近年よく耳にする”働き方改革”。
ニュースなどで取り上げられるのは一般企業の事例が多く、研究業務に従事する方々の働き方改革についてはあまり目にしないのではないでしょうか。
そもそも研究者の方々は
・分析作業に時間がかかるので労働時間の短縮ができない
・経験とスキルを持ち合わせた人材の確保が難しい
といった理由から「働き方は変えられない」とお考えではないでしょうか。
ですが近年、働き方改革の推進を手助けする助成金によるサポートも増え、また、分析機器メーカーの業務効率化の取り組みなども進んでいます。こういったアプローチを知ることは、研究者の方々の働き方改革につながるかもしれません。
■そもそも働き方改革とは?
そもそも働き方改革とはどういった施策でしょうか。
働き方改革とは、
「一億総活躍社会」の実現に向けて、労働環境を改善するための取り組みです。これは働く人達が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革です。
・長時間労働の見直し
・業務内容の改善・効率化
・労働人口不足の解消
など、今まで多くの働く人達が頭を悩ませていた問題に取り組もうという施策になります。
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/
(参照:厚生労働省「働き方改革特設サイト」)
かつての働く人達の「長時間がむしゃらに働き続ける」といった価値観は、働き方のニーズが多様化した現代にはそぐわないものになりました。時代に合わせて働き方をアップデートする必要がある現代では、どの業種の労働者も、自らの”働き方改革”に真剣に取り組む必要があります。
■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」
働き方を変えようと考えても「十分な予算がない」「まず何から始めたらいいのかわからない」と頭を悩ませる方は多いと思います。そういった方は、厚生労働省の働き方改革推進支援を目的とした助成金があるのをご存じでしょうか?
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
(参照:厚生労働省ホームページ「労働時間等の設定の改善」参照)
ここから一部を見ていきましょう。
例えば「テレワークコース」。テレワークコースの助成内容は、
「時間外労働の制限その他の労働時間等の設定の改善及び仕事と生活の調和の推進のため、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する」
といったものです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html
(参照:厚生労働省ホームページ「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」参照)
つまり「テレワークを取り入れたいが予算がない!」といった事業主を助成金で手助けする制度です。
支給対象となる事業主は下記の通りです。
ご利用は「申請→取組を実施→支給申請」の流れとなります。
支給額は、「支給対象となる取組」によって変わります。成果目標と評価期間は下記の通りです。
支給対象となる取組や支給額の詳細はこちらです。
きちんと取り組み達成すれば1企業当たり上限300万円となりますので、力強いサポートと言えるのではないでしょうか。
※令和3年10月現在、新規の申請受付は終了しております。最新の情報が出ましたら随時更新致します。
また、「働き方・休み方改善コンサルタント」といったサポート事業もあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
(厚生労働省ホームページ「労働時間等の設定の改善」参照)
都道府県労働局に配置された「働き方・休み方改善コンサルタント」が、次のようなお悩みやご要望に応えるというものです。
・「従業員の健康のため、長時間労働を改善したい」
・「フレックスタイム制や裁量労働制を導入したいけど、手続きがわからない」
・「優秀な人材を確保するためにも年次有給休暇をはじめ休暇制度を充実したい」等
助成金の前に、「まず何をすればいいかわからない」という方は、無料ですのでまずこちらに相談するのも方法のひとつでしょう。
■分析機器メーカーの業務効率化の取り組み
助成金やサポート窓口があることはご理解いただけたでしょうか。
ですが研究者の方々は
「いやいや、それでもスキルや経験のある自分が現場で頑張らなければ」
と思い込んでいるかもしれません。
とはいえ一方で
「単純な分析作業に時間を費やすよりもっと自分の研究に集中する時間が欲しい」
「勤務時間を短縮して研究者の負担を減らしたい」
そういった本音もお持ちではないでしょうか。
近年、分析機器メーカーは
“分析業務の自動化” ”AIによる分析時間の短縮”
を実現するための装置やシステムを提案しています。
こちらでは株式会社島津製作所の近年の取り組みについてご紹介いたします。
<AIで開発したアルゴリズムによるデータ解析支援 LC-MS/MS向けオプションソフトウェア「Peakintelligence」>
(参照:https://www.shimadzu.co.jp/news/press/jmsxjkglv6g0snf.html)
こちらは従来、作業者が目視で確認していた工程をソフトウェアに任せることで、研究現場の働き方改革を実現するといったソフトウェアになります。
装置から取得したデータが膨大なため、解析において「ピークピッキング」と呼ばれる作業は工程のボトルネックになっていましたが、生成した7万件の教師データをディープラーニング(深層学習)機能で学習させ、従来は作業者が目視で確認していた工程をソフトウェアに任せることで、研究現場の働き方改革を実現しました。解析時間を3分の1に短縮することで、研究現場の働き方改革を実現するとともに、ユーザーはより創造的な業務に専念できます。
<ラボ運営「AIで自動化へ」計画>
https://newswitch.jp/p/18502
(参照:日刊工業新聞「ニュースイッチ」)
島津製作所は人工知能(AI)によりラボ(研究所)の運営を高度化する研究を始めました。試験設備やロボットなどにAIを搭載し、先端分析計測機器などを使った実験の計画立案から実作業、結果解釈、その解釈を元にした次の実験計画立案といった一連の作業をAIに任せ、新たな発見を後押しします。自動化によりラボ運営を効率化するとともに、ビッグデータ(大量データ)の収集・認識・処理などで人間に勝るAIならではの成果が期待されます。2020年代前半の実用化を目指しているとのことです。
■まとめ
今や”働き方改革”は一部の人だけが進めている施策ではありません。
ご紹介した通り、助成金等のサポートもあり、研究の現場でも様々な取り組みがなされています。こういったアプローチを知ることで、研究業務に従事する方々の働き方改革も進めることができるかもしれません。
働き方改革についてご質問ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
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