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オートサンプラーで業務効率を改善!【無駄なルーチンワークを自動化しよう】

2022.06.17 (Fri)

  • GC
  • HPLC
  • LCMS
  • オートサンプラー

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

オートサンプラーとは、試料を自動で注入する装置のことです。例えば、LC-MSやHPLCなどの分析機器では、オートサンプラーを導入できます。

この記事では、オートサンプラーを導入することで得られるメリットや、おすすめのオートサンプラーを紹介します。

オートサンプラーとは?

分析機器の測定では通常、

  1. 1.測定試料の準備
  2. 2.測定
  3. 3.測定データの解析

という手順を踏みます。例えば、HPLCでは測定の際に、作成した試料をシリンジに吸い込んでカラムに注入します。分析が終了次第、この注入操作を試料の数だけ繰り返しますよね。

しかし、オートサンプラーではこの試料を分析機器に注入する工程を機械によって自動化できます。

オートサンプラーを導入可能な分析機器

オートサンプラーを導入可能な分析機器は以下の通りです。

  • HPLC(高速液体クロマトグラフィー)
  • GC(ガスクロマトグラフィー)
  • MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)
  • LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析計)

カラム管を用いたクロマトグラフィーの多くで、オートサンプラーは導入可能です。

MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)だけでなく、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー精製にも使用できます。カラム管での精製は非常に手間ですが、MPLCを使用すればその手間を省けます。

馴染みのない方にはなぜオートサンプラーを導入するべきなのかわからないかもしれません。次に、オートサンプラーを導入することで得られるメリットを紹介します。

オートサンプラーを導入するメリット

オートサンプラーを導入することで得られるメリットは次の3つです。

  • 実験の効率が向上する
  • 実験手技のミスを減らせる
  • 夜間を有効活用できる

実験の効率が向上する

オートサンプラーがない場合、分析が終了するたびに試料の注入作業を行う必要があります。しかし、オートサンプラーを導入することで、その工程を自動化できます。

今までは試料の注入作業をするたびに、他の作業を一時中断させていたかもしれません。しかし、その必要がなくなるので、複数の実験を並立して行えます。

基礎研究においては、成果を出す速度が命取りですよね。オートサンプラーを導入すれば効率的に実験が進行できるので、より短期間で成果を出せる可能性が高まります。

実験手技のミスを減らせる

オートサンプラーを用いた場合、作成した試料を容器に入れ、指定の場所にセットすれば分注作業は機械が行います。

手動でカラムへの注入作業を行う場合、人為的なミスが生じる可能性があります。

  • 同じ試料を二度打ちする
  • シリンジにインジェクションする際に試料をこぼす
  • 試料を誰かが取り違える

このようなミスをしたことはありませんか?取り返しのきくミスもありますが、試料を紛失してしまった場合は、再度実験を行わなければなりません。

オートサンプラーを導入すれば、最初の試料作成工程を間違えない限り、人為的なミスは起こり得ません。また、中には試料の混合を行えるオートサンプラーも存在します。

夜間を有効活用できる

オートサンプラーの中には、タイマーをセットして任意の時間から作動できるものも存在します。

この機能を活用すれば、実験室を離れた後に分析機器測定を行い、夜間にデータ測定を終了可能です。

今までは家で文献を読むなどでしか活用できなかった夜間を有効活用できます。夜間の有効活用により、実験に必要な期間を大幅に短縮可能です。

今までは夕方に化合物の精製が終わった場合、分析を次の日に行っていたかもしれません。しかし、オートサンプラーを導入すれば夜間に分析を終わらせられます。

オートサンプラー導入によるデメリット

オートサンプラーを導入することで得られるメリットは大きいです。一方で、デメリットも存在します。

  • コストがかかる
  • 試料の必要量が増える
  • スペースが必要

コストがかかる

例えば、和研薬のHPに掲載されているWatersのオートサンプラー付HPLCシステムは約440万円から購入可能です。システムの価格に加えて、故障時の修繕費や電気代をランニングコストとして見積もる必要があります。

しかし、アシスタントを雇っている場合などは、オートサンプラーを導入することで人件費を削減できる可能性もあります。

費用対効果を考えた上で、オートサンプラーの導入を検討しましょう。

試料の必要量が増える

例えば、分析HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の場合、10μLも試料があれば測定を問題なく行えます。

オートサンプラーはインジェクション量自体は手動の時と変わりません。しかし、オートサンプラーにセットする試料容器の大きさの関係上、100μL程度試料を入れる必要がある場合もあります。

針の挿入深度を調節することで、少量のサンプルから試料を注入することも可能です。しかし、実際にそれを行って失敗したこともあるので、あまり推奨できません。

合成が難しい化合物の分析を行う際は、使用する試料の量を少しでも減らしたいですよね。その場合は、手動で注入作業を行なった方が便利です。

スペースが必要

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の場合、オートサンプラーの大きさはHPLCのPDA検出機と同程度かそれ以上です。研究室に設置するスペースがなければ、オートサンプラーの導入はできません。

研究期間を短縮できるなどオートサンプラーのメリットは大きいですが、コストもかかるので検討した上で導入を決めましょう。

オートサンプラーの紹介

実際にどのようなオートサンプラーがあるのかを紹介します。先ほど紹介した4つの分析機器について、おすすめのオートサンプラーを選びました。

  • HPLC(高速液体クロマトグラフィー)
  • GC(ガスクロマトグラフィー)
  • MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)
  • LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析計)

SHIMADZUのオートサンプラー

SHIMADZUのオートサンプラーを2つ紹介します。

  • SIL-40 
  • AOC-30 

オートサンプラーを選ぶ際は、最大耐圧と接液材料に注意しましょう。最大耐圧以上のカラム圧で使用すると非常に危険です。PEEK製の接液材料はハロゲンや塩酸に耐性があるので、揮発酸をよく使用する場合でも安心です。

SIL-40【LC-MS】

SIL-40はデュアルインジェクション機能を採用しています。この機能により、1つのニードルで2つの分析流路に試料を独立して注入可能となり、2系統の分析を1システムに統合することができます。

HPLCやLC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析計)でオートサンプラーを使用する際、キャリーオーバーが問題となり得ます。キャリーオーバーとは、直前に採取した試料が針に付着し、次の試料のデータ測定に影響を及ぼすことです。

LC-MSは測定感度が高いのでオートサンプラーのキャリーオーバーが問題となりやすいですが、SIL-40はキャリーオーバーがとても小さく、LC-MS用として開発されたインジェクターと言えます。

AOC-30【GC】

AOC-30は洗浄溶媒種類と洗浄シーケンスのカスタマイズ機能により最適な洗浄効果を、またオーバーラップで連続分析のスループットを向上させるなど、多機能なGC(ガスクロマトグラフィー)向けのオートサンプラーです。

非常に小型な設計なので、1つのGCに対してAOC-30を2台設置できます。

YMCのMPLC

YMCからはLC-Forte/R-IIというMPLCが販売されています。HPLCだけでなく、フラッシュクロマトグラフィー精製にも対応しています。

リサイクル機能も付いているので、1回で分離できなかった場合もカラムを交換することなく再度精製可能です。

オートサンプラーの導入で生産性を向上させよう

オートサンプラーは、フラッシュクロマトグラフィー、LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析計)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などのカラム管を使用したクロマトグラフィーで導入可能です。

無駄なルーチンワークを削減できるだけでなく、手動による測定誤差も回避できます。しかし、導入には高額なコストがかかるので、導入すべきか迷う方もいるでしょう。

その場合はレンタルサービスや中古品の購入を利用することで初期費用を抑えられます。

オートサンプラーを導入すれば実験の並立実行ができ、研究の進捗が良くなる可能性が高まるのでぜひ導入を検討してみてください。

分析計測ジャーナルライター


ライター:吉野克利
名古屋市立大学薬学部出身、専攻分野は有機化学。
「光に反応して分解する化合物の合成および機能評価」の研究をしています。様々な分析機器を使用した経験を持ち、実験や研究などで得た知識をより多くの研究者の役に立てるようお伝えしていきます。
旅行が趣味で、カメラ片手に全国を駆け巡っています。

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bunseki-keisoku