FTIR分析ATR法とは?そのための機器も紹介

2022.02.28 (Mon)

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bunseki-keisoku

FTIRには、いくつかの測定方法があることを知っていますか?

以前、こちらの記事ですべての測定方法をそれぞれ簡単にご紹介させていただきました。

本記事では、

どの試料にどの方法で測定したらいいかわからない
簡潔に測定できる方法が知りたい

そんな人のために、表面分析手法の中でも簡便であるATR法をご紹介します。
概念から具体的な方法まで、これさえ見ればATR法をマスターできる内容となっております。

FTIR導入後の研究イメージを広げるために、ぜひ最後までお読みください。

ATR法(全反射測定法)とは?

ATRとは、Attenuated Total Reflection(全反射測定法)の略で、反射法で測定する方法の1つです。サンプルの表面で全反射する光を測定することによって、サンプルの表面の光のもぐり込み(吸収スペクトル)を得る方法です。

一般的に幅広く使用されているサンプリング方法である透過法と異なり、測定光路長はサンプルの厚さに依存することがありません。

他の表面分析手法に比べて簡便であること、吸収強度が波長に依存していること、試料への光の侵入深さを入射角、プリズムの屈折率を変えることで調整できること、などがあげられます。

ATR は現代の赤外分光法における標準的な測定手法になっています。

特徴

  • 最小限のサンプル調製 – クリスタルの上にサンプルを置いてスペクトルを測定
  • 片付けが早くて簡単 – サンプルを取り除いてクリスタルの表面をきれいにするだけ
  • サンプルを自然な状態で分析 – スペクトル測定のために加熱したり、ペレットに押し込んだり、すり潰したりする必要がない
  • 厚いサンプルや吸光度の強いサンプルに最適 – 黒ゴムなどの難しいサンプルに最適

原理や仕組みは?

図1 多重反射形全反射測定法

上図に示すように赤外領域に透明な高屈折率媒質(プリズム)に試料を密着させ、プリズムから試料内部にわずかにもぐり込んで反射する全反射光を測定すると、試料表層部の吸収スペクトルを得ることができます。 このとき赤外光は試料表面から数μm程度の比較的深い領域までもぐり込みますが、このもぐり込み深さは、空気中での赤外光の波長(λ)、入射角(θ)、プリズムの屈折率(n 1 )と試料の屈折率(n 2 )に依存し、その関係は次式で表わされます。

ここで、もぐり込み深さdpは、光の強度が表面における強度の1/eになる距離で定義されます。 もぐり込み深さを調節するには、入射角を変えるか、屈折率の異なるプリズムを用いればよいことになります。 たとえば、もぐり込み深さをより浅くしたい場合は、入射角を大きくし、屈折率の大きいプリズムを用います。
また、もぐり込み深さは波長に依存しており、ATRスペクトルは長波長側(低波数側)になるほど吸収強度が強くなります。 したがってATRスペクトルのベースラインは、右下がりになる傾向がありますが、ATRスペクトルを波長の逆数(1/λ)で補正すると、透過スペクトルと同じようなピーク強度比をもつスペクトルに直すことができます。

ATRスペクトルのピーク強度を左右するファクターとして、プリズムと試料の密着性および試料の面積があげられます。プリズムと試料との間に空気層があると、プリズムからしみ出る光が試料に届きにくくなるため,測定に際しては、なるべく密着度をよくする心要があります。 また、吸収の強すぎるような試料の場合は、試料を押さえつける力を加減してピークの強度を調節することができます。 試料の大きさについては、プリズムとの接触面積が大きいほど反射回数が多くなるために吸収強度が強くなります。
ATR法で対象となる試料は、主に滑らかな平面を持った固体試料ですが,その他にも粉末試料や液体試料などの測定もできます。 その場合には,プリズムが水平状に設置されたATR装置を用いますが、これによると液体なども容易に、しかも再現性よく測定することができます。

(参考:株式会社島津製作所「ATR法のイロハ」メトラートレド「FTIR サンプリング技術:全反射測定法(ATR法)」、日本分光「FTIRの基礎(4)各種測定法について」、ThermoFisherSCIENTIFIC「FTIR サンプリング技術: 全反射(ATR)法」)

ATR法でサンプリングできる試料は?

固体/液体サンプルを無溶媒で、サンプル調製や希釈の必要なくスペクトルを測定できます。そのため、幅広い化学反応の研究に最適です。

ATR は、透過によって測定するとピークが飽和しやすい、吸収力の強いサンプルや厚みのあるサンプルに適しています。  ATR がこうしたサンプルに適しているのは、エバネッセント波の強度が ATR 結晶の表面からの距離に対して指数関数的に減衰するため、一般にサンプルの厚さには左右されないためです。 

ATR に適した他の固体として、均質固体サンプル、多層構造サンプルの表面層、または固体のコーティングがあります。粗くて硬いサンプルであっても、ダイヤモンドなどの硬質な ATR クリスタルを使って分析できます。  最適なサンプル形態には次のようなものがあります。

固体サンプル例

  • ラミネート 
  • 塗装 
  • プラスチック
  • ゴム
  • コーティング材
  • 粉末
  • 粉末状に砕ける固体

液体に関しては、結晶にほんの一滴垂らすだけで分析できます。
以下の液体の分析に使用することができます。

液体サンプル例

  • 水性溶液
  • 粘性液体
  • コーティング材
  • 生物学的物質

(参考:BRUKER「赤外分光の基礎」、Thermo Fisher「FTIR サンプリング技術: 全反射(ATR)法」)

具体的なサンプリング方法

試料を挟んで、プリズムに密着させるだけで測定可能です。
酸、アルカリ溶液を測定する場合は、腐食しないダイヤモンドプリズムを選択する必要があります。得られた赤外スペクトルから、ライブラリーをもとに定性結果が出ます。

ATR測定で最も注意すべき点は結晶と試料との密着にあります。
もし、試料と結晶の間に隙間(空気)があると、先のATRの計算式で試料が空気になってしまい、空気のATRスペクトルを測定してしまうことになります。
試料表面が凸凹していたり、粉体であったりした時、強い圧着で結晶に密着させる必要があります。
この時、強い圧力により結晶が破損することがありますので、結晶の物理的な性質に注意しましょう。

また、液体ATRでは溶質の濃度がTGS検出器で0.5%以上、MCT検出器で0.05%以上の濃度に適します。

ATR法で試料のdp情報を測定する場合、この密着度の再現性が非常に重要となります。試料の屈折率は強い圧力によって変化してしまいます。

また、結晶へ試料を密着させたり、はがしたりの再現性は、トルクレンチを使用しても、それほど精度良くはいきません。

ATRの光学系いろいろ

ATRアクセサリーは上図に示すように種々の光学系が考案されています。上の3種類は主にフィルム、板状試料、ペースト状試料等に用いられ、水平ATRでは粉体、液体用としてトラフ(溝)型もあり
ます。
ATRプローブは反応モニター等で、CIRCLEは液体用として用いられています。
Diamond ATRは、その結晶の性質(高硬度、耐酸性、耐アルカリ性)から微量の粉体、液体、ペースト等ほとんどの試料測定に応用されています。

(参考:FT-IRにおけるATR測定法」)

必要な機器

お持ちのFTIRに合わせた、ATR測定装置が必要になります。
本体と一体型になっていることや、付属していることも多いため、ご購入の際は確認や相談をしましょう。

(参考:FT-IRにおけるATR測定法

まとめ

FTIRの測定方法として主流になってきた、ATR法に関してまとめました。
他の測定方法と比べ、簡潔に幅広いサンプルで測定ができることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

FTIRはATR法以外にも、測定方法がたくさんあります。
検討の際は、どの方法で何を測定をするかも踏まえて機器を探していきましょう!

測定方法にもそれぞ特徴がありますので、調べきれないことやお困りごとがありましたら、こちらからお問い合わせください↓
分析計測ジャーナルのスタッフが用途に合わせて、最適なご提案をさせていただきます。

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