IRとFTIRの違いとは?それぞれの機器も紹介

2022.02.28 (Mon)

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bunseki-keisoku

測定対象物の定性定量ができる赤外分光光度計(IR)は、種類がいくつか存在しています。 その中でも本日はFTIRと分散型IRの違いとそれぞれの機器をご紹介していきます。

抽象的な違いだけでなく、実際の製品をみながら違いをイメージしていただけるような記事になっております。

赤外分光光度計の導入の参考になれば幸いです。

IRは分散型とFTIRの2種類に分かれる

赤外分光光度計(IR)には、光学系の違いにより、分散型IR(分散型赤外分光光度計)とFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)の二種類が存在します。
FTIRは分散型IRに比べ、感度が良く、測定時間も短いなど利点は多いが、装置の仕組みが複雑です。

歴史としては分散型が古く、日本では、日本分光の前身である東京教育大学光学研究所時代、1954年から製造、販売しています。一方FTIRは、1982年から製造、販売しています。現在の主流はFTIRです。

分散型IRは、試料を透過した後の光を回折格子により分散させ、各波長を順次検出器で検出し、直接赤外スペクトルにしていきます。この分散型IRが、IRと呼ばれることがほとんどです。
直接赤外スペクトルを得ているため、直接的に装置の仕組みを理解できます。
一般的にはダブルビーム方式になっており、リアルタイムでバックグラウンド補正します。

FTIRは、干渉計を使用し、非分散で全波長を同時に検出します。この波長1つ1つをインターフェログラムといいます。このインターフェログラムを数学的な処理(フーリエ変換)をコンピュータ上で行い、赤外スペクトルを得ます。

(参考:JASCO日本分光「FTIRの基礎(2) FTIRの原理」、最新の装置の仕組みを“古い”装置から学ぶ

FTIRの特徴

①測定時間の短縮
FTIRではすべての波長を含む干渉波を検出するため多波長を同時に測定することが可能です。そのため、回折格子を走査してスペクトルを取得する分散型の分光法と比較して測定時間を短縮することが可能です。

②高S/N比
FTIRでは分散型で用いられているスリットを使用しません。
そのため、光源からの光を十分に得られるため、S/N比が高くなります。

③波数(波長)分解能が高い
分散型の分光法で波数分解能を上げる場合、スリット幅を狭めてS/N比を落とす代わりに波数分解能を上げられるのに対し、FTIRは移動鏡の移動距離を延ばすことで波数分解能を上げることができるため、S/N比を下げることなく波数分解能を上げることができます。

FTIRは高感度、高分解能で高速に測定できる分析手法として、広帯域の赤外スペクトルを測定する場合や、複雑な混合物の中から物性を同定する場合など応用範囲が広まっています。

(参考:ケイエルブイ株式会社「FTIRとは」より)

FTIR機器の紹介

現在は高速で高感度であるFTIRが主流になっているということで、実際に販売されているFTIRを3つご紹介していきます。
どのような観点で、検討するか参考にしてみてください。

国内メーカー島津製作所から「IRSpirit」

島津製作所「IRSpirit」動画より

「Ready to Run」というキャッチコピーからわかるように、誰でも簡単にスタートできるFTIRです。

コンパクトかつ上位モデルから引き継がれたテクノロジーで、低価格でも高い再現性を実現しています。2018年度レッドドットデザイン賞を受賞。
画面の指示に従うだけで簡単に分析ができるため、操作に慣れていない方にもおすすめの製品です。

(参考:島津製作所「IRSpirit」より)

海外メーカーBRUKERから「INVENIO®」

品質管理を目的とした日常的な分析から研究開発の分野における高度な測定まで、広範な目的に適合できるよう設計された1台です。
オプションの一体型タッチ PC はきわめて直感的に使用できるため、FT-IRの初心者からエキスパートまでをサポートすることができます。

(参考:BRUKER「FT-IR分光計 INVENIO®」より)

コンパクトサイズのFTIR「Gemini FTIR」

Thermo Fisher SCIENTIFIC「Gemini FTIR/Raman Handheld Analyzer」動画より

非常にコンパクトなサイズになっており、持ち運んで使用することが可能です。
災害時など現場で迅速に対応しなければならない時に役立ちます。
そのため水や衝撃に強く、丈夫な製品となっています。

(参考:Thermo Fisher SCIENTIFIC「Gemini FTIR/Raman Handheld Analyzer」より)

用途に合わせたFTIRを

今回3つの製品をご紹介させていただきましたが、メーカー毎にラインナップがあります。国内で販売されているFTIR一覧は、こちらの記事でご紹介させていただいておりますので、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

まとめ

IRとFTIRの違いについてとFTIRの製品を抜粋してご紹介しました。
現在はFTIRが主流となっていて、さまざまな特徴の製品が販売されていることがご理解いただけたかと思います。

分析機器は、常に進化しています。
研究のみにとどまらず、分析機器の最新の情報を取得できる環境作りもぜひ行ってみてください。

分析計測ジャーナルからも研究者に役立つ情報発信をしていきますので、それぞれの研究に活かしてみてみてください。

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