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錠剤の水分測定方法は?測定機器も紹介

2022.12.01 (Thu)

  • 水分測定

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

錠剤

錠剤などの製薬製品に含まれる水分は、製品の分解や腐食に影響するので、管理とコントロールが重要です。そのため研究段階から製品の出荷まで常に水分量をモニタリングしなければなりません。しかし水分測定法はさまざまで、どの方法が適しているのか選ぶのが悩ましいです。測定機器も多くのメーカーから特徴のあるものが販売されているので、どの機種が最適か判断が難しいこともあります。

そこでこの記事では水分の測定方法を紹介し、おすすめの測定機器も紹介します。分析計測ジャーナルでは、水分測定に関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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錠剤も適応!日本薬局方の水分測定に関する試験方法

錠剤などの製薬製品を評価する方法は、日本薬局方(局方)で定められた方法を用います。局方には3つの水分に関する試験方法が収載されています。それぞれの試験方法と特徴を解説するので、製剤に適したものを選んでくださいね。

  • 水分測定法(カールフィッシャー法)
  • 吸着-脱着等温線測定法及び水分活性測定法
  • 乾燥減量試験法

参考:第十八改正日本薬局方 一般試験法(厚生労働省)

水分測定法(カールフィッシャー法)

カールフィッシャー法(KF法)は、ドイツの化学者「カール・フィッシャー」が発明した微量水分を測定する方法です。水とヨウ素および二酸化硫黄が定量的に反応する原理を用いて、水分量を算出します。

カールフィッシャー法の反応式:

I2+SO2+3C5H5N+CH3OH+H2O→2(C5H5N+H)I+(C5H5N+H)OSO2OCH3

水のみに特異的に反応するので、正確な水分量が把握できるのがカールフィッシャー法の特徴です。また検出感度の幅が広く含水率数ppm~100%まで対応しています。測定に要する時間は一般的に1検体数分で、再現性も高い方法です。錠剤や粉体、軟膏など、さまざまな形態の試料について使用できます。

水分活性測定法

水分活性測定は物質に結合せず自由に動く「自由水」の測定に適した方法です。この方法は錠剤や粉体などの固体の自由水量が測定できます。固体水分活性(Aw)は飽和水蒸気圧(P0)に対する水蒸気圧(P)の比で表されます。

水分活性(Aw)=水蒸気圧(P)/飽和水蒸気圧(P0

Awは0~1の間の数値で、全く水分活性のない物質は0、水100%は1になるのです。

測定機器は、専用の水分活性測定機器を用います。測定方法は簡単で、試料をチャンバーにセットしスタートボタンを押すだけ。測定には数分~数十分かかります。局方に準拠した機器法は、6種類の飽和塩溶液を用いて校正を満たしたものです。

乾燥減量

乾燥減量とは、乾燥前後の試料の重さの変化から、水分などの損失率を出すものです。この方法で得られる結果には、水分以外にも残留溶媒などの揮発性物質や結晶水なども含まれます。

操作方法は、はかり瓶(秤量瓶)に試料を入れ、一定条件(例:105℃、4時間)に置きます。乾燥前後の試料の重さを秤量し、減量値を算出する方法です。乾燥減量は特別な装置がなくても測定しやすい方法で、以下の器具があれば簡単に測定ができます。

  • はかり瓶(秤量瓶)
  • 乾熱滅菌機
  • デシケーター
  • 電子天秤
  • 減圧機(必要に応じて)

できるだけ設備投資を控えつつ、ざっくり水分含量の把握をしたいなら、乾燥減量はおすすめの試験方法です。

水分測定法といえばカールフィッシャー!原理と特徴を解説

原理

カールフィッシャー法は水のみを正確に測定できるので、水分測定法で最も用いられる方法です。カールフィッシャー法には「容量滴定法」と「電量滴定法」の2つの方法があります。一般的に水分量が1%以上なら容量滴定法、1%以下なら電量滴定法を選択してください。2つの測定原理と、試薬についての注意点をお伝えします。

広範囲の水分測定には「容量滴定法」

容量滴定法は、KF試薬(ヨウ素・二酸化硫黄・塩基)の消費量により、水分量を求める方法です。含水率数10ppm~100%までの広範囲の水分測定に適しています。カールフィッシャー反応の妨害反応の適応性に優れており、測定環境の湿度にも影響を受けにくいです。しかし試薬は都度交換するのが望ましく、力価標定も必要です。

微量な水分測定に最適「電量滴定法」

電量滴定法は溶液に試料を溶かし、電気反応によってヨウ素イオンをヨウ素に変えるときに消費される電気量から、水分量を算出する方法です。検出感度が高く、数pp~の含水率が正確に測定できます。

水分気化装置を使うと、溶剤に溶けない試料やカールフィッシャー反応を阻害する試料の測定が可能です。水分気化装置は試料を加熱し、窒素をキャリアーとして測定する水分を滴定フラスコ内に導入する装置です。

測定用試薬はメーカー調製品がおすすめ

カールフィッシャー法で用いる試薬の調製や標定方法は局方に記載されていますが、自ら調製するのは難しく手間がかかります。さらに空気中の水分を吸収するので不安定です。そのため、用いる試薬は試薬メーカーがあらかじめ調製し、標定されたものを選ぶのがおすすめです。

参考:試薬の選び方 三菱ケミカル㈱

食品などの水分を手軽に測定|水分計とは

局法に収載されている試験法ではなく食品をメインに使われる方法ですが、簡単に水分を測定する方法として水分計を用いる方法があります。水分計はヒーターで試料を加熱し、損失した水分率を求める機器です。得られる値には、水分以外に結晶水や揮発性物質も含まれます。乾燥減量と同じような結果が得られますが、乾燥減量法よりも簡単に短時間で測定が完了します。

水分計は天秤のような形状の機器で、試料をセットしスタートボタンを押すだけの簡単操作が魅力です。製剤の研究段階やプロセス検討など、評価する検体数が多い場合は手軽に使える水分計が便利ですよ。

水分測定機器を紹介

水分の測定ができる機器を、方法別に5機種紹介します。

  • カールフィッシャー法(3機種)
  • 水分活性
  • 水分計

【カールフィッシャー】ハイブリッドカールフィッシャー水分計MKH-710M(京都電子工業㈱)

ハイブリッドカールフィッシャー水分計MKH-710Mは、1台でカールフィッシャー法の容量滴定と電量滴定の両方が測定できる機器です。そのため超低水分の試料から高水分の使用まで、これ1台で測定ができます。さらに世界初の機能として、容量滴定と電量滴定を同時に測定(ハイブリッド測定)できるので、少サンプルで短時間測定が可能です。さまざまな試料の水分測定をおこないたいなら、MKH-710Mはいかがでしょうか。

参考:ハイブリッドカールフィッシャー水分計MKH-710M(京都電子工業㈱)

【カールフィッシャー】水分測定装置CA-310容量滴定法(日東精工アナリテック㈱)

日東精工アナリテックは、2020年4月までカールフィッシャー試薬(製品名:アクアミクロン)を製造販売している三菱ケミカル㈱の一部でした。そのためCA-310は、試薬のトレースが取れる機能が魅力です。製薬会社の品質管理部門ではGMP管理下の元、記録を残すのが重要です。CA-310は試薬の期限や力価の管理以外に、測定者の情報入力も厳密に管理できます。品質管理部で試薬の管理ミスを防ぎたいなら、CA-310がおすすめです。

【カールフィッシャー】Excellence Tシリーズ(メトラー・トレド)

メトラー・トレドはアメリカの分析機器メーカーで、製薬業界において人気の高いメーカーの一つです。Excellence Tシリーズは1台で容量法と電量法の2つが測定できるのはもちろん、電位差滴定にも使える機器です。追加ビュレットオプションを導入すれば、最大7ビュレットまで増やせるので、測定条件の検討も一気にできます。

操作は見やすいタッチパネル式で、ワンクリックで測定開始。また操作はできるだけ簡略化されているので、機器の扱いに慣れていない初心者でも使いやすいです。

参考:滴定装置 Excellence Tシリーズ(メトラー・トレド)

【水分活性】LaboTouch-aw NEO(ノバシーナ)

Nobasina(ノバシーナ)社製のLaboTouch-aw NEOは、局法に準拠した水分活性測定装置です。非常に高精度で±0.0030Awで正確な数値が算出できます。さらに測定幅も広く、0.03~1.000Awの試料に適応。これ1台であらゆる試料の水分活性が測定できますよ。操作はタッチパネル式で、操作性のよさにも定評があります。

参考:水分活性測定装置 LabMASTER-aw NEO(㈱和研薬

【水分計】MOC63u(㈱島津製作所)

㈱島津製作所のMOC63uは、202mm×336mmのコンパクトなボディで、実験台のどこでも置きやすいサイズです。約4.2kgで軽量なので、実験室と工場現場の持ち運びもできます。

5つの測定モードが設定でき、好みの条件もカスタマイズ可能。検体数が多く測定を早く終わらせたいときは、急速乾燥モードが便利です。価格は19万円~とお手軽なので、簡易に水分を測定したいならぴったりの1台ですよ。

参考:島津天びん・台はかり総合カタログ2022(㈱島津製作所)

まとめ

錠剤などの水分が測定できる方法は、3つあります。

  • 水分測定法(カールフィッシャー法)
  • 吸着-脱着等温線測定法及び水分活性測定法
  • 乾燥減量試験法

さらに研究段階などに簡易的に水分測定するには、水分計も便利です。

今回は水分が測定できる機器を、以下の5機種を紹介しました。

  • ハイブリッドカールフィッシャー水分計MKH-710M(京都電子工業㈱)
  • 水分測定装置CA-310容量滴定法(日東精工アナリテック㈱)
  • Excellence Tシリーズ(メトラー・トレド)
  • LaboTouch-aw NEO(ノバシーナ)
  • MOC63u(㈱島津製作所)

測定原理や製品の特徴によって、最適なものを選んでくださいね。分析計測ジャーナルでは、水分測定法や測定機器に関する相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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分析計測ジャーナルライターバッハ

ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。

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