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解決事例 インタビュー

大学発ベンチャーの起業は、まずチームづくりから

2022.01.20 (Thu)

記事を書いた人 :

bunseki-keisoku

現状の問題

・大学には優れたシーズがあるのに、社会実装されずに埋もれている。

解決策

・ベンチャーを立ち上げるには資金・人材・販路などの支援が必要。

展望

・日本版イノベーション・エコシステムを実現する。


今回こそブームで終わらないと噂されるほどの盛り上がりをみせている大学発バイオ系ベンチャーの起業ラッシュ。大学の研究者が企業と手を組みビジネスをスタートさせる例も多く見られます。

日本でも本格的な大学発ベンチャー起業をサポートする体制が整ってきています。

京都を拠点に民間の産学官連携組織として大学研究室の研究成果の事業化をサポートする、株式会社産学連携研究所 代表取締役 隅田剣生氏(以下、隅田)に、大学発ベンチャー起業支援体制についてお話を聞きました。

大学発ベンチャーの起業支援とは?

―――まずは事業の概要について教えて下さい

隅田:研究者が企業と共同研究する際の契約業務や、公的資金や企業との共同研究費の獲得支援、ベンチャー支援といった、大学の研究者の事業化支援サポートをする仕事です。京都大学や大阪大学などはこういった業務を行う「産学連携本部」という学内部署がありますが、弊社は民間の産学連携会社として大学の外部から支援する、希少な会社です。

隅田:産学官連携で主な業務は「知的財産」「共同研究」「ベンチャー」と言われています。指定国立大学法人等の一部の大学には、産学連携本部のほかTLO、ベンチャーキャピタル等の専門子会社が、支援体制は充実してますが、そうでない大学では研究者が何かをしようにも大学内に専門の人材がいないので直接企業と話すことになります。しかし、企業と共同研究を進める場合、大学と企業では考え方、言語、研究開発ステージなどが異なるためスムーズにすすまないことがしばしばあります。思ったように進まずにお困りの研究者も多いと思います。

日本の大学ベンチャー起業支援は始まったばかり

―――世界の大学発ベンチャー支援はどのようになっているのでしょうか?

隅田 アメリカでは、シリコンバレーのスタンフォード大学、ボストンのハーバート大学やマサチューセッツ工科大学は、世界中から人・モノ・金を呼び込みトップ大学の地位を不動のものとし、イノベーションと新産業創出の拠点となっています。そしてこの新産業の主な担い手が、大学の知的・人的財産を活用した、大学発ベンチャーとそれを支えるエンジェル、ベンチャーキャピタルです。これらの地域は、大学・大学発ベンチャー・ベンチャーキャピタル・大企業の4者が自然の生態系のように連関していることから、新産業を生みだす「イノベーション・エコシステム」と呼ばれています。

―――これまでの日本の大学発ベンチャー起業支援施策は?

隅田 日本では文部科学省による大学ベンチャー支援が1995年にスタート、その後大学発ベンチャー設立件数は増加。経済産業省の1,000社計画が発表された2001年にピークを迎えました。ところが起業活動自体が停滞する事態に。その後の文部科学省研究機関である科学技術政策研究所や経済産業省の調査により、「売上・資金不足」「人材不足」「販路がない」といった大学発ベンチャーが継続できない課題もわかりました。

―――現在はどのようなことを支援しているのですか?

隅田:文部科学省では2012年に新たなベンチャー支援施策「大学発新産業創出プログラム(START)」を開始。さらに東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学の国立4大学にベンチャーキャピタル子会社が設立され、ベンチャー支援体制が構築されました。具体的には、START事業では外部の事業プロモーターと呼ばれるベンチャーキャピタル、4大学では子会社ベンチャーキャピタルが大学発ベンチャーを起業前から支援し、起業と同時に投資するようになりました。またNEDOも認定ベンチャーキャピタル制度を作り、起業前からの大学発ベンチャー支援プログラムを開始しました。起業前からベンチャーキャピタル目線で研究者の研究成果を技術的に評価し、市場ニーズを取り入れた製品企画や開発計画を実施することで、大学発ベンチャーが市場から乖離した開発になったり、起業後の開発期間に資金不足にならないように支援します。

―――事業プロモーターとはどのような人たちなのでしょうか?

隅田:一連の起業支援活動を研究者や産学連携本部のスタッフだけで行うことは困難です。事業化のノウハウを有するベンチャーキャピタルや専門家等が事業プロモーターとなり、研究者や産学連携本部と組織的に連携し起業人材の育成も含めた支援を行います。私たちの仕事もこの分野にあてはまります。

これからの日本の大学発ベンチャー支援活動

―――これからの大学発ベンチャー支援に期待されることは?

隅田:最近では大学と大企業との連携もさかんに行われ、大学が企業とのオープンイノベーションの拠点となるセンターを学内に共同で設置し、企業主導で研究開発や新産業創出を推進したりしています。アメリカのシリコンバレーやボストンも活動が根付き、成果が生まれ、循環するまでに30〜40年かかったと言われています。これからの産学官連携、イノベーション・エコシステムの構築には、大企業、ベンチャーキャピタルや銀行等の金融機関を含めた、産学官金の連携が必須ではないでしょうか。とくに大学発ベンチャーの起業支援においては、起業前段階からの計画づくり、投資、伴走支援が必要です。大学・大学発ベンチャー・ベンチャーキャピタル、金融機関、大企業がこれまでの長い経験を活かし、今後困難な状況に陥ろうとも日本独自のイノベーション・エコシステムの構築のために地道に支援活動を継続することが求められています。

研究者がチームで頑張るために

―――起業したい研究者に必要な行動は?

隅田:研究者の方は絶えず新しい研究に力をいれつつ、起業チームや多くの方々と連携していくことが必要な世の中になってきていると思います。 競争的資金を獲得するにもチームや企業と共同で申請が多くなっているため、分野をまたいでいろいろな人と交流し仲間を見つけ、役割分担し、みんなと協力してみてはいかがでしょうか。

―――起業チームをうまく結成するために、研究者がやらなければいけないことは?

隅田:上述のように事業プロモーターはじめさまざまな能力を持った人たちとチームを結成し、起業に取り組むことがよいかと思います。そして、チームを結成するには、チームメンバーを信用して、役割分担を決め、自分が全てを担当しないようにすることがよろしいかと思います。

―――事業プロモーターを見つけられないときは?

隅田:研究者をサポートする私どものような役割を果たす会社や人材はまだまだ少ないです。もしご自身で見つけられないときは、一度私どもにご連絡をいただければと思います。


■お話をお伺いしたのは・・・

株式会社 産学連携研究所

社員数:10名、副業10名

代表取締役 隅田剣生氏

大阪大学の産学連携本部で10年間、研究者の事業化支援に従事したあと現在の会社を立ち上げる。その後、京都大学内に事務所を構え、関西の医科系大学の産学連携業務の受託、主に京大発ベンチャー起業支援を行う。2021年7月、屋上から大文字が目の前に見えるビルに事務所を移転。1階には同社が運営する産学官連携の起業支援やバイオテック企業の製品やサービスの社会実装を応援するトータルサービスブランド[Lab Tech]のコワーキングラボを併設し、ベンチャー起業時のラボ不足解消に貢献する。

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