有害な物質を実験で取り扱う際に、有害物質を排気・浄化してくれる装置「ドラフトチャンバー」。
ドラフトチャンバーは、研究者およびその空間の安全性を保つための大切な装置です。
ドラフトチャンバーを導入する際、まず皆さんが気にされるのは「本体の価格」かと思います。ですが本体の価格は幅があり、「結局どのぐらい費用がかかるのかわからない」とお困りではないでしょうか。
また、ドラフトチャンバーは、本体以外にも工事費がかかったり、設置場所について確認点があったり、必要な提出書類があったり…と、本体の価格以外にも考えておかなければいけないポイントがたくさんあります。
ただしドラフトチャンバーを導入したことのない方は、そのあたりを想像することができず、価格のイメージがしにくいと思います。
ですが実際の導入事例を見ると、同じドラフトチャンバーでも設置条件の違いで
かかる費用が100万円台~500万円台と400万以上の差があった
といったことがありました。
そのあたりを知らないと
「ドラフトチャンバーの導入って、設置条件でこんなに費用に違いが出るなんて知らなかった!」
そんな風に頭を抱えることになるかもしれません。
また大体の納期や、ドラフトチャンバーを設置するにあたって必要な書類などについても知っておくべきでしょう。
それぞれどういった点に気を付けないといけないのか?具体的な価格例をもとに一緒に見ていきましょう。
目次
■ドラフトチャンバーの導入費用(参考例)
まずは下記の価格例を元に、具体的にどの点で費用がかかっているのか?安い場合と高い場合の違いは何か?といった点を見てみましょう。
■価格比較
(例)A社の同商品を、設置条件2パターンで見た価格比較(定価ベースで比較)
ご覧の通り、設置条件の違いで400万円以上の差が出るのがわかります。合計額で見てみると約3倍もの差が出ています。
いずれの場合も運送費13万円+搬入据付費18万=31万円はかかっているのですが、高い方の見積書のみにあるのが
①排気ファン②特殊搬入費③ダクト工事費④電気工事費⑤給排水接続工事費⑥ガス接続工事費⑦風量制御⑧スクラバー
の8項目です。これらはどういった場合に必要な費用なのか?それを知るために、この8項目が何を指すのか詳しく見ていきましょう。
■①排気ファン
排気ファンを新設する場合の費用です。
■②特殊搬入費
クレーンなどの高所作業車を利用した場合の費用です。例えば幅の大きいドラフトチャンバーの場合、分解して搬入するのですが、それでも建物の構造上、搬入経路が確保できない場合があります。その際は窓から搬入するため、高所作業車を別途手配しなければいけません。
■③ダクト工事費
ドラフトチャンバーには、気体をダクトによって排出するための「排気ダクト」が必須です。ダクトは気体を運ぶ管であり、必要な管の長さで価格が変わってきます。
例えば10階建ての建物で屋上に排出する場合、ドラフトチャンバーが1階にある場合と8階にある場合とでは、ダクトの長さが変わります。「1→10階」にダクトをひくのと「8→10階」にダクトをひくのとでは、前者の方が明らかに長く、価格も高くなります。
また排出先がドラフトと同じ階にある場合でも、障害物などがありダクトを迂回させないといけない時があります。その場合も、ダクトの長さが長くなり、結果費用がかさむパターンもあります。
■④電気工事費・⑤給排水接続工事費・⑥ガス接続工事費
ドラフトチャンバーのチャンバー内にコンセント・給排水・ガスが必要な場合にかかる費用です。
■⑦風量制御
ドラフトチャンバーの風量コントロールのために、風量制御をつける場合の費用です(※VAV、CAVの場合の価格)。
■⑧スクラバー
スクラバーをつける場合の費用です(※屋内横置き型の場合の価格)。
※スクラバーとは、排気ガス中に含まれる有害な化学物質や粒子などを洗浄やろ過によって除去処理する装置で、湿式・乾式・燃焼式などの種類があり、排ガス洗浄装置・除害装置とも呼ばれています。一般的にスクラバーと呼ばれていますが、本来は湿式排ガス処理装置のことを指します。(株式会社島津理化HPより引用)
■ドラフトチャンバーのサイズの確認
ここまで読んでいただきましたら、設置条件の違いで大きな価格差がでることがご理解いただけたかと思います。そしてもちろん設置条件以外にも、ドラフトチャンバー本体の選定をする必要があるのですが、その際まず最初にやるべきなのは「ドラフトチャンバーのサイズの選定」です。
ドラフトチャンバーのサイズは、
■ドラフトチャンバーを一度に使う人数
■ドラフトチャンバー内に置きたい物の大きさ・量
■ドラフトチャンバー内に濃縮装置などを置くかどうか
など、実際に「どんな風に使うか」をイメージしながらサイズを決めていきましょう。当たり前ですが同メーカーの同シリーズでも、サイズによって価格が変わるので、スペックの比較の前にまずは希望のサイズを決めておきましょう。
■納期についての注意点(届け出の準備)
【ドラフトチャンバーの納期】は、ざっくりですが、2ヶ月程度はかかると考えて下さい。工事自体は1週間以内で終わるとしても、ドラフトチャンバーを設置するにあたり、必要な書類を準備するのに時間がかかります。これは労働基準監督署に提出する「機械の設置届」のことで、大学なら施設課、民間企業なら設備課や工務課が担当していることが多いです。
(不明な点ございましたらお問い合わせ下さい:info@aoyama-syouji.jp)
ドラフトチャンバー本体の納期以外にも、書類準備に時間がかかることも知っておくべきでしょう。
■ドラフトチャンバー導入後の定期点検・メンテナンスについて
ドラフトチャンバーは導入後も点検・メンテナンスに費用がかかります。こちらの記事に詳しく書いていますのでご参照下さい。↓
■簡易な卓上型ドラフトチャンバーについて
最近では安価な卓上型ドラフトチャンバーもたくさんあります。こちらは設置・据付するタイプのドラフトチャンバーではなく、実験台・作業台の上で排気を行うタイプのドラフトチャンバーです。研究の用途にもよりますが、卓上型の簡易なものでも十分な場合もあります。
別途送料・搬入費等かかる場合もございますので、詳細はお問い合わせ下さい。
■アズワン
3-4060-01 卓上型ドラフト 横型セット
定価:144,000円
■ヤマト科学株式会社
簡易卓上フード MF-51S
定価:670,000円
■オリエンタル技研工業株式会社
カプトエアー " スマート " ダクトレスヒュームフード S-321
定価:729,000円~(フィルターの種類によります)
■まとめ
ドラフトチャンバーの導入における注意点をまとめてみましたが、イメージはつかめたでしょうか?
ドラフトチャンバーは「商品を決めたらすぐに導入できる!」といったものではありません。それなりに時間をかけて、ポイントを押さえながら進めていくことをおすすめします。
「ドラフトチャンバーの導入、知識がないまま進めるのは不安だな…」そのような方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
記事をシェアする