ニュースや新聞、Web記事等でたまに見かける“ものづくり補助金”ってなに???
“補助金”というくらいなので、“事業で使う何らかの費用に補助金が出る”ということは想像がつくと思いますが、実際のところ“分析・計測”の分野で使えるものなのか否かについてはご存知ない方も多いのではないでしょうか?
今回は、この“ものづくり補助金”について、その概要や注意事項、そして分析・計測の分野における活用の可能性について見ていきましょう。
―目次―
- ものづくり補助金とは?
- どんな“設備投資”が対象になるのか?
- 最近の採択の傾向を見てみよう!
- 採択を勝ち取るための“事業計画書”の作成のポイントとは?
- “実際に採択された事業計画書”はどうなっているのか?
- まとめ
ものづくり補助金とは?
まず、“そもそも補助金とは何なのか?”について知っておきましょう。補助金とは、国や都道府県・市区町村が“政策”を推進するために、政策目的に沿った事業を行う者に交付する資金のことを言います。つまり、補助金ごとに定められている“目的”を深く理解することがとても大切になります。
では、ものづくり補助金の“目的”はどのようになっているのでしょうか?例えば、令和4年10月24日に公開された第13次締切分の公募要領のP.5には下記のように書かれています。
“中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い生産性を向上させるための設備投資等を支援します。”
引用:https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/13th/reiwakoubo_20221025.pdf
つまり、採択を勝ち取るためには“生産性を向上させる”事業構想“を伴った設備投資”でなければなりません。ただ単に“新しい設備が欲しい!”という内容の申請では採択を手にするのは難しいのです。そして、この傾向は年々強くなっています。
なお、ものづくり補助金では、基本的には“750万円〜1,250万円”が国から補助(公募年度や従業員数等で増減あり)されます。なお、補助率は1/2 or 2/3が基本となっています。もし、2/3補助で上限1,000万円であれば、1,500万円の設備購入で1,000万円が補助されるということになります。会社規模/申請枠や公募年度によって異なることもありますので、必ず補助金のルールブックである“公募要領”を確認するようにしましょう。
<ものづくり補助金 ポータルサイト>
https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html
“分析・計測”の分野のどんな“設備投資”が対象になるのか?
ものづくり補助金では、端的に言えば“生産性向上に資する新たな設備投資”が対象になります。言い換えると、以下のような設備投資と見られてしまう場合は、そのまま申請しても補助対象にはなりません。
- 単なる老朽化による設備更新
- 単なる設備の買い増し・買い足し
- 付加価値向上が見込めない無謀/安易な設備投資
従って、“生産性向上に資する新たな設備投資”と審査員が認めてくれるように自社の事業計画をしっかりと練り上げる必要があります。
“分析・計測”の分野であれば、例えば“分析サービス”を展開する事業者が、より分析精度や分析速度の速い設備を導入してサービス提供の生産性を高める。或いは、メーカーが品質検査・チェック工程や排水処理工程の生産性を高めることで、商品・サービスの提供価値を高める、などが考えられます。
一方、残念ながら、純粋な“基礎研究”のための“設備投資”に使うのはハードルが高くなります。お客様に商品・サービスを提供するよりも遥かに手前の世界だからです。ただ、日常的に速いサイクルで“商品開発→市場投入”が行われているような性質の場合は“ものづくり補助金”が有効活用できます。分析機器や計測機器などを補助金を使って購入したい!このようにお考えの場合は気軽にお問合せください、お手伝いいたします!
最近の採択の傾向を見てみよう!
ものづくり補助金の“採択率”は、予算規模・公募回数によって多少の上下はありますが、概ね40%前後となっています。高い時は60%を超える時もありますし、低い時は30%程度のこともあります。ただ、ハッキリと言えるのは、どのタイミングで出しても“上位の20%に入れるような内容の濃い事業計画書”が作れれば採択可能性はグッと高くなるということです。(補助金は“採点競技”なのです)
なお、申請はすべて“GビズIDプライム”を用いた“電子申請”になり、申請作業の負荷も大きく低減しています。なお、“GビズIDプライム”の取得については、概ね〜1ヶ月程度の時間を要すると言われています。
まだ取得されていない場合は、今すぐ“GビズIDプライム”でネット検索をしてお手続きをしてください。
採択を勝ち取るための“事業計画書”の作成のポイントとは?
兎にも角にも、“公募要領”に記載されている“審査項目”を網羅した具体的な事業計画書(A4で10枚)を書き仕上げる必要があります。
<審査項目の例>
- 試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。
- 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか(グローバル展開型では、事前の十分な市場調査分析を行っているか)。
- 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。
- ウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換、事業環境の変化に対応する投資内容であるか。また、成長と分配の好循環を実現させるために、有効な投資内容となっているか。
引用:https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/13th/reiwakoubo_20221025.pdf
これらの審査項目を踏まえつつ、審査員が読んで理解できるような“わかり易さ”と“具体性”のある構成・文章が求められます。
特に重要になるのは“具体性”です。さて、“具体性がある”とは、どういうことなのでしょうか?
例えばですが、
“新たな設備投資により●●分析の分析精度の向上を狙います”
という文章があったとします。
もし、このような文章ばかりの事業計画書だとすると“採択”を勝ち取るのは難しいでしょう。なぜなら”6W2H”が全く入っていないからです。これでは、すぐに以下のような疑問が審査員の頭に浮かぶはずです。
なぜ、分析精度を高める必要があるのですか?どうして、新たな設備投資が必要なのですか?現状の設備ではなぜ不可能なのですか?●●分析とは、具体的に何ですか?どこの誰向けですか?現状の分析精度はどれくらいですか?目指す分析精度はどれくらいですか?どうやって達成するのですか?・・・etc.
というように、”6W2H”を踏まえた“深堀された記述”が必須なのです。
“実際に採択された事業計画書”はどうなっているのか?
“審査項目”を余す事なく網羅し、審査員を魅了できる魅力的な“ストーリー展開”で書かれた“実際に採択された事業計画書”がこちらです。
<実際に採択された“ものづくり補助金”の事業計画書>
ご覧の通り、写真や図表・グラフを非常に多く使用しています。このように、採択される事業計画書というのは、審査項目に沿った見出しを付け、そして必要に応じて写真や図表・グラフを効果的に使っているのです。
これにより、審査員にとっては見やすく(読みやすく&わかりやすく)、かつ10ページという制約の中で審査項目を余すことなく網羅できるようにしているのです。なお、図表を効果的に駆使しながら審査項目をしっかり盛り込んで事業計画書を書いていくと、文字数は概ね8,000字〜10,000字程度になります。かなりのボリュームですね。。。
ものづくり補助金の事業計画書の作成にあたっては、特に“各種調査/分析・ストーリづくり・数値計画策定・執筆”で大変大きな負荷がかかります。事業計画書の作成に30〜50時間近くも費やしてしまうというのは決して珍しくはありません。
また、“ものづくり補助金”の申請においては、“経営コンサルタント(中小企業診断士/経営学修士 等)”の支援を受けて事業計画書を作成しているケースがよくあります。つまり、事業計画書作成の“プロ”が闘いを繰り広げているという側面もあるのです。見かけの“採択率だけでは判断できない厳しい競争環境となっていることも踏まえて、しっかりと時間をかけて準備をしましょう。
まとめ
“ものづくり補助金”と聞くと“製造業向けの補助金”という印象をもってしまいがちですが、実は正式名称は“ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金”。つまり製造業以外でも使うことができます。もちろん“分析・計測”の分野でも使える補助金なのです。
日常業務が忙しい中で“事業計画書”の作成に取り組むというのは本当に大変ですが、採択されれば約1,000万円もの補助が国から出るのですからチャレンジしないのは勿体無いですよね。
もし、“ものづくり補助金”の事業計画書の策定が時間的・ノウハウ的に厳しいと思う場合は、購入を検討している設備のメーカーや商社の営業担当さんにも相談してみるのが良いでしょう。ものづくり補助金の申請支援に長けた専門家(中小企業診断士/経営学修士 等)を紹介してくれることもあります。また、分析計測ジャーナルでも過去にものづくり補助金を採択ししたのですが、その際お願いをしたプロの専門家をご紹介することも可能です。気軽に連絡ください。
もちろん“費用”は発生してしまいますが、プロの力で高い採択率が望めるのと“作成負荷”が大幅に低減できるのは魅力的です。
ぜひ、本記事を参考にして“ものづくり補助金”を有効活用してくださいね。
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