詳しく解説します。

TOC(総有機物)

TOC(総有機物)とは、水中に存在する有機物の総量を炭素量で表したものです。TOC数値が高いほど、水に不純物が混ざっており汚れている状態になります。

「JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水」において、微量成分分析用に用いる水のTOCは50ppb以下に規定されています。またヨーロッパの医薬品に適応される「European Pharmacopoeia 10th Edition. 2020, 10.2.(欧州薬局方)」では、TOC5ppb以下です。日本の薬局方にはTOCの明確な基準はありません。

HPLC分析で使える水は、工業用ではJISの50ppb以下、医薬品用では欧州薬局方の5ppb以下の水が一般的です。しかし近年の機器の高感度化により、TOC50ppbの水では水由来のゴーストピークが出ることがあります。そのため分析に求める感度によっては、工業用でもTOC5ppb以下の水が必要です。

参考:JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
参考:HPLC分析の高精度かに影響を与える分析用水(高木祥文)

比抵抗値

比抵抗値とは水中のイオン量で、水に含まれる無機物の量を表します。イオン量が多い(無機物の量が多い)ほど電流は流れやすく比抵抗値は小さいです。反対にイオン量が少ないと、比抵抗値は大きくなります。

JIS K 0557では1MΩ・cm以上、欧州薬局方では18MΩ・cm以上の規格です。水の無機物を限界まで取り除くと、理論上は18.2MΩ・cmになります。

参考:JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水

純度の高い水にするには?5つの水の精製法

方法

水の純度を高めるには、水道水にさまざまな処理をおこないます。最も純度が高い水は、各精製法を組み合わせた「超純水」です。水の精製によく使われる以下の5つの方法をご紹介します。

  • 逆浸透膜法
  • 蒸留法
  • イオン交換法
  • 連続イオン交換(EDI)
  • 紫外線照射

逆浸透膜法

逆浸透膜法とは逆浸透膜(RO膜)によって水を精製する方法です。微粒子やイオン類などの不純物を、大きさによって分離します。逆浸透膜の孔径は0.0001μmと微細で、浮遊物はもちろんバクテリアなども除去します。逆浸透膜法で得られた水は、「RO水」という名前です。

蒸留法

蒸留法とは、水と不純物の沸点の違いを利用した方法です。水を蒸発させて冷却し得られた水には不純物が少なくなっています。蒸留法で得られた水は「蒸留水」と呼ばれます。簡単な装置で製造できるので、昔から使われている精製法です。

イオン交換法

イオン交換樹脂で不純物を除去する方法が、イオン交換法です。イオン類やシリカなどの不純物の除去に適しています。ただし有機物の除去には向いておらずイオン交換樹脂からの有機物の溶出があるので、TOCは水道水と変わりません。

連続イオン交換法(EDI)

連続イオン交換法(EDI)は電気の力でイオン性不純物を除去する方法です。イオン交換法で用いるイオン交換膜に電極がついた構造をしています。EDIはイオン交換法の水よりも、高い抗比抵抗値の水が得られます。

紫外線照射

紫外線照射は除去したい物質によって波長が異なります。254nmで微生物の殺菌、185nmは有機物の除去をメインに用いられる波長です。RO水や蒸留水・イオン交換水に紫外線を照射し水の純度を高めます。低いTOC値が必要な場合に用いられる方法です。

HPLC分析の種類で違う水!チェックするポイント

ポイント

HPLC分析で使える水は、分析の種類によって異なります。今回は水の影響が出やすい、逆相クロマトグラフィーとイオンクロマトグラフィーで用いる水についてお伝えします。

逆相クロマトグラフィー

逆相クロマトグラフィーで用いる水は、低TOCの水です。逆相クロマトグラフィーでは、有機物の分離分析をおこないます。そのため用いる水に有機不純物の混入があると、ゴーストピークが出てきます。特に検出波長210nmなどの低波長で分析する際は、水の有機物混入に注意が必要です。

低TOCの水が必要な逆相クロマトグラフィーでは、RO水やイオン交換水は使えません。紫外線照射などの処理が施された、極めてTOC値が低い水を使いましょう。

イオンクロマトグラフィー

イオンクロマトグラフィーで使う水は、イオンがしっかり取り除かれた水です。高い精度を求めるなら、比抵抗値18MΩ・cm以上の水を使ってください。蒸留水やRO水は比抵抗値0.1~1MΩ・cm程度なので、イオンクロマトグラフィーにはおすすめできません。イオン交換法やEDI法で得られた水がおすすめです。

HPLC用の水を手に入れる方法

HPLCで使える水は高い純度が必要で、水道水から自作するのは限界があります。HPLC分析用の水でお悩みなら、2つの方法があります。水の使用頻度や予算に応じて、どちらかの方法を選びましょう。

HPLC用の水を試薬メーカーから購入

試薬メーカーでは、HPLC分析用の水が試薬として販売されています。HPLC用、LC/MS用など用途別に製品があります。500mLの低容量から製品展開されており、必要量に応じて20Lの大きなサイズも購入可能です。

試薬として購入した水は、開封後すぐに空気中の不純物により劣化するので、できるだけ都度使いきるのがおすすめです。もし使いきらず残ってしまったなら、残りの水は廃棄しましょう。使用頻度が少ないならランニングコストが低い、試薬メーカーからの購入が最適です。

超純水装置の導入

HPLC用の水の使用が頻繁かつ大量に必要なら、実験室に超純水装置の導入を検討してみてください。超純水装置は実験室の水道蛇口に接続し、水道水から超純水を作る装置です。蛇口から水道水を出すように、いつでも装置のボタンを押せば超純水が出てくる便利な機器です。毎回新鮮な超純水が、必要なだけ使えます。

しかし超純水装置は、機器本体の価格が50万円~100万円台です。さらに定期的なフィルターやUVランプ交換が必要で、ランニングコストもかかります。ただ大量に使うなら、試薬を都度購入するよりも単価は安くなります。使用頻度が高いなら、便利な超純水装置がおすすめです。

HPLCで使える!おすすめの超純水装置

超純水装置はHPLCを頻繁に使うなら、必要な機器です。今回は企業や大学の実験室で愛用されている機器3つをご紹介します。超純水装置選びに悩んだら、参考にしてみてください。

Milli-Q(メルクミリポア)

Milli-Q(メルクミリポア)
出典:ヤマト化学㈱ Milli-Q®IQ7003

メルクミリポアが販売するMilli-Q(ミリキュー)シリーズは、人気の超純水装置です。超純水のことを「ミリキュー水」と呼ぶ研究者がいるほど、Milli-Qは愛されています。

Milli-Qシリーズは、水道水や純水から超純水が作れます。また必要量に応じて、タンク容量と製造能力が違う機種もあります。水質はTOC5ppb以下(最高到達度2ppb以下)、比抵抗値18.2MΩ・cmの最高純度です。製薬企業なども愛用するMilli-Qは、高い純度と安心の品質があります。

参考:メルクミリポア Milli-Q

ピューリックμ(オルガノ㈱)

ピューリックμ(オルガノ㈱)
出典:オルガノ㈱ ピューリックμ

オルガノ㈱のピューリックμ(ミュー)は、コンパクトなボディでシンプルなデザインが特徴です。1日の純水使用量10L未満に適しており、HPLC1~2台の移動相用なら十分なサイズです。タンクへ直接手汲みすれば、水道がない場所にも設置可能。小規模な実験室で初めて超純水装置を導入するなら、ピューリックμがおすすめです。

参考:オルガノ㈱ ピューリックμ

PURELAB®(エルガ・ラボウォーター)

PURELAB®(エルガ・ラボウォーター)
出典:エルガ・ラボウォーター PURELAB Quest

エルガ・ラボウォーターは社名のとおり、純水装置に特化した会社です。PURELAB®シリーズには、さまざまなニーズに対応する機種が揃っています。

PURELAB Questは業界初の、1台で超純水・純水・RO水の3種類の水が使える装置です。HPLC用の水には超純水、水の純度が低くても問題のない実験には純水、器具の洗浄用にはRO水と分けて使えます。超純水装置以外にも水の精製装置が必要なら、PURELAB Questはいかがでしょうか。

参考:エルガ・ラボウォーター PURELAB®

まとめ

まとめ

HPLCで使える水は、「超純水」です。水の不純物量を表すTOCと比抵抗値はそれぞれ、5ppb以下および18MΩ・cm以上であればどんなHPLC分析にも影響なく使えます。

HPLC分析の種類によって、影響する不純物は異なります。

  • 逆相クロマトグラフィー:有機不純物が分析に影響するので低TOC値の水
  • イオンクロマトグラフィー:イオンが影響するため高比抵抗値の水

超純水は試薬メーカーから試薬として購入するか、超純水製造装置を導入して得られます。

分析計測ジャーナルでは、HPLCで使える水のご相談や超純水製造装置のご紹介などを承っております。お気軽にお問い合わせください。

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分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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