デジタルマイクロスコープは光学顕微鏡に変わる画期的な装置です。製品の検査を光学顕微鏡の接眼レンズを覗いて行っているなら、デジタルマイクロスコープの導入を検討してみてください。デジタルマイクロスコープは作業を効率化し、データの保存ができるので信頼性も向上します。
デジタルマイクロスコープは多くの会社から販売されており、どのメーカーがいいのか悩ましいですよね。そこでこの記事では、デジタルマイクロスコープのおすすめメーカー10社を紹介し、各社の製品の特徴も解説します。さらに選び方についても紹介するので、購入の際には参考にしてみてください。
分析計測ジャーナルでは、デジタルマイクロスコープの相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
デジタルマイクロスコープとは?
デジタルマイクロスコープとは、光学顕微鏡とデジタル技術が合わさったもので、観察しているものをディスプレイ表示するものです。倍率を変更すると、微細な物体の拡大表示もできます。また解析もソフトを使って、高度に解析できます。デジタルマイクロスコープのメリットは次の4つです。
- 複数人で同時に観察できる
- 目が疲れず長時間作業の負担が軽減する
- 立体的なものも観察しやすい
- 過去のデータと比較ができる
デジタルマイクロスコープの基本機能と用途について詳しく紹介します。
デジタルマイクロスコープの基本機能
デジタルマイクロスコープは一般的に以下のような機能を備えています。
機能 | 特徴 |
高倍率ズーム | 光学デジタルとズームを組み合わせて、微小な対象物を数百倍から数千倍まで拡大できます。 |
デジタル画像・動画の記録 | 画像と動画をPC内や外部メモリに保存でき、詳細な解析や共有ができます。タイムラプスや連続撮影機能を備えた機種もあります。 |
モニター表示 | 映像はモニターに一時的に表示され、複数人で同時に観察する際に便利です。従来の顕微鏡に比べて、直感的に操作しやすいです。 |
自動フォーカス | ピント調整の難しい高倍率でも、自動でピントがあいます。ズーム観察が簡単です。 |
デジタルマイクロスコープの用途
デジタルマイクロスコープは、幅広い分野で利用されています。以下は、主な用途の例です。
教育現場での利用
生物学や地学授業で活用されています。学生が拡大画像を同時に確認できるので、理解が深まりやすいです。ディスカッションや発表の場でも役立ちます。
研究開発や実験をサポート
化学や物理学などの研究分野では、試料の観察に最適です。デジタルスコープを使うと、分析が容易になり研究が加速します。
工業分野での品質管理
製品の検査や品質管理の現場では、製品の表面状態や微細な欠陥を確認する作業が必要です。デジタルマイクロスコープは、不良品の早期発見や原因解析に役立ちます。微小な部品の組み立てにも活用されており、作業者の疲労を軽減します。
医療分野での応用
医療機関では、病理学や検査の際に、細胞や組織の観察に用いられます。検査結果の共有が必要なときに、診療科が異なっても大変便利です。
デジタルマイクロスコープのおすすめメーカー10選
デジタルマイクロスコープを製造販売しているメーカーはたくさんあります。また1メーカーから複数のシリーズが販売されていることもあり、どのタイプが最適なのか見極めるのが難しいことも。そこで、おすすめメーカー10社の特徴を紹介し、人気機種の特徴と価格を紹介します。デジタルマイクロスコープ選びの参考にしてみてください。
㈱キーエンス
㈱キーエンスは、デジタルマイクロスコープ業界をリードする企業の一つです。優れた光学性能と高解像度で、微小なものの観察ができます。使いやすいインターフェースや自動化機能で、初心者でも使いやすいです。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
VHX-X1シリーズ | 5〜6000倍 | 標準:2048 (H) × 1536 (V) 高解像度4000 (H) × 3000 (V) | ディープコントラスト機能で細かい凹凸が見やすい。必要な機能をカスタマイズできる。 | お問い合わせください |
VHX-XF シリーズ | 0〜6000倍 | エントリーモデルでシンプルな操作で観察可能。 | お問い合わせください |
㈱ハイロックス
㈱ハイロックスは、世界初のビデオマイクロスコープを開発した企業です。デジタルマイクロスコープは工業分野やライフサイエンス分野で人気があります。立体的に観察できる機能があり、複雑なものでも観察しやすいです。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
HRX-01 | 0〜7000倍 | 2448(H)×2048(V) 2040(H)×1530(V) | 用途に応じてカスタマイズ可能。リモートでの観察も。 | 500万円〜 |
RX-100 | 0〜7000倍 | 1958(H)×1638(V) 1632(H)×1224(V) | スタンダードモデル機種。立体的に見えるロータリヘッド機能。 | 266万円〜 |
㈱エビデント(オリンパス㈱)
㈱エビデントはオリンパス㈱から分社化された企業で、オリンパスのデジタルマイクロスコープを取り扱っています。エビデントのデジタルマイクロスコープは1シリーズです。産業分野や研究機関から人気があります。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
DSX1000シリーズ | 27~9637倍 | 低解像度:960(H)×600(V) 超高解像度:5760(H)×3600(V) | 観察方法や倍率の変更がワンタッチで簡単。幅広い用途で使える。 | エントリーモデル:570万円〜 チルドモデル:760万円〜 高解像度モデル:865万円〜 ハイエンドモデル:925万円〜 |
ライカマイクロシステムズ
ライカマイクロシステムズ(Leica Microsystems)は、世界をリードする精密光学および顕微鏡技術のメーカーです。1869年に設立されてから150年以上にわたり、革新と高品質を追求しています。デジタルマイクロスコープは研究者から人気が高いです。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
Ivesta3(カメラ内蔵) | 6.1x〜55x | 最大解像度:500 lp / mm | モニターでも接眼レンズでも観察ができるタイプ。作動距離が122mmと広いので、レンズを覗きながらの作業がしやすい。 | 85万円〜 |
㈱ニコン
㈱ニコンは光学技術と精密機器の分野で、世界をリードする日本企業です。医療用と医薬品開発向けのデジタルマイクロスコープを販売しており、高精度な2製品は研究者や病理担当者から人気があります。ニコンのデジタルマイクロスコープは、作業効率のアップにも力を入れており、長時間の操作でも疲れません。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
ECLIPSE Ji | 不明 | 2800×2800ピクセル | バイオアッセイに適したモデル。装置の中にプレートを入れ、暗室での観察と同様の条件を再現。AIが解析をサポート。 | 1461万円〜 |
ECLIPSE Ui | 不明 | 1330×460 | 日本初の医療機器に認定されている医療用デジタルマイクロスコープ。病院での病理検査に最適。 | お問い合わせください |
㈱島津理化
㈱島津理化は分析機器や試験機器、バイオ・ライフサイエンスに関連する機器を揃えています。デジタルマイクロスコープは、教育向けから研究開発向けまで種類が豊富です。日本企業ならではの丁寧なサポートも人気があります。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 有効画素数 | 特徴 | 参考価格 |
BA81-6T/15T-4000BMH | 40〜1500x | 830万画素 | 4K対応デジタルカメラで高精度な画像表示。PCなしで画像の観察と撮影が可能。生物顕微鏡。 | 52万9980円〜 |
BA410E-4000BMH | 40〜1000x | 830万画素 | ウルトラコントラストレンズで、鮮明な画像。自動調光システムで利便性アップ。 高性能三眼生物顕微鏡。 | 112万680円〜 |
AE2000-4000BMH | 40〜200x | 830万画素 | シンプルで使いさすさにこだわって設計。LED照明で省電力、さらに自動ON/OFF機能も搭載。倒立顕微鏡。 | 97万3280円〜 |
STZ-161-TLED-4000BMH | 7.5〜45x | 830万画素 | ズーム式で倍率調整ができる。低倍率でコスパのいいタイプ。実体顕微鏡。 | 56万9580円〜 |
STZ-171-TLED-4000BMH | 7.5〜50x | 830万画素 | 広いステージと作動距離で、顕微鏡を覗きながらの作業がしやすい。実体顕微鏡。 | 63万80円〜 |
BA310MET-T-4000BMH | 50〜500x (オプション1000x) | 830万画素 | 光源にLEDを使用した、落射・透過照明。オプションで偏光観察も可能。 金属顕微鏡。 | 142万3180円〜 |
Panthera C2-4000BMH | 40〜1000x (オプション20〜1500x) | 830万画素 | スライド2枚をステージに乗せられるので、比較観察しやすい。自動調光機能あり。生物顕微鏡。 | 81万4880円〜 |
Panthera E2-4000BMH | 40〜1000x (オプション20〜1500x) | 830万画素 | コスパの高いUC PLANレンズ搭載。生物顕微鏡。 | 68万5050円〜 |
㈱アクティブウェーブ
㈱アクティブウェーブは、デジタルマイクロスコープの製造販売に特化した日本企業です。業界トップクラスのコスパがあるデジタルマイクロスコープは、これまでに3000社への納入実績があります。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 有効画素数 | 特徴 | 参考価格 |
MSX-1000 | 0〜7000倍 | 標準:320万画素 オプション:500万画素(2448×2048ピクセル) | 業界随一のコスパを求めて設計。性能に応じたエントリー、ベーシック、スタンダード、ハイエンドの4タイプを展開。 | 150万円〜450万円 |
㈱マイクロアドバンス
㈱マイクロアドバンスはデジタルマイクロスコープなどの顕微鏡専門メーカーです。デジタルマイクロスコープは使いやすいインターフェースで、操作負担を軽減します。産業分野での納入実績が多いです。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 有効画素数 | 特徴 | 参考価格 |
AS Series | 40〜320倍 | 130万〜1000万画素 | 大きな対象物でもレンズを近づけて観察ができる。ピントが合わせにくい立体も深い被写界深度で見やすく表示。 | お問い合わせください |
AS-MD Series | 15〜105倍 | 48〜200万画素 | 高速・高解像度の観察に開発されたモデル。性能の異なる4タイプを展開。 | お問い合わせください |
Ax Series | ー | 40〜1000万画素 | 既存の顕微鏡の接眼レンズに装着し、デジタルマイクロスコープとして使用。解析機能も搭載。 | お問い合わせください |
ヴィジョン・エンジニアリング
ヴィジョン・エンジニアリングはイギリスが本社の企業です。精密光学と計測技術の専門企業で、3Dステレオ顕微鏡や非接触測定システムの分野において、世界的に高い評価を受けています。デジタルマイクロスコープは、先進技術を活かした製品を揃えています。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 解像度 | 特徴 | 参考価格 |
EVO CAM Series | 0.8〜750x | 1920 x 1080 | 使いやすさにこだわって設計。広い視野と長い作動距離。直感的に操作ができる。 | お問い合わせください |
VE CAM | 6.23x、9.97x | 不明 | 初心者が使いやすい仕様。外観検査や品質管理に最適。 | お問い合わせください |
DRV STEREO CAM | 8.4〜700x | 不明 | 3Dデジタルステレオマイクロスコープ。離れた場所にリアルタイムで画像共有。研究向き。 | お問い合わせください |
マイクロ・スクェア㈱
マイクロ・スクェア㈱はデジタルマイクロスコープをメインに手掛ける日本企業です。産業界での納入実績が多く、アフターケアにも定評があります。
製品名 (製品名をクリックするとカタログにリンクします) | 倍率 | 有効画素数 | 特徴 | 参考価格 |
DS-40Aシリーズ | 10〜495x | 200万画素 | 10種類の計測機能付き。日本語・英語・中国語に切り替え可能。基本的な機能を備えたベーシックなタイプ。 | 29万円〜 |
DS-3Aシリーズ | 1〜400x | 200万画素 | コンパクト設計され、重量は約600g。装置に組み込んで使える。 | 19万8000円〜 |
デジタルマイクロスコープ選びのポイント
デジタルマイクロスコープを選ぶ際は、次の3つのポイントをチェックしましょう。これらのポイントを明確にしておくと、初めてのデジタルマイクロスコープ選びでも失敗しません。
- 適切な倍率
- 解像度をチェック
- 用途を明確に
適切な倍率
観察したい対象によって、必要な倍率は異なります。デジタルマイクロスコープの倍率ごとに観察できるものは、次のようなものがあります。
倍率 | 観察できるものの例 |
2〜5倍程度 | 植物や昆虫の構造 |
10〜20倍程度 | ミジンコなどの微生物 |
50倍程度 | 昆虫の複眼などの細かい構造 |
100倍程度 | ゾウリムシなどの構造 |
200倍程度 | 花粉などの構造 |
400倍程度 | ミドリムシなどの構造 |
800〜1500倍程度 | 細胞や染色体などの構造(0.2μm程度) |
2000〜100万倍程度 | 1μm~0.1nm 例…DNA(2nm) |
目的に合った倍率を選ばなければ、適切な評価はできません。また高倍率になればなるほど、デジタルマイクロスコープの価格は上がります。まずは用途に応じた倍率を検討しましょう。
解像度をチェック
高解像度のカメラを搭載しているほど、鮮明な画像が見られます。ただし表示させるモニターもカメラの解像度に応じた解像度でなければなりません。デジタルマイクロスコープの解像度よりもモニターの解像度が低ければ、モニターの解像度でしか観察できないのです。既存のPCなどのモニターを使用するなら、解像度が合っているかどうかも確認しましょう。
用途に合った仕様かどうか
どのような用途でデジタルマイクロスコープを使うのかを明確にするのも重要です。デジタルマイクロスコープには製品の検査用、研究用、教育用など種類があります。使用する環境が粉塵などの多い作業現場や野外なら、耐久性も必要です。デジタルマイクロスコープを見ながら作業を進める場合は、対物レンズとステージまでの距離(作動距離)が長いものを選びましょう。活用範囲が今後広まると予想されるときは、オプションで拡張機能があるタイプがおすすめです。
まとめ
デジタルマイクロスコープは、光学顕微鏡の観察結果をモニター表示するものです。デジタルマイクロスコープは教育・研究・品質管理など広い分野で使われています。国内外にデジタルマイクロスコープの製造販売メーカーはありますが、おすすめメーカーは次の10社です。
- ㈱キーエンス
- ㈱ハイロックス
- ㈱エビデント(オリンパス㈱)
- ライカマイクロシステムズ
- ㈱ニコン
- ㈱島津理化
- ㈱アクティブウェーブ
- ㈱マイクロアドバンス
- ヴィジョン・エンジニアリング
- マイクロ・スクェア㈱
デジタルマイクロスコープ選びに悩んだら、この10社から探してみてください。また分析計測ジャーナルでは、デジタルマイクロスコープ選びに関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
ライター名:バッハ
プロフィール:大手製薬会社において約8年間新薬の開発研究携わる。新薬の品質を評価するための試験法開発と規格設定を担当。さまざまな分析機器を使用し、試験法検討を行うだけでなく、工場での品質管理部門にも在籍し、製薬の品質管理も担当。幅広い分析機器の使用経験があり、数々の分析トラブルを経験。研究者が研究に専念でき、遭遇するお悩みを解決していけるよう様々な記事を執筆中。
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